おれ達の関係

 夜の7時過ぎ。


「いやー!悪かったね!まさか、こんなところで友人に会うなんて思わなくてね」


 車を走らせながら、運転席に座る昌樹さんがそう言う。悪いと言っている割に声が弾んでいるように聞こえるのは気のせいだろうか。


 昌樹さんの話によると、食べ物を買いに行ったら、古くからの友人に偶然再会して、意気投合してそのまま思い出話しで盛り上がってしまったことだった。

 京香さんは昌樹さんの隣で微笑んでいるだけで特に何かを話すことはなかった。


 恐らく、昌樹さんの言ってることは嘘だろう。

 まさか、たまたまやってきた遊園地に偶然と昔の友人と再会するなんて、ほとんどあり得ないことだと思う。

 何故かはわからないが、おれ達を二人きりにさせたかったんだろうな。距離を縮めろってことなのかもしれないけど、そう簡単にはいかないよな……


「はぁ……」


 ため息を吐きながら、窓から飛び込んでくる景色に目を馳せる。と、その時。


「ん?」


 ブーブーとズボンのポケットにいれていた携帯が震えた。

 携帯を取り出してみると、メールが届いていた。それも知らないアドレスから。

 誰だと思い、メールを開封してみると。


「あんたのアドレス知らないと不便だから、教えといてあげる」


 と、メールに書かれていた。

 驚きなのが送り主は、なんと遥香からだった。ご丁寧に件名に名前を入れてくれている。


「……」


 慌てて顔を上げると、遥香は携帯をそそくさとカバンにしまいながら、顔を隠すように窓から外を眺めていた。

 こいつ、いつの間におれのアドレスを……

 まぁ、いっか。せっかく教えてくれたんだしな。


「よろしくな」


 おれはそう打ち込んでメールを送信した。

 少しだけだが、今日の出来事でおれと遥香の距離は縮まったように感じた。

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