13話【鎖】

「るいさぁあんん、宿題おわんないよおおぉお」

「静かに頑張ってよ菜乃…」

部活のコンクールも終わり三年の先輩方は引退。そして、残り少ない日数になり気づくこととは

「宿題である」

らしい。

いきなり家にきて勝手に私の宿題を写しているのは相変わらずの菜乃、そして同じクラスのである、一ノ瀬百合いちのせ ゆり森山花音もりやまかのんと祐未だ。

「そういや今日ののっぴは?」

菜乃がそんな質問をしてきた。

「あれは多分うちのどっかで映画みてるかゲームしてるか漫画読んでるか、いや、まだ寝てるかな」

「すっかり花宮家さんですね」

口元を抑えて微笑みながら百合が言ってきた、おっとりしてお嬢様っぽい彼女は見た目だけでなく中身とか、とにかくお嬢様っぽい。ちなみに彼女は写させている側だ。

「いつもいちゃいちゃしてるわけじゃないのか……ちっ」

「いちゃいちゃってなんだいちゃいちゃって、全くしてません」

「でもるいよくののちゃんとかれかのっぽいよー?」

祐未がジュースをのみながら言う。

「こんな噂ばっかししてたら星岡くるんじゃね?」

相づちを打つだけだった花音が顔を上げて予想した。

「あーまあ確かに…ここリビングだし、寝てるならご飯食べにくるかもなぁ…そろそろ一時だから寝てるならお腹すいてそろそろ起きてくるころ…」

「おはよ…ねえ、るい、飯。」

そんな噂をしてたらほんとにきた。

本当に寝ていたらしく、パジャマであくびをしながらリビングに入ってきた。所々髪の毛が跳ねている。かわいい。

「おはよう、のの」

「あら、噂をすれば」

「…」

動きが止まってしまった。

「あーののさん?」

菜乃が呼びかける

「お邪魔しました。」

パタンとドアを閉じて出て行ってしまった。

「あれ、どうしたのー?」

「うーん多分寝起きを見られたのがまずかったのかもねぇ」

「私たちにみられたくなかったんじゃね」

「るいさんだけに許してるのですねぇ」

微笑ましいというようにみんながドアを見つめる。

私だけに許してる、か。

「んふふ」

「るいさんどったの」

「ふふ、ないしょ」

思わず顔がにやけてくる。

「どこにいったのかな?」

「多分着替えにいったんだよ、あんまりああいう姿見られるの好きじゃないから。あの寝ぼけ顔から決め顔で帰ってくるんじゃない?」

「ののさん宿題おわてるの?」

「私がきちんと教えてるから」

「さすが天才少女」

「関係ある?」

何気ない会話を交わす

「るい、飯。」

いきなりドアが開いて私服に着替えて髪をセットしてる望々が入ってきた。

「そこにサンドイッチおいてるから勝手に食べて。」

「おはよう、ののっぴ」

菜乃があいさつをする

「おはようございます、ののさん。こんにちわ、かしら?」

微笑みながら百合が会釈する

とりあえずみんな望々とは知り合いである。

「ういっす、てかなんでこんなにいるの」

「宿題写し会」

花音がさらっと答える。目線は宿題に向かったままで。

「あ、そうだわ。教えていただきたいところがあったんだわ。るいさんちょっといいかしら?」

「ん、いーよ」

百合が見せてきたところを教える。

「ありがとう」

「いえいえ」

「るいという答えほど確実な答えはない…!!」

「お前はさっさと写さんかい」

菜乃がいきなりカッコつけて言ってきたので頭を叩く。叩かれた頭をさすりながらまた宿題写しに戻った。

「よっこらせ」

望々がサンドイッチをもって私の隣に座った。

「わあ、美味しそうーののちゃん一個ちょーだい?」

