リア充
12月に入った。
毎年、この季節になると殺意が沸く。
この時ほど他人を嫌いになる時はない。
何故なら……リア充のためのイベント、クリスマスがあるからだ。
クリスマスが近づくにつれ、増えるリア充ども。
クリスマスはそもそもイエス・キリストの誕生日とされているが、日本人のリア充にとってはそんなのはどうでもいい。
むしろ、知らないやつの方が多いだろう。
やつらはただ、堂々と騒げればいいのだ。
そこかしこに存在するリア充どもに殺意を覚えながら、おれはクリスマスが終わるまでの約一ヶ月間を過ごさなければならない。
そんな心境の12月2日の昼休み。
「さむっ……」
寒さに身を震わせながら、弁当を食べる。
おれはいつも通り、中庭の端で昼休みを過ごす。
たまに風が通り抜けて少し寒いが、教室で過ごすよりはマシだ。
何が悲しくてリア充どもを見ながら、弁当を食べなきゃならんのだ。むしろ、風邪でもひいて部屋で寝てた方がマシだ。
「寒い……ねぇ、もう少しマシなところはないの?」
「……別に来なくてもいいんだぞ」
「一人で寂しいだろうから、わざわざ来てあげてるのに」
頼んでねぇよ……
まぁ寂しいのは本当だから、ちょっと嬉しいけど。
おれの隣にいるのは柳だ。
この前の一件以来、こいつとは多少仲良くなり、メルアドも交換した。
昼休みも最近、一緒に過ごすようになった。
「あったかいところなら一つあるぞ」
「え!どこどこ!?」
おれの言葉に柳はものすごい勢いで食いついてきた。
「体育倉庫。裏庭側のドア開いてるから、あそこから入れるんだよ」
夏に暑さしのぎで散策してると偶然見つけた。
あそこは中々快適だと思う。マットもあるからベッド代わりになるし。
「倉庫でご飯はさすがに嫌だな……それに狭い場所で二人きりっていうのも……」
「いちいち注文が多いやつだな」
「いやいや、普通だから」
2人でそんな会話をしながら、意外なもので昼休みはあっという間に過ぎていった。
そして授業も終わり、放課後。
おれは既に準備を済ませておいたカバンをひったくると即座に教室から出た。
教室に長居するのは危険だ。
リア充はすぐに群れ出すからな。
あっという間に教室はやつらの住み家になってしまう。
そして遥香はリア充の仲間だから恐らく、遅く帰るだろう。
おれは素早く、下駄箱で靴に履き替えると学校を出た。と、その時、ズボンのポケットに入れていた携帯が震える。
「ん?」
バイブが小刻みだからメールか。
おれにメール送ってくるなんてメルマガさんからだろうな。
だって携帯に誰かのアドレス、全然登録されてないし。
自傷気味の笑みを浮かべながら、携帯を開く。
「暇だから遊びに行かない?」
だが、意外なことに送られてきたメールは柳からだった。
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