ぼっちは大体引きこもり

 12月7日。土曜日。


「ふわぁーあ……」


 大きくあくびをしながら、ゆっくりとベッドから起き上がる。

 今日は待ちに待った休日だ。

 家に籠っていても誰にも文句を言われない。迷惑をかけない。リア充に遭遇することもない。全くもって全てが最高すぎる。


 心地よい気分で、携帯のディスプレイを点灯させると午前10時21分だった。

 そろそろ起きるか。


 おれは携帯をベッドの上に置き、ゆっくりとベッドから降り、階段を下りる。

 そしてリビングに入ると、遥香がいた。

 珍しくこじゃれた服を着ている。

 どうやら、出掛けるようだ。

 さすが、リア充候補生は朝からお出掛けですか、全く、感心だな。


「あ、やっと起きてきた。あたし、これから出かけるから。ご飯もいらないし」


「あ、そう……昌樹さん達は?」


「忘年会があるとかで朝早くから出かけてる」


「そう……か」


 つまり、この家にはおれしかいなくなるわけだ。なんか変な感じだな。まぁその方がやりやすいけど。


「じゃあ、あとよろしく」


 それだけ言って、遥香はソファに置いてあった小さめのバッグを手に取ると、足早に家から出ていった。


「ふぅ……」


 さて、おれは安定の引きこもり生活といきますか。

 ケトルでお湯を沸かし、コーヒーを一つ入れた後、おれはノートパソコンの電源を入れた。








 ◆









「んー……」


 こたつに入りながら、ぐっと背を伸ばす。

 そろそろ休憩にするか。それに腹もだいぶ減ってきた。時計を見ると既に昼の3時を過ぎていた。

 ネットサーフィンに夢中で朝からコーヒー2杯と板チョコしか食べてない。

 おれはノートパソコンを一旦閉じると、台所へ向かい、冷蔵庫を開けた。


「なんもねぇな……」


 だが、残念なことに冷蔵庫の中にはソーセージと卵に調味料くらいしかなかった。

 そういや、昨日の夕飯で色々使い切ったんだっけ。

 仕方ない。なんか買いに行くか。

 いや、でも今日は家から出ないって決めたしな……

 あ、そうだ。こんなときこそ、便利なデリバリーを使おう。


 おれは階段を上がり、ベッドの上に置いていた携帯を手に取る。

 そして、リビングに戻り、デリバリーのサイトを開くためにホームボタンを押し、ディスプレイをポップさせる。


「ん?」


 すると、メールが3件きていた。差出人は全て柳からだった。

 おいおい、休日に何の用だ?

 少しだけ目を細めながら、メールを開く。


「こんにちは。休日にごめんなさい。もし、今日時間があれば連絡下さい」


 一件目の受信が昼の11時40分。


「こんにちは。まだ寝てますか?このメール見たら連絡下さい」


 二件目の受信が13時ちょうど。


「本当は起きてるんでしょ?めんどくさいから返信しないんでしょ。どうなの」


 三件目の受信が14時52分。


「……」


 やべぇ……

 思わず、頬がひきつってしまう。

 メール送りすぎだろ……

 というか、これは今更返信しても大丈夫なものか……


 おれは躊躇いながら、とりあえず返信ボタンを押す。

 すると、それと同時にピンポーンと家のチャイムが鳴った。その音にビクッと反応してしまう。


 全く驚かせんなよ……心臓、止まっちゃうから。


 おれは携帯をこたつの上に置き、のそっと起き上がり、インターホンの前に。そして、応答ボタンを押す。


「いるんじゃん」


 すると、まさかの画面の先には柳がいた。

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