スキル発動
翌日。授業が始まる前に遥香と二人揃って職員室を訪ねる。
そして、担任に実行委員におれ達が立候補することを伝えた。
遥香の方はともかく、おれが立候補したことに担任は少し驚いた様子だったが、すぐに満面の笑みになり、頑張れと肩を叩いてくれた。
おれはそれが少し恥ずかしくて、たまらず赤くなった顔を隠すようにそっぽを向いてしまった。
そんなおれを見て、遥香はどこか可笑しそうに笑っていた。いや、どこかその表情は嬉しそうに見えた。
ちなみに実行委員が決まったことは放課後のホームルームで伝えるとのことだった。
さて、どういう反応になることやら。
まぁ大方、予想はついているが。
それからこういうときはあっという間に時が過ぎるようで、待ちに待った放課後となった。
まぁもし可能なら永遠に来ないでほしかったが。
ホームルームで実行委員となる2人の名前がクラスに告げられた。
遥香の名前が出た時は全員納得という感じだったが、おれの名前が出た時は全員驚愕と言った様子でクラス中がどよめいた。
予想通りの反応だな……
生き地獄とはまさにこの事……
注目を集めたいからとか、遥香と近づきたいからとかそんな風に思われているんだろうな。
おれは次々と注ぐ視線になんとか耐えながら、ただ時間が過ぎるのを待つのだった。
◆
そして、翌日から実行委員としての活動はスタートした。
今日は全学年の実行委員が多目的教室に集まり、軽い自己紹介と全体の流れを説明されるらしい。
「失礼します」
放課後、遥香と揃って多目的教室に入る。
そこには既に何名かの実行委員が長机の前のイスに座っていた。と、その中に見知った顔を見つけた。
「あ、京君」
柳もこちらに気づき、椅子から立ち上がり、こちらへ寄ってきた。
「なんだ、お前も実行委員なのか」
「まぁね、行事ごとだし、新聞部としては最前線で物事を見ないとね」
「ああ、なるほどな」
そういえば、こいつ、新聞部だっけ。
すっかり忘れてたけど、ちゃんと活動してんだな。
「あの……私を差し置いて話、しないでくれる?」
すると、何故か少し苛立った様子の遥香が声を上げた。
「あ、ああ、ごめん……」
その言葉におれは反射的に謝った。
ここ最近、機嫌がよかったのにいきなりどうしたってんだ……
「別に話くらい、いいじゃない?」
しかし、柳は納得いかなかったようで遥香に食ってかかる。
おいおい、やめとけって……
たまらず、心の中で叫ぶ。
「そんなに話に混じりたいの?」
「誰がそんなこと言ったのよ。私を無視すんなってこと」
「無視されるような存在感ってことなんじゃないの?」
「ちょ、それはいい過ぎでしょ?!」
っておい、なんで出会って早々ケンカしてんだよ、こいつら……!?
そんなどっかのゲームの主人公みたいなスキル兼ね備えなくていいんだけど……
「たたかう、どうぐ、じゅもん、にげる」のコマンドがそれぞれの頭に浮かんでるのが見える……
まぁにげるのコマンドはうっすら透明になってて、選択できないみたいだが……
全く、これから実行委員としてやっていくってのにこんなんじゃ先が思いやられるな……
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