真っ赤な球体が追いかけてきて。右の川面に飛び込んだ

@hakuanosiro

第1話  中秋の肌寒い夜9時頃

 電波技師の高野と部下の進藤の2人が2台のオートバイに分乗して、

雲のかかった月明の中、姫路市の播但線沿いの国道を北に向かって走っていた。

左は山、右は市川である。

 その時。

突然、後方より追い掛けてきた直径40センチ程にも見える、

朝焼け太陽の様に丸く輝く光り物が、

二人の目前で右側の市川の水面に音もなく、スポット飛び込んで消えた。

 この不思議な現象見た2人は驚嘆して、エンジンを止めて。

異口同音に。

「あれ何や? 」 

「高野さん、あんなもん見たの初めてや」

 「僕もあんな奇妙なもん見たことない。初めて見たよ」

「あれが、ユーホー ? やろか」と進藤が言う。、

「そうだな。でもそんな筈ないだろう、でもそれにしても不思議だな」

と高野は答える。未経験の異様な現象を見た2人は心を、うばわれ、光り物の消えた水面を、いぶかしげに、まだ眺めていたが、

 高野は気を取り直し

「進藤君何か訳の分からない大変なものを見たが、時間も遅くなった、さあ帰ろうか」とエンジンをかけた。

「そうですね。では帰ることにしましょう」と進藤も後に心を残しながらキックを踏んだ。

不審な思いを抱きながら、二人はその場を離れて帰路に向かって走っていった。

 自宅に帰っても高野は帰りに見た異常な現象が、脳裏を離れず、眠れぬままに夜を過ごし、

 翌日朝になって、いつも通い慣れた道なので、昨夜の不思議な現象を見たあの場所に再度様子を見に行ってみた。

川面も、見えている川底も、何ら変わらぬ普通の川であった。

 それから数日過ぎて睡魔に襲われ、眠くて、眠くて、たまらなく、眠っていると

見知らぬ客がやって来て、 

「高野さん、選んだ貴方に見せたいところがあります。案内しますからついてきてください」と言う。

 朦朧とした夢心地の中で、ただ言われる侭に附いて行くと、彼の不思議な現象の起きた市川の、あの場所であった。

 案内人が言う。

「今から、少しの間、身体に異常を感じると思いますが、心配いりません」

と言われて、間もなく何か締め付けられたような感じがして、亦眠り込んでしまった。



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