安定
12月24日。いよいよ今日から本格的な冬休み。その日の昼の11時20分。
「よし。終わった」
おれは部屋の勉強机に座り、たった今、終わったばかりの冬休みの宿題をカバンの中に閉まっていた。
これから約2週間の冬休みを快適に過ごすために冬休みの宿題は早起きして3時間程度で終わらせた。
自分でいうのも何だが、元々、勉強がそこそこできるので宿題はそこまで難しいものではなかった。まぁぼっちだからやることなくて、ずっと勉強してたってだけなんだけど。
「さてと……」
おれはイスから立ち上がった。
そろそろ昼御飯作るか。んで、そのあとは安定の引きこもり生活を。
と、考えながら部屋のドアを開ける。
「あっ……」
「うお……」
すると、ドアを開けた先には部屋着姿の遥香が立っていて、驚きのあまり、お互い声を上げてしまった。
「ど、どうした?なんか用か?」
緊張する必要なんてないはずなのに、何故かどもってしまう。
思えば、こいつがおれの部屋を訪ねてくるなんて初めてだな。
一体どういう風の吹き回しなんだか……
「あ、うん……あのさ……」
妙に歯切れの悪い言い方。
もじもじと女の子らしくして、髪なんか手で耳にかきあげている。
この仕草がものすごく可愛らしくて、おれは思わず、頬を染めてしまう。
全く、破壊力抜群すぎるだろ……
「今からさ、出掛けない……?」
な、まさかのお誘いだと!?
全く、本当に昨日からこいつはどうしたって言うんだ。
この前の遊園地の時なんて二人でいるのを見られたくないなんて言ってたのに、今じゃ自分から誘ってくるなんて。
「なぁ、お前、もしかして熱でもあるんじゃないか?」
「し、失礼な……ないわよ。っていうか、あたしがあんたを誘うのがそんなにおかしい?」
「いや、おかしくはないけど……いや、やっぱおかしいわ。大体おれと一緒にいるところなんて見られて大丈夫なのかよ」
この前、せっかく、こいつの名誉的なものを守ってやったのに。おかげでおれはより周りから一歩置かれる存在となったわけだが。
「まぁ困るかもしんないけど、それより大事なものがあるかなって……」
「大事なものってなんだよ」
人は見栄やプライドを必死になって守るもんだからな。全く……くだらない。
しかし、それより大事なものって何だろうか。
「と、とにかく!あたしが誘ってんだからいいでしょ!!?」
鬼気迫る勢いでそう言ってくる遥香。
まさかの半ギレですか、この人。
「まぁいいけどさ……」
と、返事をしたところで気づく。
今日はクリスマスイブ。ということは。
街中はリア充で盛り沢山!!!!
そんな日に自ら出掛けることになるとは……
果たして、おれの精神が持つのか……
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