そんなわけでおれは

 今は夜の7時。

 おれは玄関の前で呆然と立ち尽くしていた。


「……」


 玄関のドアが高くそびえ立つ門のように見える。

 しまった……遥香に連絡入れるの忘れてた。

 晩御飯の用意してないぞ……

 いや、別におれがご飯担当ってわけじゃないけど、住まわせてもらってる代わりにと、なるべく家事全般は引き受けてきたつもりだ。

 だから、晩御飯も自然とおれが作る流れになっているのだが……


「はぁ……」


 仕方ない。素直に謝って、軽く済ませられるものを急いで作ろう。

 ため息を一つ吐いてから、おれは玄関のドアを開けた。

 そして、一気にリビングまで進み、ドアを開ける。


「……」


 そこにはソファに座りながら、携帯をいじっている部屋着姿の遥香が。

 そしてテーブルには頼んだのであろう、宅配ピザが置いてあった。


「遅くなって悪い……」


 巻いていたマフラーを外しながら、とりあえず謝る。


「別に。珍しいじゃん」


「あ、ああ、ちょっとな……」


「ふーん……」


 遥香はおれとは一度も目を合わさず、結局携帯をいじったまま、リビングから出ていった。


 怒ってない……よな?

 でも、なんかいい気はしないな。

 次からはちゃんと連絡しよう……

 おれは髪を軽くかきむしりながら、置いてあるピザを食べることにした。

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