3話【サックス】
–五月–
「眠た…やばい遅刻だ…」
入部して土日も部活へ行くようになった。朝ごはんを適当に口の中に突っ込み自転車の鍵を持って階段を降りる。
「いってきます」
外へ出ると雲ひとつもない快晴。自転車をこいで口の中の食べ物を胃に流し込んで行く。信号をギリギリ回避しながら全速力で走る。
「おい、るい!まて!」
「あ、ののおはよ」
「おはよ、今時間は?」
「んーかなりやばいんじゃない?」
「そんなのんびりしとくなよ…」
スピードを上げる、学校が見えてきて、落ち着く。時間はまだ大丈夫だ。校門へ入ると自転車置場に走る。とめたらヘルメットを脱ぎ鍵を抜いて走る。靴を脱ぎ上靴に履き替え階段を飛ばして駆け上がる。音楽室のドアを開けて、入る。時間を見る、あと五分あった。
「あと五分あるじゃん…あんなにしなくても良かったのに」
「最初のじゃ間に合わなかっただろうが」
「るいーののーおはよー」
「おっはー」
「おはよ」
「おはよう」
挨拶を交わす。ちょっとした新しい平和の一部だ。
「今日木管きまるねー」
「サックスはるいだよねーそもそもわたしとあんなはクラ希望だし」
「ねー、ののはトランペットでしょ?」
「もう決まった」
「じゃあはよ練習行ってこいや」
「はいはいそこの1年たちよ、レッスン始まってるからもう行くよー」
現れたのはサックスの3年一ノ
「失礼します、1年生をつれてきました」
お辞儀しながら入る、そこには3年の先輩とレッスンにきた先生がいた。席につくと、
「とりあえず木管楽器吹いてみよっか」
順番通りに一人一人吹いて行く。全員が全て吹き終わると先生が
「花宮さんサックスはじめてじゃないよね?かなりやってるでしょ。」
やはり聞かれた。自分がサックスを吹いたときの先生の反応が違った。
「えっと…5年間ぐらいしてます、一応ソプラノからバスまでなんでも大丈夫です。」
「やっぱりね。花宮さん希望は?」
「サックスやりたいと思ってます」
「じゃあサックス行こう、一ノ瀬さん先生にはわたしから説得しておくからサックスつれてってあげて」
「了解です、るいちゃん行こっか」
教室を出て楽器倉庫へ行くとそこにはサックスの先輩方がいた
「るいちゃんになったよー」
「おおおお」
「とりあえず自己紹介しとこうか、3年バリトンサックス担当一ノ
「2年テナーサックス、
「2年アルトサックス、
「同じく2年アルトサックス兼ソプラノサックス、
「あ、この2人名前同じだから苗字で呼んであげてね」
名前同じってかなりややこしい、しかも赤城先輩の人見知り感が半端ない。丘山先輩の方はかなり気さくだ。衣玖先輩の方はお嬢様っぽいオーラがある。杏果先輩は男らしい感じもあるが絡みやすそうなタイプ、かなり全員ばらばらな性格だ
「るいちゃん、一応担当はバリサクでお願い、今年で私引退だからいなくなるのよね。これ楽譜、基礎はほとんど楽譜ないの多いから、あと6月から1年生交えて合奏始まるんだけどいけそうな子はもう先に参加しだすの、だから大丈夫ならもう早くから参加しちゃって」
渡された楽譜を見てみる、あまり難しくないものが多いためほぼ初見でいけそうだ
「あーこれくらいならもう吹けます、基礎のはほとんどは覚えたはずなので間違ってたらまた言ってください。」
「さすが。まあとりあえずしばらくは個人練してて、パート練とかはもう参加しちゃおうか」
「おけです」
楽器を持って楽器庫を出る。サックスが使ってる場所に来て楽器を出しはじめる
「るい、サックスになったのか?」
声の方を向くとトランペットを持ったののがいた
「おん、サックスやとさ」
「ふーん、よかったじゃん」
と言いながら笑顔を向けてくる。笑ったら見える八重歯が特徴的だ。
「…」
「なんだよ」
「いや、普通に笑ってたら可愛いのになって思って」
「へ、変なこといきなりいうなよ!」
と、顔を赤くして走り去っていった。正直な感想を言っただけなのに…
「なんだ、結構可愛いじゃん」
「るいちゃーんパート練するからおいでー」
「はーい」
呼ばれた方向に向かって行く、ちょっとしたこの高揚感の正体は知るよしもないが1つわかったことがある。
星岡望々は案外可愛い。
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