さすがリア充候補生
文化祭の準備は日を追うごとに忙しくなり、おれ達は毎日遅くまで学校に残っていた。
クラスの出し物である喫茶店の当日のメニューや役割も決まり、クラス全員、気合いは十分だった。
それとおれ達は二人で決めていた通り、可能な限りは別行動を取り、なるべくお互い関わらないようにした。
それのおかげか、たまにどこからか視線を感じることはあったが、それ以外は特に何も起こらず、いよいよ文化祭は当日を迎えるのであった。
「それでは今より、文化祭の開始を宣言する」
朝8時に実行委員長、つまりインテリイケメンの放送により、文化祭はスタートした。
今年は商店街の方々の協力もあり、地元の人が朝から大勢やってきており、文化祭は開始から大いに盛り上がっていた。
ちなみに文化祭は金曜、土曜と二日間に渡って開催されるのだが、この感じだと休日である明日はもっと忙しくなるだろうと予想ができた。
そんな大盛況な文化祭の中、おれはデジカメとビデオカメラを肩にかけて、学校内を動き回っていた。
なんでも、今年は例年より盛り上がることが予想されていたので、是非、記録を取ってほしいとインテリイケメンから頼まれたのだ。
本当なら遥香と2人でやる予定だったのだが、2日ほど前に演劇部の1人がケガで体育館で行う劇に出られなくなり、代わりに遥香が代役ということになったのだ。
さほどセリフの多い役でもなかったので、遥香は引き受けたという訳なのだが、例えセリフが少なかろうが、おれなら絶対に引き受けない。
あんな大勢を前に注目を浴びるなんて真っ平御免だ。
しかし、そんなことを整然と引き受けることができるとは、さすがリア充候補生だと改めて思った。
そんなことを思いながら、おれは各学年のクラスごとに回りつつ、写真をいくつかとその様子をビデオカメラに収めていく。
しかし、喫茶店とかなら中に少し入るだけでいいんだが、お化け屋敷となると少し面倒だ。
わざわざ中に入って、コースを回ってこいと言われてしまったのだ。
別にお化け屋敷自体は怖くないから、それはいいとして、他の人が列を作って待っているところをおれは実行委員だからということで、待たずに入れるのだが、入る際の刺さるような視線が本当に苦痛だった。
苦行とはまさにこの事かと思わず悟ってしまった。
それにしても、文化祭は大いに盛り上がっているようでなによりだった。
廊下は歩けないほどではないが、人で混み合っているし、先程クラスの出し物である喫茶店を覗いてきたが、かなり列ができていて、全員が忙しそうに動き回っていた。
でも、その顔は活き活きとしていて、おれも思わず、写真を多めに撮ってしまった。
この中におれと遥香がもし居たらどうなってたんだろう。と、おれは何故かそんなことを考えてしまった。
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