結末
夕方になり、おれと遥香と昌樹さんの3人は職員室から出てきた。
先ほど、先生方に事の顛末を説明し終えたところだ。
あの後、昌樹さんは佐藤を殴り殺す勢いで胸ぐらに掴みかかったので、おれと遥香は必死でそれを抑えさせた。佐藤も終始、涙目でこちらを見てきたし、思わず同情してしまった。
そして、なんとか4人揃って職員室に向かい、佐藤の口から演劇中の事故が自分の仕業だと白状させた。
そして、今回の被害者である遥香本人からこれ以上、事を大きくしたくないと申し出たため、学校側もそれを飲み、今回の件は穏便に処理するとのことだった。
また佐藤も4月からサッカーの名門校に転校することが決まっていたため、明日から終業式までの約1ヶ月を自宅謹慎とし、尚且つ転校先の学校に今回のことを伝えておくということで処置は済んだ。
しかし、昌樹さんはそれじゃ生温いと激しく抗議し、遥香への接近禁止令と退学処分にすべきだと言っていた。
結局、遥香の一言により、それは却下されたわけだが、昌樹さんの会社で使っているGPS発信機を遥香に二度と近づかないように佐藤の体内に埋め込むと言っていたが、あの人ならそれを本気でやりかねないと心底思った。
「はぁ……」
中庭までやってきたおれはいつものベンチに座り、沈みゆく夕日に目を向けた。
遥香は屋上に向かう際、無理に足を使ったため、痛みが増していたようで先程、昌樹さんと共に病院に向かうといって別れたところだった。
「なんか色々あったな……」
というか昼御飯食いそびれた……
それに色々あったし、なんか身体が重い。
早く帰って休みたい……
おれは自販機で缶コーヒーを買ったあと、再びベンチに腰を下ろした。
そういや、実行委員としての仕事、放ったらかしにしちゃったな……
明日やらないと。
そんなことを思いながら、今日何本目かになる買ったばかりの缶コーヒーに口をつけながら、辺りを見回す。
文化祭1日目ももう終わりに近づき、所々で声が聞こえるだけで静かなものだった。
まぁなんだかんだでやってよかったかもな。
まだ1日あるが成功したと言ってもいいと思う。
それに佐藤の件もなんとか解決したし。
しかし、まさかあのタイミングで正樹さんが来るとは。
元々、仕事を休んで文化祭に来ると聞いていたが遥香が屋上に来る前に事前に連絡をしていたみたいで、いやはやナイスな判断だった。
と、その時ポケットに入れていた携帯が震えた。
取り出すと画面にはメールの受信マークが。
開いてみると、遥香からだった。
「異常なし」
短くそう書かれた文を見て、おれはどこか安心した。
そして、続けざまに別のメールが来た。
「ハンバーグが食べたい」
それは遥香からのリクエストだった。
はいはい、じゃあおれは一足先に帰って作っておきますかね。
おれはベンチから立ち上がると、飲み終えた缶を捨てる。
もはや命令に近い文だったが、おれはそれが何故か嫌に感じなかったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます