Interlude ~池崎馨の夢 Ⅳ~

 それは、いつものように編み物をする僕の自室にココがアフタヌーンティーを運んできた時に突然起こった。


「カヲル王子!

 貴殿を傷害罪で逮捕いたします!」


 重たいチークの扉がバン!と勢いよく開けられ、王宮警察のシェパードたち数人が押し入ってきた。

 僕もココも何のことかわからずに呆然とする。


「何を言っている? 僕が誰かを故意に怪我させたというのか?」

「とぼけても無駄です。貴方は昨日庭園を散歩された際に、庭師のイングリッシュコッカースパニエルに突然噛みつき全治3週間の怪我を負わせた。王子といえども不当な暴力は司法によって裁かれるのです」


「僕はそんなことしていない!」

「そうです! 優しいカヲル王子がそんなことするわけありません!」

 ココも必死で僕を擁護してくれるが、警察官は問答無用で僕の白く細い腕を掴むと無理やり椅子から立ち上がらせた。


「とにかく、事情聴取を済ませ起訴不起訴の判断が下りるまでは王宮地下の独房にお入りいただきます」

「そんな! 無実だ!!」

「カヲル王子っ!!」


 僕に縋ろうとしたココを、シェパードが強引に引き剥がす。

 両脇を抱えられ、引きずられるようにして僕は自室から連れ出された。


「カヲル王子ぃーーーッ!!!」


 絶叫するココの声が、天井の高い王宮の廊下に反響していた。


 ────


 ──…


 ……

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