21話【実らない恋】

「おはよーるいー」

「おはよう、るいさん」

「おっはー」

「おはよ」

みんなから声をかけられる

「おはよー」

相変わらずの変わらない平和な日常。

朝の時間を他愛もない会話をして、時間になったら席について本を読み出す。

「はーいホームルームはじめるぞー」

担任が入ってきて出席を取り始める。

「三島…は今日で休み一ヶ月目か」

眠たい、朝からこんなに眠たい。

今日はおねんねの日にでもしようかな

しばらくぼーっとしているとホームルームは終わっていたらしくみんながぞろぞろ移動しだした。

「ねえるいー」

「ん?」

菜乃と百合子がくる。

「ここあちゃんどうしたの?いきなり来なくなったよねー」

「るいさんならなにか知っているのでは?」

「えー、わかんないなぁ」

…ここあって


誰だっけ?


「姉さん」

学校が終わり望々と帰ろうとすると女子の群れを見つけてなんだろうとしばらく見つめていたら瑠架が待っていた。

囲んでいたのは私のクラスメイトだったらしい

「待ってたよ、帰ろ」

「るみあは?」

「これから」

「はいはい」

クラスメイトからの視線が痛いがそれを無視して学校をでる

「ごめんのの、今日はるかと帰るね」

しばらくうちの家住んでいた望々だったが、望々のお母さんが帰ってきたので戻ったのだ。

「…おう、じゃあな」

「うん、ばいばい」

望々に手を振ってから瑠架の方へ向き直って瑠海亜を迎えに行く。


「うん、ばいばい」

瑠李が手を振ってから瑠架くんのとこに行った。ふと瑠架くんと目があって

舌を出して笑った後、瑠李の方へ行った。

なんかちょっと前からちょこちょこ腹立つんだよな…中学生が…

待てよ、そういや瑠架くんって中学生か…

中学生に苛立つほど俺も子供じゃないよな…


「ねえねえ姉さん今日飯なに?」

「唐揚げかなぁ」

「よっしゃー」

「嘘、野菜炒め」

「…は?」

「嘘、唐揚げ」

「姉さん嫌い」

「やっぱ野菜炒めにしよっかなぁ」

「愛おしき美しいお姉様」

「よろしい」

しょうもない会話を交わしながら中1の男の子らしいなと実感しながら帰る。

見た目は高校生なのに中身はまだまだだ。

「あら、るいちゃんにるかくんじゃない」

保育園につくと私の保育園時代から瑠璃子、瑠架、瑠海亜とお世話になり続けてる先生が出迎えてくれた。

「るみあちゃんのお迎え?」

「はい、お願いします」

「はーい」

相変わらずの笑顔で瑠海亜を呼びに行ってくれた。

「ねぇね!にぃに!」

瑠海亜は走って出てきて勢いよく抱きついてきた。

「はやいねぇーるみあ」

「るいちゃんたちが見えたみたいで行ったらもう用意できてたのよ」

そのあとからゆっくり先生が来て笑って教えてくれた。

「そうですか、…るみあいい子にしてたの?」

「うん!」

「おおー偉いじゃん、今日は兄ちゃんが肩車して帰ってやろう」

「わー!」

瑠海亜の目線が合うように屈むと瑠架も同じように屈んでまだまだ小さい妹と平和なやりとりをする。

瑠海亜の荷物を私が受け取り、瑠架が瑠海亜を肩車した。

「ふふふ」

「どうしました?」

「なんだか若い夫婦みたいね」

先生に茶化された。挨拶をして保育園を出る。

「夫婦だってー」

瑠架をいじるように言ってみる。年頃の男の子ならこういう言葉に恥ずかしがるはず

「姉さんと夫婦かぁー毎日怒鳴られそうだね」

「は?」

…だったたけど瑠架には通じなかった。

「あんた今日唐揚げないわよ」

「はいはい、すみませんでした」

膨れっ面で瑠架をよりちょっと早く歩いていく。

「姉さん待って」

「…」

「無視かよ…姉さん待ってってばー」

「…」

「姉さーん」

瑠海亜を肩車しているので下手に走って追いつこうとすると危ないから走らないことをいいことにどんどん早足で進んでいく。

「姉さんってば」

っと思っていたら腕を掴まれた。その瞬間横に自転車が通り過ぎていった。

「危ないでしょ、気をつけてよ」

「…」

腕が引かれて後ろを向けば私より頭1つ分以上高い瑠架の姿があった。

「危なっかしいんだから大人しく俺の手出しができる範囲でいてよ」

「…危なっかしくない」

「ついさっきまた病院行きになりかけた」

「…別によけれたもん」

言い訳がましくなってきた。

「はいはい、わかったから。じゃあるみあと手を繋いでてくださーい」

