めんどくさい奴ら
時刻は夕方の5時過ぎ。
おれ達はラーメン屋を後にし、遥香の提案した喫茶店に向かうことにした。
「うう、さむっ!」
店を出た直後、襲ってきた北風に陽香は身を震わせた。
「女子は大変だな」
「え、なんで?」
「ファッションとやらのせいで冬でも寒さを我慢してでもスカートを履かなきゃならん。唯一、タイツという装備があるが、そんなもん桧の棒で魔王に挑むくらい無謀なもんだろ。それに比べて男は楽なもんだぞ。夏は短パン、冬はジーンズと、しっかりと時期に合った服を着ることができる」
「例えがわかりにくいし、あんた、それデリカリー無さすぎだから。少しでもオシャレしたいから、我慢するんでしょうが」
「ふっ、めんどくさい生き物だな、人間って……」
やれやれとおれは肩をすくめた。
「そういうあんたも人間でしょうが……」
横で遥香が何やら言ったがおれは気にしないことにした。
そんなやりとりをしながら、おれ達は喫茶店へと向かうのだった。
そして、街の中を歩くこと20分。
寒さに身を震わせながら、おれ達はようやく喫茶店に辿り着いた。
窓から中を覗くが、店内は多くの客で賑わっていた。
もちろん、そのほとんどがリア充だ。
「あー、早く何か飲みたい……」
さっきとは打って変わって、急に大人しくなった遥香が店内へ入っていく。
こいつ、コロコロ表情変わりすぎだろ……
まぁ見てて飽きないけど。
そんなことを思いながら、おれもその後に続いて中へと入っていった。
「いらっしゃいませ~」
レジ担当の店員さんからルーティーンとも言えるお決まりの挨拶が。
「えーっと、このチラシ使えますか?」
遥香はカバンから取り出したチラシを店員さんに見せる。
「はい、使えますよ」
「良かった。ねぇ、あんたは何頼む?」
後ろに立っていたおれに向かって、遥香はぐるりと首だけこちらに向けてきた。
「ホットコーヒーとオールドファッションのセット下さい」
本当はエンゼルフレンチが食べたかったけど、ここにはないから我慢だな。
「あ、決まってたのね……えーっと、じゃあ、あたしはキャラメルラテとチョコブラウニーのセットで」
「かしこまりました。では合計で750円になります」
「じゃあこれでお願いします」
そう言っておれは一歩前に出て、財布から千円札を取り出して、台の上に置いた。
「え、割り勘でしょ?」
遥香はきょとんとした顔でこちらを見てきた。
ぐ、こいつは……
第三者が見てる前で割り勘とか言うなよ。
恥ずかしいわ。こういうところ鈍いんだよな、こいつ……
こういうのはあとでこっそり返してくれればいいんだからさ。
案の定、店員さんはやっちまったみたいな微妙な顔してるし、なんかおれが失敗したみたいになってるじゃんかよ……
「いいよ、あとで返してくれれば……」
そう言って、おれは店員さんにアイコンタクトを送った。それをしっかり受け取ってくれたようで店員さんはささっと会計を済ませ、おれ達を席へと案内してくれた。
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