月夜に香るはずのない雨

秋を分ける日。

そう今日から秋になる。


それなのに外は朝から雨が降っていた。

涼しいはずの風は、肌にまとわりつく湿気を運んでくる。


中秋の名月も雲に覆われ闇に包まれていた。

待ちに待った秋になる今日さえも、月夜は厚い雲に覆われている。


せっかくの秋を邪魔する雨。

秋の夜長を楽しむ気を見事に削いでくる。


明日も早いのだからと自分に言い聞かせるが、あきらめきれずに窓の外を見上げる。


見えるはずもない月に思いをはせながら、今日もかなしく眠りにつく。


明日はきれいな月夜に出会えることを祈りながら、疲れたからだをベッドに委ねる。

せつない秋を感じる暇もないほど降り続く雨。


月夜に香るはずのない雨を聞きながら、今日も明日の夢を見よう。

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