瑠海亜を軽々と下ろして瑠架が手を繋ぐと瑠海亜が私の手を握ってきた

「ねぇねと手繋ぐ!」

相変わらずの無垢な笑顔で元気よく呼ばれる。

「るみあはいい子だなぁ…るかのぶんの唐揚げをるみあにあげようかなぁ…」

「るみあそんなに食べられないと思うよ?」

「じゃあ私食べる」

「太るよ?」

「じゃあのの呼ぶ…。」

「…またあいつかよ」

「ん?なんか言った?」

小声でなにか言った気がしたので聞き返した

「ん?いやなんでもないよ」

ふにゃって笑って首を少し傾げる。

「…あそ」

あまり深く気にはせず帰った。


「ねえ、姉さん」

「ん?どした?」

私の部屋で漫画を読み漁っていた瑠架に急に呼ばれた。

「今日俺、姉さんと寝てもいい?」

「はあ?」

いきなり何を言い出すかと思えば…

「おっきい男の子がお姉ちゃんと寝るねぇ…なに幼児化でもしてるの?」

「別にいいじゃん、だめなの?」

「…」

望々とのを見られていたんだろう。

「脅してるの?」

「まさか」

おちゃらけた様子

「ねーさん?」

笑顔で顔をのぞき込んできた。

「1人で寝なさ―っ」

抱きかかえられてそのままベッドにおろされた。

するとそのまま壁に追いやられて瑠架が入ってきた。

「あったかいあったかい」

壁側に向いていたので瑠架がこっちを向かそうとしていたがそこは大人しく諦めたらしく、後ろから抱きしめてきた。

「姉さんの匂いだ」

顔をうずめられる。

もとからスキンシップが兄弟1多かったし、ものすごく昔から懐いていたから今更そんなに引くことはないけど、

最近進行している気がする。

「るい姉…」

抱きしめる力が強い。

「ねえ、るか…ちょっと力弱め、っ!?」

すんなりと瑠架の手が服のなかに入ってきていることに気がついた。

「ちょ、こら、やめなさいっ…あっ」

お腹を撫でられる

「本当にお腹弱いんだ」

どんどん力が抜けて抵抗できなくなる。

手を止めようとするが瑠架が片手で私の両手を抑えつけてて足も瑠架の両足に挟まれていて完全に身動きができない。

「ふふ、ばーか」

耳元で息を吹きかけられて放された。

「るか?」

「ん?」

「殴られたいの?」

「ヤりたいかな」

「殴るよ?」

「SMプレイ?俺がSね、ちょっと紐持ってくるから待って…」

「持ってこなくていいから」

瑠架の方に向き直って思いっきり睨む

「そんな顔してたらしわできるよ、おぶすな顔がさらにおぶすになるよ」

「喧嘩売ってんの?」

「俺が女装したら俺の方が可愛い」

「…は?」

ちょっと許せない発言が聞こえた。

「メイクもして、服もきて、髪もちゃんとしたらそこらの女より俺の方が可愛いと思うんだけど」

まあ確かに女よりの下手したらそこらの女の子より綺麗な顔立ちだから女装しても背の高いモデル体系の美人にはなるだろうけども…

可愛い、ですって?」

「ね、姉さんよりとは言ってないよ…」

「俺が女装したら俺の方が可愛いって言ったじゃない」

「ね、姉さんと比べてないよ…」

「へぇ…?じゃあ誰と比べたのかしら?」

「えっと…あっそれより姉さん!もう遅いからさ!寝よう!そうしよ!はい、おやすみー」

「あ、こら、るか!?」

強制的に瑠架と逆方向に向かされる。

少し暴れたので布団が暖かい。

「ふふ」

「どうしたの?」

「いや、昔はよく姉さんと寝てたなって」

「そうだね」

手放しそうな意識と格闘しながら瑠架と会話を交わす。

「姉さん」

ふいに優しく抱きしめられた。

「あったかい、それにいい匂いする」

すっぽり包み込まれる大きさ、そして暖かい

「おやすみ」

もう声変わりして低くくて優しい声

「おやすみ」

瑠架の匂いよりベッドからの望々の匂いがまだする。

スマホの待ち受けに設定された二人で撮った写真を眺めて、望々を思い浮かべてから目を閉じた。

温かくてこんなにも幸せなのに、なのに辛い。私はこんなにも望々のこと


ふいに目を開けたら、姉さんが望々ちゃんとの写真を眺めていた。

きっと姉さんは望々ちゃんのことが好きなんだろうけど、

そんなのしらない

望々ちゃんより、潤より、姉さんの今までの男より、姉さんを好きだったやつよりもずっと前から

俺が



『好きなんだけどなぁ』


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