00-05

「ただいまー」

「おかえりなさい。買ってきてくれた?」

「……うん」


玄関から台所に向けて声をかけると、ユウキの声が返ってきた。

食事のにおいがまだしないから、下ごしらえをしているのだろう。言われた買い物をそのまま手渡す。

買ってきたものを確認する奴の節くれだった指先を眺めながら、さっき会った出来事を思い出す。

時間としては帰りに志久間さんに会って少し長めの会話をしたくらいなのだけど、体験した内容がハードだ。私の頭も胃もたれしそうな程の。

…頭って胃もたれしないけどね。頭が重いっていう表現が妥当だろうか。


「ねぇ、ユウキ」

「どした?」

「ユウキは、その、魔法とかって信じる?」

「……Mezさんのとこに行ってきたのか。それを言われたのだって俺たちが小学生くらいの頃だったし。昔から不思議な人たちとは思うけど、魔法については冗談だろ?」

「だよね」


予想していた返事に私は安心したような、すこし残念なような気分になる。

ここで何を期待していたのかと聞かれるとうまく答えられないけど。


「そんなの信じる歳でもなし、どうした?」

「うーん。なんとなく、かな。ごはん手伝うよ」


ユウキの質問を遮りながら、台所の隅にかけてあったエプロンを手に取った。

それからとってつけたように笑うと、とても胡散臭いものを見るような目で見られる。


「……そりゃどうも」

「そんな変な顔で見ないでよ」


とりあえずここで宣言しよう。

無理無理。ユウキさんには言えませんよ、これは。信じてもらえないって。


心の中で途方に暮れながら、私は夕飯づくりに取り掛かった。

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