ゲームに誘われた猫系彼女

「ゲーセン? いいんじゃない。もう私の欲しい物は買ったし。付き合って貰った分は付き合うよ」

 デートも最後に差し掛かってきた。でも、高校生のお財布では外で夕食を食べるほどのお金は残っていない。

 いおりはゲームセンターの入り口辺りにある太鼓のリズムゲームの前で足を止めた。


「へ~…こんなのあるんだね。いや、私ってあんまゲーセンとか行かないからさ。これやるの。私はいいよ。やり方分かんないしさ。アンタがやってるの、隣で見てるよ」

 いおりはあまり乗り気じゃないみたいだったけど、少し強引にバチを握らせてみる。そして二人プレイの料金を素早く投入してしまう。


「ちょっ! もう…ほんとにやり方分かんないのにさ………。お金入れちゃったらやるしかないじゃんか」

 いおりは「仕方ないなぁ」と言いつつバチを握り直した。

 リズムゲームは大抵プレイヤーが曲を選べる。フチを叩いて沢山ある曲の中からこれ、という曲の所で太鼓を叩くとゲームスタートだ。


「へぇ…こんなに曲入ってるんだね。え、私が選んでいいの? そっか。それじゃあね………」

 お金がもったいなくてゲームを始めたわりに、いおりはどれを遊ぶか本気で悩みはじめる。

 表情が分かりづらいといおり自身が言ってはいるが、今のいおりの顔は楽しそうに見える。


「あ、この曲ってさ。今話題のバンドの曲だよね。アニメの曲とかゲームのばっかりだと思ってたけど、ロックとかも結構あるし」

 贔屓にしてるロックバンドの曲を見つけて、今度は表情も緩むいおり。


「これ、やろうよ。私、この曲結構好きなんだよね」

 いおりは太鼓を叩いた。


「難易度とかも決められるんだ。う~ん…私は簡単でいいかな。アンタは……って、鬼って一番難しいんじゃないの? ………もしかして、私にこのゲームの腕前を見せつけようとか思ってたんじゃないの?」

 持っていたバチを危うく落としそうになった。慌てて掴み直すと、いおりがじっとこちらを見ていた。


「図星なんだ…。はぁ………アンタってそういうとこあるよね。ま、いいよ。そこまでして見せたかったんだから、きっと超上手いんだろうから。ほら、曲が始まった」

 いおりが顔を画面に戻した。曲のイントロが流れ始め、そしてゲームが始まる…。

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