祐未が手を伸ばす、一個だけ望々はサンドイッチを差し出した。

「あ、ゆみ、それ私に半分くれ」

「ん、どーぞー」

望々が一口かじる。その顔はとても幸せそうで言われなくても美味しいと思ってくれてるんだと感じてとにかく嬉しい。というか可愛い。

「おいし?」

望々に尋ねた。

「うん」

ほんと美味しそうに食べるなあ、好き。可愛い。

「なにこれうまっ」

「おいひー」

菜乃が叫ぶ、そこまでだと思うんだけど…

いきなり望々が背中を預けるように寄りかかってきた。

「のの、お行儀悪い」

「ん」

変わらず食べ続ける

まあサンドイッチだしいいか

「カップルですのう」

「そんなんじゃないよ」

「じゃあ夫婦ですか?」

「夫婦でもない…」

相変わらずこの手でいじられる、嫌ではないけどね。

「ねえ、るい」

望々がこっそり耳打ちしてきた。

「なあに」

「ちょっと外行ってきて」

「え、なんで」

「俺もすぐいくから」

なんでだろう、とりあえずリビング出るか

「ちょっと出るね」

席を立ってリビングからでた。

しばらく廊下で待っていたら望々が出てきた。

「どうかしたの?」

「んー?」

ニヤニヤしながら奥へとひっぱられる。

「ねえなっん…」

いきなり引き寄せられてキスをされた。少しだけ望々のほうが大きいからいわゆる顎クイ状態+空いてる方の手で抱きしめられる。

「ふっ」

口を離して笑われた。

「なんでいきなりこんなことするのよ、ばか」

「だってしたかったから」

直球に答えられる

「おはようのキス、ってやつ?」

いたずらっぽく笑ってから私の頭を撫でて戻っていった。

望々が見えなくなるまで見つめる

「あーうーあー」

両手で顔を覆って壁にもたれて座り込む。

「なにこれ、幸せすぎるよ…」

この前はじめてしてからずっとこんな調子で隙あらばキスをしてくる感じになった。

特に夜が一番酷く、夏だと言うのに同じベッドで寝て、寝る前にはキス+痕をつけてくるのだ。

確かに幸せなんだけれども、たまに自分自身も理性消えることがあるから、ほどほどにしてほしい。じゃないと、止まらなくなる。

立ち上がってリビングに戻った。

「ちょいちょい、瑠李さんや」

菜乃に呼ばれて耳打ちされる。

「見えてまっせ」

「なにが?」

「首筋あたりに痕が…!もしやもしや…ののっぴにつけられたんですかぁ?」

「へ…え、え!?」

首を手で隠す。どうして、隠してたはずなのに…

「髪おろしてるからあんまりわからないけど、分かる人はわかりますよぉー?」

ニヤニヤしながらこちらを見てくる

どうしよう、バレた。

「ん?どうした?」

なんでこんなタイミングで望々はくるんだ…

「ん?あ、ののさーん、もしかしてるいにキスマークつけたぁ?」

ずっとニヤニヤしっぱなしで菜乃が望々に尋ねた。

「ん?ああ、そんなこと」

少し望々が笑う

「どうする?」

望々が私の顔に手を添えてきた。

「こんな風にしてたら」

いきなり頬にキスされた。

「!?!?」

「ふおーーう!?な、生頬ちゅーだ…!しかも百合!しかもるいののという美少女二人組…!」

百合とは百合さんではなくGLという名の特殊なもの。

「はっ、冗談だよなぁ、なあるい?」

こちらに望々が尋ねてきた。

「顔真っ赤」

小声でそう言われた

「おおう!?なに囁いた!夜のお誘い!?ん?ん?」

「うるさい、なーいしょ」

望々が菜乃にデコピンをしてた。

これでごまかせれたのだろうか。

いやでも…こいつのことだからこの手でまた妄想広がって色々聞いてくるんだろうなぁ…やだな…


