明日からおれ達は
服屋を出るとそろそろ夕方になろうかという時間だった。
おれは両手に先ほど遥香が買った洋服の入った袋を持っていた。
大量に買ったからかなり重いな……
いや、待てよ。遂にこいつを実行する時がきたか……
これを横にグルグル回すと遠心力が働くので、その勢いでそこらにいるリア充を薙ぎ払っていくか……
ふははは。人間ボーリングとは、まさにこのこと。やってやるぜ……
「またなんか変なこと考える……まぁいいけど」
はぁと呆れたように溜息を吐きながら、遥香は突然、空を見上げた。
「どうしたんだよ」
先ほどとはガラリと空気が変わったように思えたので、そう聞かずにはいられなかった。
「今年も終わりだね」
「そうだな」
ここ数ヶ月はなんか色々あって濃くてあっという間に過ぎた気がする。
明日には新年だなんて全然実感がない。
「まさかあんたと同じ家に住むなんて、ちょっと前まで考えもしなかった」
「おれもだよ。っていうか予言者でもない限り、誰も予想付かないと思うぞ」
「それもそうね」
見上げるのをやめ、遥香はこちらに視線を戻し、ふふっと小さく笑った。
「来年は何があるんだろうね」
「おれの妹が家にやってくる」
「えっ!?あんた、妹いたの?!」
その言葉に遥香は驚いたように目を見開いた。
「エイプリルフール」
妹ほしいって思った時はあるけどな。
まぁ結局ゲームの中で事足りたわ。何より、現実とは全く違うし。
ブラコン全開の妹なんてこの世にいるのだろうか。いたら是非とも紹介してほしい。
「何ヶ月先取りしてんのよ。全く……」
呆れたように首を左右に振り、目を少しだけ瞑った後、遥香は目を開け、真っ直ぐにおれを見てきた。
「来年もよろしくお願いします」
そして、丁寧にお辞儀をしながらそう言ってきた。
「あ、こちらこそ……よろしくお願いします……」
初めて見るその真剣な表情におれは圧倒され、頭を反射的に下げた。
遥香のあんな表情見たことがなかった。
それに向こうから来年もよろしくなんて言ってくるなんて、想像もしてなかった。
ここ数日で遥香への印象が大幅に変わってきていたが、これはそれにより拍車をかけるような出来事となった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます