20話【sugar and bitter・1】

「ねぇーるぃー次の理科の教室一緒にいこぉ?」

心愛からのお誘いだった、ここ最近すごく絡んでくる。

「ん?いいよ…あ、教科書わすれた」

「借りにいくぅ?」

「おー、ついて来る?」

「いくー」

教室を出て望々のクラスにいく。

「誰に借りるのぉ?」

「ん?ああ、のの」

「えぇ?私が借りてあげるよぉ」

「いやいいよ、ののー」

ついたので望々を呼ぶ

「なにー」

「理科の教科書貸し―」

「りあちゃーん!るいに理科の教科書貸してあげてー!」

「え」

りあと呼ばれた子は笑顔で机からすぐに教科書を出し望々より先に渡してくれた。

「あ、ありがとう…ののーやっぱだ―」

「はい!るいいこぉー」

凄い力で引っ張られて結局一言声を掛けただけで話せなかった。

ここのところ学校ではこんな調子だ。どこに行くにも必ず心愛がついてきて、望々の姿が見えれば必ず避けさせる、他の子と話すときもあまり良い顔はしないが。唯一帰り道だけは家が逆方向だからさすがに望々と帰れているけれど、なにかあってもおかしくはない。

私の学園ライフが…。

「でねでねぇー!」

心愛の会話を適当に流す。

「るい!時間やばいよ!」

「え、まじ」

「走ろ!」

「えっ、あっちょっ、私まだ走るまで回復してないんだけど!?」

クラスメイトの子が引っ張って行ってくれた。後でむちゃくちゃ心愛は拗ねてるだろうな…

「ちっ」


「最近るいと学校で話せてない。」

唐突に望々からそんなことを言われた。

「仕方ないよ」

「あのここあとかっていうやつのせいだろ」

「人のせいにするのはだめ」

「じゃあるいは別にいいのかよ。じゃあ俺以外でもキスできるんだ」

「どうしてそんな話になるのよ。…そんなわけないでしょ」

望々の方を向いて、両手を望々の顔に添える。そのままキスを落とす。

「私は、ののとしかしないもん」

首に腕を回す。すると腰に腕が回されてきた。

「…そっか」

望々が幸せそうに微笑む。

もう一度キスをした。


「るいー」

呼ばれたのでそっちを振り返った。

「あ!のの!」

心愛を交えた何人かで談笑していたが、それを放り出して望々のところへ向かって思いっきり抱きついた。

「どしたの?」

「いやまぁちょっと、おいで?」

「え?うん」

隅の方まで連れて行かれた、普段から誰も通らない場所なので静かだ。

「どうかしたの?」

ひさしぶりに学校でまともに話す。

「んっ」

キスされる。

「ねえ、学校はまずいって…」

「じゃあ次の授業さぼろうよ」

「ええ…」

「そしたらここでやるのやめてあげる。」

首筋に舌が這ってくる。

「うっ…ねぇ、やだぁ」

「さぼるの、さぼらないの」

「さ、さぼるからやめて…」

「ふっ」

離してくれた。

「じゃあ行くかー」

パシャッ

音のした方向を向く

「なにやってるの、ここあ」

「んー?写真撮ったんだよぉ?」

「…今すぐ消して」

「いやだ。ねえ、るいってののちゃんと付き合ってるの?」

「関係ないでしょう、消して」

「なんでよ!どうしてここあじゃないの?」

話が通じない。自分の思い通りではないから。

「ねえ、ここあ、消して」

「じゃあ1つ言うこと聞いて」

どうせろくでもないんだろう

「…なに」

「ここあを選んで」

「え?」

「るいがここあを選んでくれるなら、写真消してあげる」

なにそれ

「ねえ、ここあにしようよ」

言葉が出ない

「…写真はしばらくばらさないから、明日までに決めてね」

予鈴と一緒に心愛は去っていった。

「なあ、る―」

柔らかい、暖かくて甘い

「んっ、る、い……んはっ」

口を離す。

「のの」

「…なんだよ」

「好き」

「…俺も好き」

抱きつく、すると優しく抱き返してくれる。

「なあ、どうするの」

「…大丈夫」

「え?」

「私、苦いものは嫌いなの」


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