【07】北部の闇
「そういえば、最近追いかけられてないね」
休み時間。トワが不意にそう言った。
「あーそういえばそうだね」とサクも便乗してトワと同じ方を見る。
何のことか心当たりがあるらしいヨウは「そうなんだよ」と机を叩いた。
机の上に置いてあったヒトオミのペンが跳ねる。
「ようやく俺の真面目さに気づいたのかって思ってる!」と嬉々とした表情を見せるヨウに、「何言ってんの」とトワがばっさり切りかかる。
「ヨウ君なんか相手にしてる場合じゃないんやろ、今」
「……そういう言い方されるとなんか悲しい」
「えぇ?ヨウ君追いかけられんの好きなの?変な趣味だね」
「だぁ!サク、テメェは黙っとけ!」
ヨウはサクを引っぱたく。が、サクはそれを軽く躱した。
「まぁ、学園警察だし、事件の方が優先なんだろうね」
「うわっ」
背後からの声にヨウの肩が跳ねる。
黒にも見える深い緑色の髪を持つその声の主は口に手を当てて、ケタケタと笑った。
背の高いヨウの側に立つとただでさえ小柄なその声の主の体格が、もっと小柄に見える。
「モノ!てめ、脅かすなよ!めっちゃビビったじゃねぇか!」
「ヨウは驚かしがいがあって愉快愉快」
「俺は愉快じゃねーよ!心臓出るかと思ったわ!」
「え、ほんと?俺心臓見たことないから興味あるな」
「相変わらずお前は奇抜だな」
「えへへ、そう?」
「褒めてねぇよ」
モノ――そう呼ばれた少年の頭にヨウは軽くチョップを食らわせて、ヒトオミ達の方をぎろりと見た。
「お前らこいつがいるの知ってたな?」
その質問に、2人はいたずらが成功した子供のように笑って見せた。
「おう、知ってたで」
「気づかない方がすごいよね」
2人を当てにしたのが間違ったと思ったのか、ヨウは2人から視線を外し、ヒトオミの方を最後にじとりと見た。
「ヒトオミ君は唯一の良心だと俺信じてたのにさぁ」
「ごめんごめん。モノ君が『しー』ってやってたから。それより、何か用があったんでしょ?」
「あ、そうだ。お前なんでここにいんだよ」
んー?と思わせぶりな態度をとり、モノは少しずつ話を始める。
「テツに呼んで来いって言われたの」
「俺を?」
「そう、ヨウを」
「なんで。あいつが来ればいいじゃん」
「あのね、シズが倒れたの」
直後、一瞬だけヨウの動きが止まる。
シズ。その人物も確かモノとテツと同じように、ヨウと同じ出身だったはず。そう紹介された記憶がある。
「あのアホが?どうせ階段でこけたんだろ、間抜けだし」
「ううん、それがね、」
モノの顔から貼り付けているかのように絶えなかった笑みが消える。
「殴る蹴る等の暴行を加えられたらしいよ」
女と間違われることもある声の高さからの急降下。にこやかに笑っていたさきほどまでを別人と思わせるほどの豹変。目は笑っていないのに、口元だけ笑う。
トワとサクの背にぞくりと不気味さが走った。
「……意識は」
ヨウの口がいつもの大口ではなく、最低限だけ開かれる。その口から普段では考えられないほど冷めた声が出る。
対して、モノの声は元に戻った。またにこやかな表情でしゃべり出す。
「今はない」
「何分経った?」
「30分ぐらいだよ、平気」
尋問するかのように鋭く言葉を突きつけるヨウ。それに答えるモノは明るく陽気に振る舞う。
「誰にやられた?」
「多分、一発目に背後から首トンで落とされてる。顔は見てないだろうね」
「ボコられて、誰に見つけられた?」
「テツだよ」
「あぁ、やっぱり」
「今もシズに付き添ってる」
「……誰にやられたとか、検討付いてねぇよな?」
「ここじゃ誰にやられてもおかしくないからねー」
「……、」
「飛ぶでしょ?座標はテツのとこにおいてある。俺が来たのはそのためだし」
「もちろん、頼んだ」
「ほいさ」
モノがヨウの肩に触れると、彼の姿は虚空に消えた。
魔術をむやみやたらと使うのは風紀委員に目を付けられる原因だが、今転移魔法を使わなければ廊下を爆走したヨウは間違いなく風紀委員に捕まるだろう。
産まれたころからの付き合いと言っていたし、そういうことをあの4人はわかり合ってるのかもしれない。
「談笑中だったみたいなのに、ごめんね。ヨウ、借りるよ」
にこりと笑ったモノがこちらを見てそう言った。
胡散臭い笑みだと思ってしまうのは、一度、彼が殺意にも近い怒気をみせたからかもしれない。
顔は笑っているけど、多分仲間を怪我させられてブチ切れてるんだろう。当たり前だけど。
「よう分からんけど俺らのこと気にせずはよいったれ。目ェ覚めるまで側にいたらええよ。せんせには伝えとくし」
モノは「ありがとー」と小さく頭を下げて、ヨウと同じく虚空に消えた。
「ヨウ君たちあの4人ってそんな仲いいの?」とサクが怪訝そうに言う。
「お前高等部からだしな。知らんくてもおかしくないか」とトワ。
「中等部1年の頃、あの4人おんなじクラスでさ。毎日のようにいたずらやってせんせに叱られてたんやで」
「中等部……ってことは、アレ?『北の国』?」
「あそこ4人はらしいで。俺は違うけど」
「ヒトオミ君も『北』?」
話を振られて、ヒトオミは首を横に振る。
「ヒトオミ君、どこ出身?」とサクに聞かれて、少しどもる。
「この【国】だよ」
「あー、ならここの中等部でもおかしくないか。トワ君も?」
「そ。外れの方だけどね」
◇
ヨウが教室から飛んでから、少ししてモノが来た。
飛ばされた場所は普通科の保健室だった。
「お疲れ、呼んできてくれてサンキュ」
ベットの傍らの椅子に座っていたテツは、モノの姿を確認するなりそう言った。モノは適当に言葉を流し、ベットの側に寄る。
保健室に置かれている複数のベットの中、使用中なのは1つだけだった。
ベットには先ほど話しに上がっていたシズが、至る所に包帯を巻かれた状態で眠っている。その包帯には少し血がにじんでいた。
思っていた以上の有様に、どす黒い感情がわく。
誰が。どうして。なんのために。
こいつである必要があったのか。
指先が冷たく感じる。
顔から表情が抜け落ちてく。
同じ目に遭わせてやる。そう言う考えが脳を占めていく。
「どう?」
「まぁ死にゃしねぇよ。ひでぇけどさ」
そんな中、幼なじみ2人の声がヨウの中に入ってくる。
起こさないようになのか控えめな声に、自分と似たような感情は含まれていない。
そうだ。自分なんかより、殴られた本人の方が腹立たしいに決まってる。
落ち着け。落ち着け。
殺さなかったということは、誘拐しなかったということは、目的は【俺達】じゃない。
深呼吸をする。
大きく息を吐き出し、その流れで自分の中の黒いものを追い払う。
口角を持ち上げて、気分と口調を元に戻した。
「この包帯、誰が巻いた?お前か?」とヨウは気になっていたことをテツに訪ねる。
「俺がこんな綺麗に巻けると思ってんのか?」と逆に返され、ヨウは迷わずに首を横に振った。
「こいつ」と軽く睨まれ、軽くグーパンを食らったがいつものことだ。
「保健委員長だよ」
テツがそう言って、顎でそちらの方向を指す。
言われてそちらを見ると、保健室内のソファーに1人寝転がっている人物がいた。『黄』の髪をして、顔を覆うように本を置いて寝ているようだ。
顔の確認は出来ずとも、最近委員会で見たあの顔が本の下にはあるのだろう。ヨウは最近よく聞く人物の顔を思い出す。
「治癒とかかけたのか?」
モノとテツが首を横に振る。
「なんで」と尋ねる前に、「その必要は無いと思うよ」と別の声。
保健委員長は寝転がっていた状態から半身を起こし、ぐぐっと伸びをする。顔を覆っていた本を自分の横に置き、首を回した。
「なんでそんな無責任なこと言えんだよ」
ヨウのその問いに、保健委員長は切れ長の目をこちらに向けた。
赤い目と黄色の目が交差するが、黄色が先に鼻で笑いながら目を離した。
「無責任、ね。俺、けっこー気短だからカチンとは来たけど、まぁ君だから今回は許しとくよ。連れが世話になってるみたいだし、まぁ仲間がそんな目に遭わされたら穏やかでもいられないだろうしね」
許す。口ではそう言っているが、切れ長の目は鋭さを増し、冷ややかな口調になったあたりをみると、多分頭にきたのだろう。
「答えになってねぇだろ。治す最善の策使わない理由を聞いてんだよ」
思わず拳を握る。
「だから必要ないって言ってるでしょ。その彼のことは君らの方が詳しいだろうけど、怪我に関しては俺の方が詳しいからね?」
飄々とした、人を馬鹿にするような態度が無性に癪に障る。
けが人のことなんか気にもとめてないんだろう。心配すらしてないんだろう。他人だからって適当すぎやしないか。
「ヨウ、やめとけ」とテツの手が目の前に入った。
「ってか、怪我人の側にいんだからおとなしくしときなよ。魔力が荒立って障るよ?」
保健委員長に言われ、ヨウは眠っている友人の顔を見る。
魔術師の魔力は他の魔術師に感知されることもあるように、少しだけ影響を与えることがある。常識ともいえる知識だ。
だから自分たちは一部の魔力を共有しているということは知らないのだろう。すべてがダイレクトに通ずるわけではないが、他の魔術師よりも左右される。
ヨウはまた大きく深呼吸をして、自分を落ち着かせた。
「そんなに疲労のたまる治癒使いたいならどうぞご勝手にだけどさ、殴る蹴るだけじゃなくて何かをかけられてるとか、そういう発想はないわけ?」
「……何か?」
「視えなくても知ってるでしょ、【ゴースト】とかっていう厄介者の話はさ」
「……、」
目に見えないけれど存在している人外の生物は、魔術や魔力を餌に成長する。
そして、そいつらを従わせる魔術が存在する。
どのように成長するかは分からない。その生物単体で成長することもあれば、憑いた魔術師を核に成長することもある。そうすれば人外の生物となってしまう。
人でなくなる。
「怪我に関しては詳しいけど、生憎そう言う話には疎くてね-。そこまでは判断出来ないんだよ。まぁ、それでもかけたいって言うならどうぞ。止めないよ、別に。俺お人好しじゃないし」
ヨウは近くにあった簡易の組み立て式の椅子をベットの傍らに置き、それに座る。
包帯を巻いて手当をしてくれた相手に恩を返すどころか喧嘩売るのも間違ってると思うし、それに相手もなんだかんだ言って最初にヨウが舐めた口を利いたのをまだ根に持っているような子供っぽいところがあるようだし。
それになにより、ただの生徒が『自分たち』のことを知ったところで何かする話もないだろうし、知ってるはずがない。
鬱憤を他人にぶつけるのは筋違いだ。
キレてるのは自分で分かっていたけれど、それ以上に警戒が度を過ぎていた。
今更『自分たち』に用のある人間がいるはずない。いたとしてもここまでこれまい。
そのために、この学園に入ったんだ。
座って、気を落ち着かせる。
何よりもシズを気にかけているテツや冷静に今の状況を判断しているモノを見習わないと。
「……シズ?」
問いかけるような柔らかい声。
目を閉じて、頭を冷やしていると、そんなテツの声が聞こえた。
「……早いね」とモノが呟く。
ベットの方を見ると、眠っていたシズの手が、指が動いていた。
確認すると、目が開いている。
そのままゆっくりと起き上がって、うーんと伸びをする。
昼寝から目覚めたような普段と変わりの無い動きには、怪我の有無を疑うほどのなめらかさがあった。
それに、さっきモノが言っていたように、起きるのが早いような気もする。
さっき30分ほど前の事だと話を聞いた。こんなに早く目が覚めるのか。治癒魔法もかけていないのに。
もしかしてすでになにかしていたのではないのか。
ヨウは保健委員長の方を見る。
「ね?言ったっしょ。必要ないって」
目が合うと、彼はそう言った。
彼は大あくびをして、また伸びをする。そして傍らの本を手にすると立ち上がった。
「俺、次の授業でるから戻るけど、まぁ君たちは自由にして。ここの鍵はしめなくていいから。あぁ、もちろんサボってますとかチクんないから安心して」
部屋の出入り口に向かう前途中にあるベットの側に寄り、保健委員長は4人の顔を順番に見ながらそう言った。
最後にシズの方をみて、満足げにうなずく。
「痛みは?」
「……特には」とシズは自分の至る所に巻かれた包帯の位置を確認してから答えた。
「だろうね。多分包帯がうざったいだろうけど、今週いっぱいはつけときな。……いや、3日ぐらいでいいか。とりあえず、今日は絶対はずしちゃダメ」
「……治すために、ですか?」と怪訝そうに訪ねると、保健委員長は首を横に振る。
「誰が君をそういう風にしたのかは検討つかないけどさ、君を痛めつけることが目的だったとは思うんだ。で、バレないように細心の注意を払って、ちょっとめんどいことまでしてボコった相手が1日足らずで『はいふっかーつ』とかしてみ?向こうさんからしたら『ハァ?』って思うでしょ」
「……なるほど?」
「ま、もっかい殴られたーいっていうマゾい人なら、問題ないだろうけど」
最後にそんな言葉を残して、『黄色』の彼は彼の根城でもある保健室を後にした。
彼は確か1つ年上だったはず。
気にくわないところもあったが出て行く後ろ姿に、頼もしさを覚えたのは確かだった。
黄色の髪を持つその少年は、保健室を出て少し歩いてから、その部屋のほうを振り返った。
「ま、いつもお世話になってるみたいだし、今回はおまけ……ってことでノーカンかな」
ぽつりと廊下でそんなことを呟くが、その言葉を拾う者はいなかった。
◇
目を覚ましたシズは、いつものように自分の周りにいてくれる幼なじみ達の優しさに素直に感動していた。……最初だけ。
「本当に大丈夫なのか?」とテツが自分の方を心配そうにのぞき込む。相変わらずその無駄に上手い演技はどこで身につけてきたんだか、疑問でしかない。
シズはそんなテツに言う。
「大丈夫じゃなかったら患部握られた時点で発狂してるよ?俺」
なんだつまんねぇ、とテツは掴んでいたシズの包帯だらけの腕を雑に放す。
シズは顔1つ歪まず、それどころか怪訝そうな目で自分の腕を見る。
「ほんとに痛くないの?」と尋ねるモノに、「怪我なんかしてなかったみたい」と答えた。
長年の付き合いなので、平坦なその物言いでもちゃんと心配してくれているのだと分かる。「大丈夫だよ」と改めて言うと、モノの表情が柔らかくなった。
「それどころか、昨日の体育の筋肉痛すら治ってる感がある」
「体育ぐらいで筋肉痛になるとか、お前たるんでんな」
ヨウは腰回りをくすぐると、シズは逃れようと体をくねらせる。少ししてから、手を離した。
シズは手をグーパーさせたり、軽く足を動かしたりする。
「凄い。痛くない」
「あーそうかよ」
回復具合に驚くシズに、思わず頭部にチョップを食らわせた。
心配して損した。心配返せ。
「……それで、話を戻すんだけどさ」とモノが切り出す。不真面目だけれど、無表情。
普段はこの表情だと怒ってるように勘違いされるらしく、なるべく笑うように努めているらしいが、4人でいるときはこんなもんだ。
「覚えてないだろうけど、シズ、誰にやられたの」
「覚えてない……」
ふぅ……とモノがため息をつく。
呆れられたと思ったのか、シズは「ごめん」と謝った。
「違うよ。面倒な相手だなと思って」
「めんどう?」
「背後から襲うクズい卑怯者だからさ、そう簡単に見つからないと思って」
