動き出す軍の闇
「長官職に就いてから…すこし職権を乱用しすぎではないかね?レドルン。」
そう話す声の主はアギン少将だった。
「いえ。アギン少将。
長官とはいえまだ大佐のレドルンはアギンに敬語を使って返した。
「そういえば…ルカの入隊前からレドルンは異議を申し立てていたね。」
アギンはレドルンの座る椅子の周りをぐるぐる回って威圧的に言っている。
「あぁ…あの大尉の娘でございますか。」
レドルンは用意されたコーヒーを悠長に飲みながら答えた。
「貴様は何が目的だレドルン。」
アギンはレドルンの前の机に両手を勢いよくぶつけ言った。
レドルンはお構い無しにコーヒーを美味しそうに飲んだ。
「アギン少将はお分かりになりませんか?あの娘を置いておくという底知れぬ危機感を。あの娘がこのバントランド軍のトップにでもなれば…」
片手にしていたコーヒーを机に置いてアギンの横に来た。
「
コーヒーを飲んでいる顔ではない焦りの見えたレドルンの顔がアギンの目の前にあった。
「わかっている。だがまだ先の話だろ。お前の出る幕でもない。」
その至近距離の顔を無理に離してアギンはそう告げた。
「あの娘はいずれ死にます。」
その言葉にアギンの頭は勢いよくレドルンに向いた。
「レドルン、君の約束は永遠には守れそうもないな。出て行ってくれ。」
そうアギンは言いながら自分の席に着いた。
「私がたとえ死んだとしても約束は約束ですからな?」
レドルンはそう捨て台詞のように言い残して出ていった。
「まさか…こんなに重い処分になるとはな…」
そうオーランドが残念そうに言った。
「私も含め、ジャー人事次長もフルメルフ地域警備次長もそれは重いと言ったのですが…すみません。」
そう言い頭を下げるのはマザ司令次長だった。
「いや、あの子は自分の信念とやらをまだ制御できていないのだろう。」
そう外を座りながら眺めオーランドが言った。
「彼女の過去のことは聞きましたが…確か、あの惨劇で親を同時に二人共失い、以後はバトランの祖父母の家で育ったとか…しかし、そうであっても彼女の判断は…」
マザはそうグチグチに言っている。
「あの子には2つの感情が見え隠れしていた…私にはそれしか見えなかった。」
考える顔になるオーランドだったがマザもいつしか同じ顔になっていた。
「彼女の考えることは私には全然…というより全くというのが適語でしょうね。人の心が読み取れる能力を持っているオーランド大佐にわからないんじゃ、私がわからないのが当然でしょうが…」
マザは考えるのを諦めソファに腰掛けた。
「しかし…あの時のあの子は…」
(回想)
「我々はミミジュート陸軍士官小学校の生徒である!我々の生存を保証しない限り、この扉は開けない!」
ルカは地下壕から問いた。
「今いるのは私と部下の2人だけだ!私達の目的は皆さんを救出することにある!そのためあなた方には危害は加えないことを制約する!だからドアを開けてくれ!」
それを聞き、ルカは扉を開けた。
すると小銃を持った兵士2人が開けた瞬間に小銃を地面に落とし中に入った。
「私はバントラント陸軍のアギン大佐です!皆さんを救出しに来ました!」
(現在)
「…なんだ…何かが引っかかる…」
そうオーランドが呟いた。
「ん?何ですか大佐。」
その呟きにマザが反応した。
「あぁいや、何でもないよ…」
オーランドがマザにそう答えた。
「では私は夕方の作戦会議に出ますのでこれで。リュクルゴスになにか
マザが身支度しながら聞いた。
「いや…ない。」
オーランドがそう返した。
「分かりました。では失礼します。」
マザがそう言い部屋を後にした。
「ルカ=トーラント…15年前だから当時6歳…コール=ターナー中佐…中佐にしては若いな…ん?21?…まさかな…」
マザが出た後ルカとその身辺の関係者の書類を読みながらブツブツ言っていた。
「教師にも怪しい者は…ん…?まさか…あの人が?」
オーランドは1人の名前をみて引っかかった。
「まさか…な、同姓同名…か…」
その名前は…ファーティス=レイだった。
オーランドは大尉時代にファーティスの部下だったのだ。
「ファーティス少佐が…生きていたとは…」
オーランドは深刻そうな目で外を眺めた。
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