「はあっ…あっ…ん、あふっ」

「るい…んっ…きもち?…はあ」

夜、毎日恒例になってきたこれ。

「…はあ…も、もっとぉ」

「…ははっ」

縛られた瑠李が涙目で訴えてくる。

「えっろ…」

毎晩俺から攻めるけど、行きすぎると瑠李からねだるようになる。

「好…き…あっ…ののっ…」

可愛い

お腹に手を突っ込んでスッとなぞる。

「ひゃあっ」

「やっぱお腹弱いか」

服を捲る。思ったより捲りすぎてちょっとだけ下着が見えた。

ピンクか。いいな。

「ちょ…やだぁ…そこまで捲ったら…恥ずかしい…」

力が入らないのか抵抗すら出来てない。

それよりも、細い

お腹も肌が真っ白で、細くて、くびれがあるのがちょっと色っぽい。

お腹に移動して痕を付けていく。

「ののっ…やだ、そんなとこやぁ…」

体がビクビクしてて瑠李から声が漏れる。

「胸もつけたげる」

「あっ、だ、だめっ…んあっ」

もっと服を捲る。下着が丸出しになった。ピンクのレースか。エロい。いいな。

むちゃくちゃ感じやすい体質なのか、もう喘ぐようになった。

一通り痕を付けて瑠李の顔を見る。

目がとろんっとしてて、唾液と涙でぐしゃぐしゃで息はむちゃくちゃ荒く、時々声も漏れてる。

むちゃくちゃエロいな…

耳を舐める。

「ひゃあ!?」

おお、いい反応…

ちょっとだけ噛んだり、舌でなぞったりいろいろしてみると、さっきよりもむちゃくちゃ喘ぎだした。

「ののっ、ら、らめ…むり、やらぁ…」

「そういう割にはめちゃくちゃ気持ち良さそうだけど?」

「んっ」

瑠李が体を震わせた…おや、これってまさか

イった…ってやつ…?…それとも寸前か、

キスとかだけでイくとか、やば、可愛い。

…もうちょっとやってみよう

「ああっ、やっ、あんっ、だ、だめ!やめてぇ!」

急に拒否しだす瑠李を無視してもっと攻める。

「だめ!だめ!ののっ、やだ!なんか変になる!」

もう力がほとんど入らないし縛られてるから全く抵抗かできてない。

「あっ、やっ、だめ!…やあっ」

お…イった?嘘だろ、これだけで?

体がビクビクして、息がむちゃくちゃ荒くぼーっとしている。

もうほぼヤってんのと一緒だなぁ…

「るい、大丈夫?」

瑠李が頷く

声も出ないらしい。

縛ってたのをほどいてやる

「ごめんな、大丈夫?」

優しく触れるだけのキスをする。それを瑠李は幸せそうにする。

すると、抱きついてきた。

「ぎゅーして」

「はいはい」

お望み通りに抱きしめてやる。

「もっと強くして」

「はいはい」

さらに強くする、だけどそれが彼女を壊してしまいそうでなんか怖い。

「ふふー」

幸せそうに瑠李が笑う。普段の彼女からは想像出来ない甘えっぷりが可愛い。ツンデレか。

「のーの」

「ん?」

瑠李を見るために下を向いたらキスしてきた。

「えへへ」

「やったなー」

やり返す。幸せそうに微笑む瑠李が花みたいで、守ってやりたくなる。

「俺以外にこんなことしちゃだめだからね?」

「うんー」

聞いてんのかなぁ。まあいいか。

しばらくぼーっとしてたら規則正しく腕の中で動いているのがあった。

「あ、寝てる」

疲れたのかぐっすり眠る瑠李にキスをする。

「おやすみ、るい。」


「るい!おきろ!」

うるさいなぁ…まだ眠たいのに…

「るーいー!」

「なに、うるさいなぁ」

あれ?望々じゃないよね、だってこんな起こし方じゃないもん

うっすら目を開けて見る。

隣には私のお腹に腕を回して眠る望々の姿がある。

あれ?

