第2話 ここは何処。異次元の世界に
眠りから覚めて未だ呆然とした中で気がつくと、
目についたのは薄明の中、やや前方に白い球体が、点滅する光を放ちながら回転している。
近くには、異国人らしき普通の男女数人がいるが、我々の地表上の光景とは、
感覚的には全く違うところに来ているのがわかった。
ここは一体どこなんだろう。
高野はその中で、近くにいる何故か好感の持てる、金髪の青年に日本語で話しかけてみた。
「僕は日本人の高野です。年齢は37歳で職業は電波関連の技師です、姫路市から来ました。失礼ですが、貴方はどちらの国の方ですか?」
彼は答える。
僕は「アメリカ人のジョンです。ある種の電波の実験中に、ホノルルの海浜から来ました。年齢は同じく37歳。職業も同様の電波関連の技師です。以後どうぞよろしく、と握手を求め手を差し出した。年齢、職業までも似通った2人は長年の知己のように、一気に意気投合して力強く握手を交わした。
高野は、もう1人東洋人らしき人にも、 同じ挨拶と質問をしてみた
彼は答える。
「僕は翔です。中国人で上海より来ました」
不思議なことに、返ってくる言葉は流暢な日本語で聞こえるのに、
相手の唇の動きが、日本語の発音の動きと全く違う。
これは如何したことだろう。このことは、我々の人間世界において、言葉もわからない、異国人同士が、通訳者も交えずに、会話が出来ることなど絶対にあり得ないことである。
この世界では、高野の話す日本語も、英語で話すジョン君も、中国語で話す翔さんも、言葉を発する空気振動によって、音波が耳の鼓膜に、または、耳骨に達すると、細胞の1個ずつが、微細な電流に変化しつつ移動して、脳細胞を刺激し、脳細胞内の音声認識コンピューターで自動的に言語変換、翻訳されて、聞こえているのであろうか。
または、霊的な交信によって、生ずるものなのだろうか。
太古の昔には、人類もその他の動物、鳥類、爬虫類、虫、魚、草木花さえも全てにわたって、話すことが出来たらしい。
とすれば、生きとし生ける物全てに、通ずる大変な処に今来ているんだ。
高野は、ここに連れてきた案内人に、この言語自動翻訳について尋ねてみたくても、姿が見えない、また近くにいたとおもわれる、中国人の翔さんも、閃光を放ちながら回転していた白い球体も、いつの間にか消えて何処にも見当たらない。
一体どこに消えたのだろう。
高野はこの異様な世界をジョンがどのように感じているのか問いかけてみた。
「君はこの異常なところを、どのように思っているのかね。自分たちの住んでいた世界と総てがあまりにも違いすぎる。先ずは、お互いの会話が通訳者なしで、言語変換されて聞き取れること、僕は眠っている間に誘われて日本の市川岸より、君はホノルルの海浜から眠っている間に、翔さんも上海よりここに来たと言っていた。と言うことは、この場所は川と海につながる地底、若しくは海底にある異次元の世界かもしれない。しかしながら生ある人間という個体が、どうして海底の下にあるこの世界に入り込むことが出来たのか。空気も光もない地の底に来て、薄暗がりの中に君の姿がはっきりと見える、僕も君も本体と違って、生きたまま幽体離脱して、此処にきているとしか考えられないので、君の意見を聞きたい」
ジョンは答える。
「高野君。僕の考えていることも全く同じなんだよ。ここはひとつ、此処に来た入り口を見つけることが先決と思うよ。一緒に探検して見ないかね? 」
「そうだね僕もそう思う。どんな隙間からこの世界に入り込んできたのかその入り口を見つけることが肝心だ。では確かめに行ってみよう」
と高野も同意して、長い道のりになるのも知らず、安易な気持ちで探検の旅に出る事となった。
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