事件の匂い
時刻は昼の12時を少し回ったところ。
おれは予想通り、調理室で片付けをしていた。
残念……いや、ある意味いつも通りの1人で。
おれを呼びつけたインテリイケメンも卒業までにやらなければいけないことがあるとか言って、いなくなってしまった。
その両肩に複数の女子が居たことについては今回だけは特別に黙認しておいてやろう。
「それにしても散らかし過ぎだろ……」
台拭きであちこみに飛び散っている小麦粉やチョコの粉を拭き取りながら、たまらずそんな言葉が出てしまう。
それより、さっき拭いた中にダイイングメッセージ的なものがあったけど、大丈夫だよね?
まさか、こんなところでアブナイこと起きてないよね?ね……?
「はぁ、少し休むか……」
おれはため息を一つ吐いたあと、イスに腰掛けた。と、同時に調理室は入るドアが開いた。
「お、やってるやってる」
調理室に入ってきたのは遥香で左手に何かを持っていた。
「お前、どうしたんだ?帰ったはずじゃ」
「あんた1人残して帰るわけないじゃない。これを買いに行ってたのよ」
そう言って、左手に持っていたものをおれに投げ渡してくる。
投げられたものを受け取ってみると、それはおれがよく飲む缶コーヒーだった。
「ちょうど部活動してる人の休憩と被っちゃって、時間かかっちゃったけど」
「いやいや、ありがとうな。嬉しいよ」
「ちょっとやめてよ。照れるじゃん……」
頰を少し赤らめた遥香がそう言いながら、顔を隠すように俯く。
その仕草にはおれは少し、というかかなりドキュンと胸を打たれた。
か、かわいいじゃんかよ……
「それより早く片付けて帰りましょ。お腹も減ってきたし」
「そうだな。よろしく頼むよ」
おれは椅子から立ち上がり、気合いを入れ直す。
その後、おれは遥香と共に片付けをするのだった。
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