声のするほうに目を移す。

「おはようございます、るいさん。なにしてるのかな?」

「…じゅん?」

「うわぁ!?」

慌てて起き上がる

「なななな、なに!?てか女の子の部屋に入ってこないで!しかも寝てる時に!」

思わず後ずさりかけたが、望々がいたためあまり距離がとれなかった。

「るかに入れてもらったんだよ、相変わらずお前の家の女の子は朝に弱いですね。」

まだ瑠璃子寝てるのね…まあそりゃそうか。うちの家の女は朝にはとことんだめだからね。

「るいなにしてんの…?朝からうるさいなぁ…」

望々がうつ伏せの状態の寝っころがったまま上半身だけ起こす。

「うわ、なに朝っぱらから佐野いんの…」

目を擦りながら望々が嫌みをこぼす、本当にこの二人は仲が悪い。

「ねえーるいーこんないきなり朝っぱらから女子の部屋に上がり込んでくる変態男ほっといてもっかい寝よー」

腰に抱きついてきた。

太ももに顔をうずめる望々の頭を撫でる。

「んーまあとりあえず、じゅんどうしたの?」

望々の頭を撫でながら尋ねる。

「いや、別に様子見に来ただけ、それと母さんがたくさん林檎もらったからるいに渡しに行ってこいって言われたから」

「じゃあなんで私の部屋に入ってくるのよ、しかもねてるのに。」

「うるさいなぁ…何でもいいだろ…」

「ふーん、あ、林檎は?」

「下におきっぱ」

「るか置くとこ、わかんないよねぇ…一緒に降りるわ」

言った瞬間、望々の腕の力が強くなった。

「…のの離して」

「やだ」

「んーもうののー」

頭を撫でても離してくれない

「るい」

腕を引っ張られたのでなにか言いたいということなのだろう、耳を近づける。

「あとで何でも言うこと聞いてくれるならいいよ」

絶対変なこと考えてる…

「…わかった」

そう答えると手を離してくれた

「じゅん行こ…」

「…!…わかった。」

急に顔真っ赤にして何かに反応したみたいだけど、まあいいほっとこう。

ベッドから降りて立ち上がる。

「あ、るい」

腕を引かれたためまた耳を近づける

「見えてるよ、痕。それと下着」

「…!?!?」

開いてるところをしめる。

「はははっ、いってらっしゃい」

ニヤニヤしながら手を振られた。

潤を押して部屋から出る、顔が真っ赤なのは自分でよくわかった。

廊下を歩いていく。

むちゃくちゃ気まずい

「るいさぁ」

「は、はい!」

「なんで星岡と寝てんの」

「え、いや…その、それは…」

「あとさぁ」

潤が振り返る

腕を掴まれる、頬に手を添えられて髪を上げられる。

「この痕、なに」

首から胸まである痕にさすがに気づいたらしい。さすがにこれは言い訳が出来ない、一つならまだしもいろんな所にたくさんあるから。

「えっと…」

一歩下がったら向こうは一歩迫ってきた。

どうしよう。

「星岡のだろ」

壁に追い詰められた。

「どこまでされた?」

逃げようとしても逃げ道が手で塞がれているから逃げられない。

「お前」

どうしよう

「星岡のことが好きなの?」

…バレた?

どうして…?

「違う」

「嘘つき」

「違う」

「じゃあなんでお前」

顔をむりやり上げられる

「そんなに顔が真っ赤なの」

潤と目が合った。

「別に俺は、女同士だからって引いたりしないから。」

…本当なの?

「誰にも言えてないんでしょ、だったら俺にだけ言えよ」

…潤に言う?

「引いたりしないし、誰にも言わない。お前のこと応援してやるから。」

…言って大丈夫?

「だから、な?」

懇願するように潤が言う。その顔はあまりにも悲しそうだった。

…言っちゃだめだ。

…人を信用しちゃいけないことぐらい分かってるだろう。

「そうだよ」

…言っちゃだめ、止まれ。

「私は、私は…」

…傷つきたくないなら言うな…!!

「ののが好き…」

その場に崩れた。

「好きなの」

立ち上がれない。出てきた言葉はあまりにも重すぎて、この気持ちはたったひとりじゃ持つことができなかった。

「…そっか」

潤を見上げる。その顔は今にも泣き出してしまいそうだったけれど、私が昔から見てきた笑顔だった。

「応援してやるから、話もいっぱい俺が聞いてやるから」

座り込んだ私に目線を合わせるようにしゃがみこんで頭に手を置いてきた。

「だから、俺には隠し事をしないでくれ…」

絞り出すような声はなんて言ったかよくわからなかった。だけれど、私を拒否していないことだけはしっかりとわかった。

「林檎、置きにいこ?星岡にこんなところ見られたら嫌でしょ?」

「うん…」

起きあがらされて腕を引っ張られる。昔よりだいぶ大きくなった背、手は男の人になっていってるんだなってよくわかった。

林檎を運んでもらって玄関で見送った。一度も振り返らずに帰る姿は、私にとって唯一頼れる兄のような存在の大きさがあった。

「そっかぁ…るいはやっぱり…」

角を曲がるとこで目が合いそうだったから手を振る

「俺じゃないんだよなぁ」

潤も手を振り返してくれた。

「なんであんなに幸せそうに笑うんだよ」

見えなくなるまで見送る

「昔からずっと隣にいるのは俺なのに…」


「るい遅い」

「ごめん」

「佐野になんかされてないよな?」

「さ、されてないよ!」

「へえ?」

寝っ転がる望々の隣に座ったら押し倒された。

「さて、なに言うこと聞いてもらおっかなー?」

機嫌がいいらしく、今日は一段と意地が悪い。

キスをされる。むちゃくちゃ優しいキスは溶けてしまいそうで、とても幸せで。

腕に腰を回されたから首に腕を回す。

ゆっくりと深くなるキスは、私をどんどん狂わせていく。

彼女の甘い匂いが私を支配して、この幸せが鎖になる。

気づかずに繋がれた鎖は解けない。どんどんきつく絡みついてくる、

この愛に蝕まれていく。

「のの、愛してる」

「俺も、愛してる」

深い深い幸せに飲み込まれていく。



ゆっくりと狂い、壊れていく。


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