第二部
プロローグ
始まりの時代。
かつてあった古の世界で。
――この世界を生きる命達よ。
――自らの住まう地は、自らの手で創り上げなさい。
自由を愛するこの世界の神様フラムは、生み出したばかりの命たちにそう告げた。
自由神は、命を創造しても、命の在り様までは定めなかった。
しかし、原初の命達は、ただ見守るにはあまりにもか弱く、また儚い存在だったために、たった一つだけ助力をする事にした。
それは
自由神はその巫女の事を、創造する巫女……
気が遠くなるほどの長い年月がそれから経過したが。
それは、始まりの頃の命達が自らの力だけで生きられるようになってからも、ずっとずっと今まで続いてきた。
それは自由神が、命達が自由に歴史を歩み続けられるように……と、そう残してくれた祝福と願いだった。
だが、神様は知らなかった。
やがて自分が神で無くなる日が来ることを。
旅を初めてからそれなりの月日が経った。
旅の色んな事にも慣れきたと思う。
だが、俺……いやあたしは時々思うのだ。
神様はどうして巫女を二人にしたのだろう、と。
「うらぁっ」
ボキョッ。
「そりゃあっ!」
メキョキョッ!
歴史の中で、今までは巫女は一人だったのに、何故か今代だけ巫女は二人。
初めの内は、片方……自分は偽物で、もう片方……モカが本物なのだろうと思っていた。
だが、ナナキにちゃんと「巫女だ」と言われたり、あれから色々旅をしてきて世界に残る巫女の願いの結果を見てきた今、あたしは違う風に思っている。
神様はたぶん意味のない事はしないんじゃないか?
巫女が二人なのにもきっと意味があるはず……。
そんな具合に。
「どりゃあっ!!」
ドゴオッ!!
「……わあ、木がボッコボコになってる」
「ルオン様、何をされているんですか」
あたしは旅の途中、街道にて鍛錬を行っていた。
気が付けば、サンドバックがわりにした目の前の木はボコボコになっていた。
護衛であるナナキが優秀な為、あたし達が危険にさらされる事は滅多にないのだが、それでも何かあった時の為にと鍛錬を続けていたのだ。
頭の中で訓練生時代にこなした特訓メニューを思い起こし、時間がある時を見つけては、手ごろなものを相手に消化していた。
しかし、考え事をしていた為、力の力の加減ができなかったようだ。
無我夢中で拳を振るっていた結果、(木が若干可哀想になってくるような見た目の》個性的なオブジェになってしまった。
近くに立つ二人の反応は驚きすぎて、開いた口が塞がらない、といった感じだ。
「ルオンちゃんってとっても馬鹿力だったんだよね」
「そうか? 確かにあたしほど威力のある拳は出せないって、昔教官が言ってくれたけど、そんな風に口を開けて驚くほどの事かな」
強い奴ばかりに囲まれていた訓練生時代の思い出や、力仕事で屈強な体つきの同僚とばかりつるんでいた経験もあってか、いまいちピンとこない。
だが、女性として考えれば木をボッコボコにするような拳を放つような人間はどうだろう。
ナナキをこっそりと窺ってみる。
巫女として、とかそういうのは気にする事はなくなったけど、何でかこいつの前でこういう事するのは抵抗があるんだよな。
「ルオン様? どうしましたか」
「なっ、何でもない! そろそろ休憩も終わりにして先に進もうぜ。あんまりゆっくりしてたら町に着く前に日が暮れちまう」
疑問を声にするナナキに早口でい返した後、何も考えず何処かへと向かって歩き出した。
「待ってくださいルオン様、まだお昼にもなってませんし、ここで昼食を摂る予定では……」
「ルオンちゃーん、方向違うよー」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます