小さな毎日
@ramuneyatuhashi
小さな毎日
何もかもが嫌になる。唯一の癒しの世界から目が覚めた時には小さなアパートの一室に騒がしい目覚ましの音と自分のため息が聞こえる。
起きたくないとわがままを言う身体を無理やり起こすのは一苦労だ。パジャマのボタンを1つ1つはずしながら今日もまた学校に行かなければいけない、今日の講義はなんだったっけ、と考えているとお腹がキリキリと痛む。
大学生にもなってこんな体たらくとはつくづく情け無い。
高校の受験の際に担任に勧められた大学を受験、合格し入学した。
受験なんて考えてもいなかった私は家の近くで就職先がないか探していた。
まわりのみんなは塾に通って一生懸命勉強し、いい大学に進学していい会社に入りたい。そんな事を言っている人達ばかりだった。私からすればただの綺麗事にしか聞こえなかったがまわりの人からすれば私は人生を諦めた人に見えただろう。
そんな私を見兼ねた担任の先生が私に進学を勧めてきた。
「お前は成績が悪いわけでもない、進学して勉強を続ければきっといい会社に就職できる」
いい就職先が見つかるなんて無責任な言葉をその時の私は信じていた。人生はそんなに甘くない。今のご時世大学を出ただけの
人間などにはなんのステータスもない。おまけに私は不器用なのだ。生きることだけで精一杯なのに。
大学に入学した後、なんとなく見学に行った文科系のサークルに入ろうかと思っていたが迷ったまま6月になってしまった。もったいないような気がしたが、人付き合いが面倒だから結果的に入らなくてもよかったのかもしれない。
一人暮らしというものは大変だ。私は幼い頃両親が離婚し、母親に育てられたが中学2年生の時に母親は仕事に行くと言ったまま帰って来なくなった。
ご飯の準備や掃除、洗濯。中学2年の時からすべて一人でしていたので慣れたつもりでいたが、やはり面倒くさいものは慣れても面倒くさいものだ。
朝食の支度をし、テレビをつける。
お決まりのニュース番組を見ながら朝食を食べる。よく朝から仕事なんかできるものだ、と感心しつつ、テレビからニュースが流れてくるが寝ぼけていて内容が頭に入ってこない。
朝食を済ませ、大学へ行く準備をする。
肩がけのバックをソファから拾い上げ、
玄関へと向かう。靴を履きかけたところで
今日がゴミの日だと思い出す。履いた靴を乱暴に脱ぎ捨て、ゴミの入った袋を手に取り
靴を履きなおし、玄関の扉を開ける。
外の新鮮な空気が部屋へと流れ込んだ
「帰ってきたら換気でもしようか…」
ぼそっとつぶやきながら玄関の扉を閉じ、鍵をかける。
アパートのゴミの集積場所にゴミ袋を置き、行きたくないと嘆くカラダに鞭打ってアパートを後にする。
小さな毎日 @ramuneyatuhashi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。小さな毎日の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます