0401~地震について~
その地震を最初に感じたのは、大阪平野と大阪湾での2連続大震災の直後に義務化されて1つの市区町村に必ず設置されている地震計だった。
政治的やその他諸々の要因で21世紀に入るまでには全市区町村に設置された地震計の1つだが、今回の大地震によってその寿命を終える事になる。
最初の地震波、つまり
だが、その1秒の間に送られたデータは、しっかりと京都の気象庁本庁にS波が地震計を襲うより早く送られ、本庁の機械がすぐに計算を始めた。
北緯 36.385499
東経 137.151637
深さ 5キロ
マグニチュード 7.9
地震波検知から3・2秒後、算出された数字を元にして緊急地震速報が発表される。
さて、一般的には知られていない事だが、緊急地震速報には2つの種類がある。テレビなどでよく見かける一般的な物と、高度利用者向けの物である。
『緊急地震速報 推定震度6弱 到達まで7秒』
例えば、震源に近かったテレビ局。
その速報が鳴り響いた直後、それを聞けていた者は行動がとれたかというと、突然の事に頭が固まり、ほとんどの者は弱くないP波とS波に翻弄される事になる。
『緊急地震速報 推定震度6強 到達まで1秒』
そのテレビ局より前でかつ強い揺れに見舞われた所は、ほとんど反応出来ない内に大きな揺れに翻弄される。
P波またはS波の振幅が100ガル以上もしくは解析からマグニチュード3・5以上または最大震度3以上と推定される場合に発表される地震速報は、まずそれを知らせるための第一報が出され、次いでその他の地震計での揺れなどから情報を調整しつつ続報を出していく。
今回の地震の場合は、速さを求めたゆえに誤差の可能性が高い第一報とほとんど違わない規模となり、大きな修正はなく、登録していた地方公共団体やライフライン関係の会社、製造、放送事業者は思い思いの動きをし始めた。
一方、独自の地震警報システムで直ぐ様動いた所もあった。
「うおっ!?」
鉄道会社、特に官鉄だった。
連続大震災において大きな被害を出してしまい批判にさらされた事から、独自のシステムを導入して、P波で観測された揺れから規模などを計算して、検知後1秒で運行中の列車に速報を出すことに成功した。
その速報を受けて
目的の駅まで1時間はかかるので、どっさり出された春休みの宿題を四苦八苦しながら解いていたが、何事もなく進んでいた列車が大きな音を立てて急ブレーキをかけたため、進行方向の方を向いて勉強していた彼は慣性で前につんのめる事になる。
宿題を膝の上に乗せていたので、手はあいており、対面の座席に手をつく事が出来たが、その直後に真逆の動きがやって来た。
『地震です! 何かにっ!?』
ブツッ、と放送が途切れた直後、戸棚から自分のカバンが落ちてきた彼は気を失う事になる。
近くではそんな具合だったが、遠くはというとやはりテレビやラジオがいの一番に地震を伝える事になった。
『飛騨地方で地震 強い揺れに警戒
飛騨、美濃、信濃、越後、越中、加賀』
まずそのテロップが出て。
『緊急地震速報です、強い揺れに警戒してください。緊急地震速報です、強い揺れに警戒してください』
チャイムが鳴った音にその録音された音声が流れ、画面の下部には色が塗られた地図が出る。
音声が流れ終わるのを待ってから、長い情報番組を進めていた
身構えていた者の1人で、実家から早くも寮に帰ってきていた同級生の1人は、食堂のおばちゃん達と一緒にその様子を見る。
『先ほど京都にあるこのスタジオも揺れました。極めて強い地震と見られます。火の元は消されたでしょうか? 車を運転中の方は慌てずゆっくりと路肩に止めてください。上から落ちてくるもの、倒れてくるものに気をつけて下さい。沿岸にお住まいの方は津波に注意してください。地震の詳しい情報は入り次第お伝えします』
そこまで話した所で、画面はいつものスタジオからどこかの町並みに変わり、直後に画面が大きく揺れ始めた。
『こちらは地震発生時の富山市内の様子です。カメラが縦横に大きく揺れているのがわかります』
その間にテロップが変わる。
『午後2時13分頃、飛騨・越中地方で極めて強い地震が発生しました』
そして、画面が地図に変わり、同時にアナウンサーの声が一段高くなる。
『先ほどの地震で、越中東部と飛騨地方で震度7を観測しました! 繰り返します! 越中東部と飛騨地方で震度7を観測しました!』
飛越大震災。
後にそう呼ばれる事になる地震が起きた。
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