「やった奴は分かんなくても場所は?何処でやられたかは分かんだろ」とヨウ。
「うーん……」とシズは考え込む。
顎に手を当てて、眉間にしわを寄せて、必死に思い出している。3人は答えは出るだろうと期待する。
だから、けろっとした顔で「覚えてないや」と言いやがったシズの頭を3人して引っ叩いた。
「痛い!ちょっと、俺、怪我人!」
「うるせぇマヌケ」
「手がかりゼロじゃねーか!」
「期待させといてそれはないよ」
シズは肩をすぼめた。
だけど、覚えてないものは覚えていない。本当に背後から1発殴られたのだ。つまらないことでもいいから何か無いのか。気を失う前の記憶をたぐり寄せる。
「転移魔法で飛ばされたことしか分かんない」
「飛ばされた?……どこ?」とモノが身を乗り出す。
「分かんない。見たことない場所だったから」
「そうじゃなくて。どこを歩いてたら飛ばされたの?」
「え?ええっと……図書館塔から普通科に戻ってくる途中、だったはず」
「お前そういうことは先言えや!」とテツとヨウはシズを叩き、罵倒の言葉を並べるが、いつものことなのでどうってことはない。
モノは学園内のマップを脳内で描く。
図書館塔は正門から続く大通りの終着点に位置する。その大通りを挟んで普通科と特別科が別れている。
敷地内の通りはその大通りだけではない。細い道もいくつかある。むしろその大通りを通行する人はあまりいない。境目だから近寄らない。
シズも戻ってくる際には普通科側の道を通ったはず。
そこを歩行中に、魔術にはめられた。転移され、その後暴行を加えられた。
「……シズさ、特別科に恨み買うようなことした?」
「え!?そんなアホみたいなことする奴いる!?」と抓られたり髪をぐしゃぐしゃにされたシズが素っ頓狂な声をだした。
「だよね」
「モノ、なんで特別科?」
テツは抓っていた手を離す。
「いや、わざわざ転移させたって事は普通科側に踏み込むのはいやだったのかなぁと思ってさ。だって普通科の生徒が犯人ならその場で殴れば良いじゃん。図書館塔に行く人なんてそうそういないんだから目撃者もいないし、植木の裏とかは死角だし」
「……あー、一理ある、かも?」とテツは首をかしげた。
「俺も分かんないけどね」とモノが付け加える。
「とりあえず、犯人捜しはやめとこーぜ?」
ヨウのその発言にテツが「はァ?」とけんか腰になる。
「……珍しいね、ヨウなら率先してやると思ってたのに」とモノの口調がいつもの冷静さに戻る。そんな中、シズはひたすら首を縦に振っていた。
「お前、どっちの味方だよ」
「今回はヨウの味方。俺は3人が俺みたくボコボコにされてほしくないもん。関わんない方が良いよ」
「とりあえず、お前らは同じクラスなんだし、こいつから目ェ離すなよ。また知らねぇところでこいつがボコられるかもしれねーしさ」
モノとテツは顔を見合わせる。
そして、「分かった」と2人口裏を合わせた。
「よっしゃ、んじゃ俺教室もどるわ」
また放課後、とヨウは保健室を去った。
「……で、どうするよ、モノ」
「どうしようね」
ぴしゃりと閉じられたドアのほうを見ながらモノとテツは呆れたように口にする。
「なんかするね、あの様子じゃ。やる気に満ちてるし」
「なに。やる気ってまさか殺すって書くやる気のほう?」
「かも。あんな顔見たの久しぶりだし」
「あんな顔?」とシズ。
「荒れてた頃の顔」とモノが答えると、ひえぇとシズは自分の肩を抱く。
そのときのことは、あまり良い思い出ではない。
「やらせとけば?どうせ、止めたって素直に止まるわけないじゃん」
「……まぁそういうやつだよな」
「俺達に言わなかったって事は、あの3人の誰かを頼るのかも。その人が常識人であることを願おう」
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