4章

胸がドキドキ

新年。1月1日。

ハッピーニューイヤー。

って何がハッピーなのかよくわからないが、とにかく世間的にはめでたいらしい。


「ふぁ……」


おれは大きな欠伸をしながら、リビングへと降りてきた。

しかしそこには誰もおらず、視線をテーブルに移すとそこには置き手紙が。


「職場の方と出かけています」


置き手紙には達筆な字でそう書いてあった。おそらく、京香さんの書いたものだろう。

ということは昌樹さんも一緒か。


リビングにかかってある時計に目をやると、今は昼の12時10分だった。

どうやら、思ったよりも寝ていたらしい。


そういや、遥香の姿が見えないけど、あいつも出かけてんのかな。

そりゃ、そうか。クラス一の人気者だしな。学校内でも有名人だし、今は冬休み。

きっと誘いに関しては引く手数多なのだろう。

くそっ……考えてたらなんか胸が痛くなってきたな……


それにしても、クリスマスの一件であいつが変な目にあってなきゃいいんだけどな。

まぁ別におれが変なことしているわけじゃないが、どう考えても釣り合わない組み合わせだからな。

くそっ……また胸が痛くなってきたな……


色々考えすぎて胸を痛めながら、おれはコタツに入り、ぼーっと流すようにテレビを見始めた。


テレビを見始めて少し経った頃、腹が減ったので、何かないかと探していると食器棚の下の棚に保存用の餅があるのを見つけたので、それを鍋であっため、雑煮にして食べ始めたところだ。


「……」


しかし、テレビつまんねぇな。

リモコンでチャンネルをいくつか変えてみるが、興味を引くものがなく、おれはテレビの電源を消した。


正月のテレビって大体、毎年同じ内容だから飽きるんだよな。

しかも、特番ばっかだし。

これ、食べ終わったら部屋でゲームでもやるかな。その方が有意義だし。


さて、そうと決めたら部屋に戻るか。

おれは雑煮をずずっとかきこむと、食器を台所の流しに置いて、部屋へと戻った。


そして30分後。


「……」


ベッドの上に座りながら、携帯ゲームのボタンをポチポチと無心で動かしていく。

もう少しでS級モンスターに勝てそうなのだ。苦節2ヶ月、ようやく1人で勝てそうなところまで上り詰めた。っていうか、1人でしかやったことないけど。


装備もアイテムも1人で揃えるのには、かなり苦労した。

しかし、その苦労ももうすぐ報われる。


「よ……し」


連続で攻撃を加えるとモンスターが怯んだ。今のうちにトラップを仕掛けてトドメを……

と思っていた時だった。


ピンポン。と家のチャイムが鳴ったのだ。


「……」


しかし、おれはそれを無視してボタンを動かし続けた。


正月から誰だ一体。まぁ誰でもいい。

おれは今、一世一代の大勝負に出ているのだ。

悪いが、居留守を使わせてもらうぞ。


チャイムはそのあと2回鳴らすのが聞こえたが、おれは無視し続けた。


やがて、チャイムは鳴らなくなり、おかげでおれもモンスターを倒すことに成功し、大変満足していた。


さてさて、手に入った素材で道具を強化しようか。そう思っていた時だった。


机に置いていた携帯がブブッと震え始めた。


「ん?」


おれはゲームから手を離し、携帯に手を伸ばした。

すると、バイブの正体はまさかの電話だった。


まさかおれと電話したいと思う奴がいるなんて……

自分で言ってて、かなりショックだが、事実なので仕方ない。

そんなことよりおれの番号を知っているとなると、かなり限られてくる。

両手で収まるくらいだからな。


そんなことを思いながら、おれは電話に出るのであった。

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