一体どうするか
その後、実行委員全員が揃うまで遥香と柳は言い争っていた。
売り言葉に買い言葉とはまさにこの事。
お互い、言いたい放題だった。
おかげで全員の注目を集めてしまった。
その中にいる被害者、おれ。
なんともカオスな状況だった。
「それじゃ全員揃ったところで進めていくぞ」
中央の机に座る3年の男子の実行委員の1人がそう声を上げた。どうやら、あの人が実行委員の代表ということらしい。
長身にさわやかなで整った顔、そしてそれに抜群に似合うメガネ。
なるほど、インテリイケメンとはああいうことを言うのかと直感的に理解した。
「まずは各クラスの予算だが、渡してある資料に記載されている通りだ。なんとかこの予算内に収めてほしい。足りない分はクラス内でカンパするなどしてもらっても構わない」
おれはその言葉を聞きながら、配られた資料に目を通す。
ん、この予算……少なすぎないか?
これでやるべきことはかなり限られていると思うが。少なくとも飲食系は無理だと思う。
普通の飲食店と違って、どこかから仕入れるなんてできるわけないのでスーパーか何かで買うしかないのだが、それだとコストがかかりすぎる。
かといって出し物だとな……
お化け屋敷とか絶対どこかと被るし、どうせやるならもっと工夫したものを……
「……」
おれは1人、腕組みをしながら物思いにふける。
「やっぱり選んで正解……」
「ん?何か言ったか?」
隣にいた遥香が何か呟いた気がしたので、おれは遥香の方に顔を向けた。
「え?!いや、別になんでもないから!!」
慌てた様子の遥香。
しかし、いきなりそんな大声上げたので他の実行委員の目線を集めてしまった。
「あ、その、すいません……」
顔が一気に赤くなった遥香は恥ずかしそうに俯いた。
こいつ、今日なんか変だな。
変なものでも食べたか……
よし、今日はちょっと新鮮な野菜でも買って帰ることにするか。
遥香を見ながらおれは呑気にそんなことを思った。
それから2時間ほどで今日の活動はひとまず終わり、おれ達は下校することとなった。
しかしおれは遥香とは一緒に帰らず、スーパーへと寄り道していた。
まぁ一緒に帰るところを誰かに見られるのはまずいので、一緒に帰ることはないと思うけど。
いくつかの食材の値段をメモすると別のスーパーへと向かった。
そして同じようにメモを取ると、今度は商店街へと向かう。
学校や家からはかなり離れているので、この商店街には滅多に来ないのだが、今日ばかりは特別だ。
そこでおれは飲食店をいくつか見て回り、価格の調査をしていく。
仮に喫茶店をやるとすれば、食材や器具などコスト面でかなり負担を強いられる。
とすれば、一つに絞って何かをやるのが手っ取り早いと思う。
あとは価格設定と予算内に収めることができるかどうか……
越えるべき課題は多い。
しかし、不思議とそれが辛くないと感じるのだった。
◆
「ただいま……」
学校を出てから2時間半後、おれはようやく帰宅した。
家までの道が果てしなく遠く思えた。
玄関で靴を雑に脱いでからリビングへ向かう。
「随分遅かったわね」
そこには部屋着姿の遥香がソファでテレビを見ていた。テーブルの上にはお菓子の袋がいくつかあり、どうやらそれで空腹をしのいでいたらしい。
「ああ、ちょっと色々とな。で、悪い、今日はちょっとご飯作る元気なくて、途中でこれ買ってきた」
そう言って、おれは途中寄ったチェーン店で買ってきた牛丼をテーブルの上に置く。
あ、遥香のために新鮮な野菜買うの忘れてた。
まぁまた今度でいいか……
「あ、ありがとう……」
少し意外な様子の遥香。まぁご飯を食べずに済むように沢山、お菓子を食べてたんだろう。
「先に食べててくれ。おれはちょっと部屋で休んでるから」
それだけ言って、おれは足早にリビングから出て行った。
久しぶりにたくさん歩いたから疲れた。
部屋で少し休もう……
「1人で抱え込むなよ、バカ……」
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