タウアーの悲劇
6000m級のオードリアン山脈の標高800mで木々が街を囲い込むようにあるミミジュート共和国の都市タウアー。
色は白の単色で古い歴史のある都市であった。
人口は2万3千人で首都のノルザより多かった。
ここに将来二つの国を変える人物がタウアーの陸軍士官小学校にいた。
「おい、ルカ。」
「なによコール。」
いつも取っ組み合いの喧嘩をしてる2人である。
コールと呼ばれるのはタウアーで唯一の病院を経営するターナー家の少年、コール=ターナーで、ルカと呼ばれる子は父親がミミジュート陸軍の中将をしていたという経歴を持つ強気な女の子、ルカ=トーラントだ。
「嘘はいけないって先生に言われただろ?」
コールはルカのついた嘘で親に怒られたとルカに文句を言っている。
「嘘に引っかかるコールが悪いのよ。」
とルカはしらを切っていた。
「なんだと!?」
とコールがルカに掴みかかった。
「そっちこそ何よ!」
とルカも掴みかかった。
「ルカもコールもやめろよ!」
と止めたのは同級生のグレン=ガネルだった。
「喧嘩したって意味無いだろ!」
そういうグレンにコールが掴みかかったときにコールとルカにゲンコツを下した先生がいた。
「お前らはいつまで経っても進展がないな!そんなんじゃ国を守れないぞ!」
そういうのは元陸軍中佐で士官小学校の教師のファーティス=レイだった。
「近年の戦争は近距離戦より長距離戦の方が有利だ。掴み合って喧嘩なんて、本当の戦争になったらお前達は戦死者となるぞ。」
ファーティスは最初、論理的に話していたが、後半2人の顔の目の前で威圧的に話した。
「しかし先生!」
コールがファーティスに反論しようとしたが、ファーティスの威圧感でコールが言えなかった。
「私は戦場において敵国の兵士をどこに居ようとも狙撃した。だがな、狙撃するイコールその兵士の人生を終わらせる立場にあるという事を私は必ず頭の片隅に置き、そしてその兵士に最大の敬意を払いながら狙撃している。敵国とはいえその兵士には最愛の家族がいるだろう。その家族にも敬意を表して狙撃をする。その喧嘩は相手に敬意を払いながらやっているのかな?コール君。」
そう語ったファーティスにコールは恐縮していた。
「…いえ…申し訳ありません…」
コールはそう言い頭を下げた。
「すみませんでした。」
ルカもファーティスにそう謝った。
「謝ることではない。命を落とす前に気づいた自分に感謝しなさい。」
2人にファーティスはそう言った。
その瞬間、空襲警報が街中に響いた。
タウアーに空襲は無かったが、訓練で空襲警報は聞いていた。
しかし、今は訓練ではない。
「みんな!地下壕へ退避!」
その瞬間、全員が緊急時用のリュックを持って地下壕へ退避した。
全員が入りきる前に爆撃機の爆音とその後に爆撃機から落とされた爆弾の爆発音と振動が生徒達を襲った。
「急げ!急いで退避しろ!」
ファーティスがそう叫びながら避難誘導していた。そしてそして全員いることを確認した所で地下壕の扉を閉めた。
空襲は8分間続いた。
その日は士官小学校の生徒138人と教師19人で一日過ごした。
鉄則『空襲の次の日は敵国兵士の偵察が来る』
これにより地下壕へ入った場合、最低3日は地下壕で過ごさなければならない。
2日目の昼、本来備えてある食料の不足によりファーティスを含む教師2人とコールを含む生徒5人で食料確保のため地下壕を出たが、3日目の朝になっても帰ってこなかった。
そして3日目の昼だった。
ゴンゴン…
地下壕の入口の扉が叩かれた。
「中にいますか!?私たちはバントラント連邦共和国の救助隊です!いたら返事してください!」
もしかしたら敵国かもしれない…嘘かもしれない…開けた瞬間殺されるかもしれない…
だが、地下壕には食料はなく、もう既に教師全員は生徒に全ての食料を与えていたため3日間飲まず食わずで動けないほどであった。
「我々はミミジュート陸軍士官小学校の生徒である!我々の生存を保証しない限り、この扉は開けない!」
ルカは地下壕から問いた。
「今いるのは私と部下の2人だけだ!私達の目的は皆さんを救出することにある!そのためあなた方には危害は加えないことを制約する!だからドアを開けてくれ!」
それを聞き、ルカは扉を開けた。
すると小銃を持った兵士2人が開けた瞬間に小銃を地面に落とし中に入った。
「私はバントラント陸軍のアギン大佐です!皆さんを救出しに来ました!」
ルカ達が外に出るとタウアーの街は瓦礫だらけで他に兵士や戦車、輸送ヘリなどが多くあった。
「アギン大佐。」
そうルカがアギンを呼んだ。
「なんだい?お嬢ちゃん。」
アギンがルカの目線にしゃがんで聞いた。
「昨日、先生2人と生徒5人が外に出たんです。その人たちは保護しましたか?」
そう聞いた瞬間さっきの部下と顔を見あわせてアイコンタクトをとった。
「すまない。昨日、ここにいたのはアラン帝国軍なんだ。バントラント軍はアラン帝国軍の撤退した朝に着いたんだよ。」
そうアギンがルカに言った。
ルカは心配でならなかった。
「ルカ。絶対先生達は無事だから、今は逃げよう。」
グレンがそうルカに言った。
この空襲で約1万人が亡くなり、2千人がアラン帝国の捕虜になった。
バントラント軍の救助隊により6月2日の大統領からの撤退命令までに1万人以上がバントラント連邦共和国に避難した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます