土屋主悦
土屋主悦という人物は不幸な人物といってもよい。いろいろな不行跡があり二十歳すぎても父ですら将軍お目見えができず父は改易になってしまった。
それでも先祖の偉業によって3千石を与えられ旗本となった。
主悦自身も御徒頭を辞してから無役で宝井其角に師事し風流旗本として生きた。
皮肉にも「赤穂事件」に関する人物たちは改易や減俸などの被害者が多い。
「殿様最近おかげんがよろしくないとお伺いいたしましたのでこの其角がなにか面白いうわさでもお話したく参上いたしました」
「なにか面白い話でもあるのか?」主悦の頭の中は正直の事でいっぱいだった。
「はい、私の連歌の友に子葉と申すものがございます」
「ほう」
「本人は隠して居るつもりでしょうがこの者旧浅野家家臣と思われまする」
主悦の目が変わった
「何故わかる?」
「私を通して四方庵宗編どのを紹介してほしいと願っております」
「宗編宗匠をな」
「宗編は吉良さまとは茶の友。おおよそ吉良邸での茶会がいつになるか聞くのでしょう」
「ううむ」
「で、そちはどうするつもりじゃ?」
「当然紹介いたします」
「なんと、、」
「人の一生など所詮ひまつぶし。それなれば多少面白いほうがよろしいかと思います」
「そうか。」
主悦は煙草盆をとり一服やった。
「其角どの。それならばわしも一枚かませていただきたい。」
「え?」
「そのひまつぶしをしてみたくなっただけだわい」
「そうだ、その子葉とかいうものにこれをお渡しくだされ」
といって一枚の紙を其角に渡した、
「これは?」
「みればわかる」
「ハッ」文面を見て其角は青ざめた。吉良家の間取りから浪人たちの人数隠し扉の場所なども書かれている。
「せめてものはなむけになればいいと思うのだがな」
「わかりもうした。すべてはこの其角にお任せください。」
「吉良が米沢に立つ前にな」
こうして其角は土屋邸を後にした。
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