ゲームに誘ったら思いのほかどハマりした後輩系彼女
「先輩、待ったはナシですよ」
えりのキャラクターのコンボが止まらない。遂には1P側のHPバーを空にされてしまった。
「やりました。あと一勝で先輩が何でも私の言う事聞いてくれるんですよね」
確かに言ったが、十連勝出来たらなんて無理難題を平然、涼しい顔でクリアされようだなんて一体誰が想像できよう。
「えぇ…キャラクター変えろって先輩。始める前はどれでも使えって言ったじゃないですか。環境メタ使っても文句言わないって」
えりがこの提案には反対のようだった。だが、夏休みを目前にした今日この頃。財布の中身を全部持っていかれると隣町への遠征代もかなり怪しいのだ。
「男に二言は無いのでは? まぁ、いいですけど」
「しかし」とえりは言葉を繋げる。
「私のキャラを変更させる代わりに私のあ、頭を撫でてください………」
すぐに撫でた。えりの髪は柔らかくてスベスベしていて、少しいい匂いがした。
「すぐに撫でましたね先輩…。先輩には歳上のプライドとかか、彼氏の矜持というものが足りていないと思います」
そんなもので勝負は出来ないのだ、と伝えるとえりは溜め息を吐いて、そして――――
「知ってます」
と微笑んだ。その表情はずっと大人びて見えた。ちょっとドキっとしてしまった…。
「よし! それじゃラスト、泣いても笑っても最後の大勝負ですよ! いいですね先輩?」
泣きのキャラクターセレクトに入る。
沢山いるキャラクターの中でえりはさっきまでえりがボコしていたキャラクターを選んだ。
「コイツが一番思い入れがありますから。さぁ、いざ勝負!」
強い。コチラのコンボは的確にカットして、それでいてえりは好機を見逃さずにコンボを当ててくる。
防戦一方で終われるか、と無理に必殺技をねじ込んだところを、えりは冷静にコンボパーツを当て逆に必殺技を撃ち込んできた。
「ケェ〜イ、オォウ!」とゴングが鳴り響く。画面ではえりのキャラが勝ち誇ったようにポーズを決め、隣ではえりがピースを向けていた。
「それじゃあ私のお願い聞いてくださいね」
にこやかに笑ったその顔が、今は怖い…。何を言われるかビクビクしていると――――
「先輩のこと…な、名前で呼んでも、いいですか………?」
それだけのことに、唖然としてしまう。
「い、いや! ずっと先輩って呼んでたから恥ずかしいんですよっ! こうでもして、認めてもらわないと、気待ちの整理が………」
徐ろに頷く。すると、えりの顔に今日一番の笑顔が咲いた。
「それじゃあ、今度はこっちので遊びましょうよ! 私、格ゲーは勉強しましたけど、こういうのはやったことなくて!」
えりが選んだのはFPS、ガンシューティングゲームだ。
ズレてるな、と思いつつハードのディスク挿入口を開けてやる。
「今度はカッコいいところ、見せてくださいね?」
ディスクを入れると、えりはコントローラーを握った。
やがて画面に音楽とオープニングムービーが流れ始める。
そして、ゲームが始まるのだ…。
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