2章
新たな存在
おれが門川家に住み始めてから早いもので一ヶ月が過ぎた。
おれと遥香の距離は遊園地以降、対して縮まることもなく、未だに家の中で軽く挨拶をする程度だった。せっかく登録したメルアドも未だに使っていない。
これから先、どうなるんだろうか。
そんなことを考えていたある日の昼休みのこと。
「こんなところで食べてるんだ」
突然、後ろから誰かの声が聞こえてきた。
ここには滅多に人が来ないので、おれは箸を止め、誰なんだと振り返った。
そこには、髪はショートカットで黒ぶち眼鏡をかけた小柄な女の子が立っていて、胸ポケットにはメモ帳とペンがささっている。
顔は結構、童顔な感じに見える。
「来ヶ谷君だよね?」
「そうだけど……」
誰だ、こいつ。クラスの連中ではないよな。見たことないし。ていうか、何の用だ?
おれに用事なんて、先生に呼ばれてるくらいしかありえないんですけど。
それにしても自分で言ってて、悲しくなってきたわ。
「ずいぶん、変わったところでご飯食べてるのね」
「ほっとけ」
教室だとおれの心が耐えられないんだよ、ぼっちだから。とは、さすがに言えない。
「それより何か用か?」
「あ、そうそう。あなたに聞きたいことがあったの。私は2組の
「ああ、隣のクラスか」
だから見たことないんだ。納得。
「単刀直入に聞くけど、あなたと門川さんが同じ家に住んでるっていう情報を得たんだけど、本当なの?」
その質問をされたとき、おれの心臓はドクンと思いっきりはねた。
「門川と?いやいや、ありえないだろ。普通に考えてないって」
手をぶんぶんと横に振りながら、得意のポーカーフェイスでしらを決め込む。
あくまでクールに。ここで慌てふためき、ボロを出してしまうのが素人だ。
玄人はあくまで静かに、何もしないのが鉄則。
「そうだよね。あなた、クラスでぼっちだって聞いてるし」
「ぐっ……ずいぶんストレートに言ってくれるんだな……」
おれだって、好きでぼっちなわけじゃないんだよ!
それより、他人に言われると中々の破壊力だな……
つい泣きそうになったぞ。ぐすん……
「あ……!ごめん、つい……」
柳は慌てて、頭を下げてきた。
「いいよ、いいよ……悪気はないんだろうし。とにかく、おれと門川はなんともないから」
それだけ言って、おれは急いで食べ終えた弁当の蓋を閉まってから柳の元から去った。
誰がどこでおれ達のことを知ったのかわからないが、面倒なことになりそうだな。早めに手を打たないと。
となると、遥香の協力が必要になるな。
それより、柳はなんでおれの元に来たんだろうか。そこが気になる。
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