桔梗 お買い物だよ
お城から出て、城下町に出ると、そこにはたくさんのお店があった。
美味そうな匂いの串焼きだ。オーク焼きだって。
屋台の上にオークの顔が、デフォルメされて描いてあるけど……あれ豚だよな……
塩コショウのシンプルな味付けだけど、オーク焼きはうまかった。
普通に豚肉の串焼きの味だけど……
しばらく街歩きしてると、一軒の店が目に入った。
デッカい三角帽子のオブジェ。これは魔法関係の店だな。
店名は……マジックショップ手品……うわっ。手品って、思いっきり書いてあるよ。
「いらっしいませ。そこの童貞臭いお兄さん」
何が童貞だよ……当たってるけど……
俺に呼び掛けてきたお姉さんは、三角帽子、ミニのローブ、ブーツ、マントって、魔法使いらしいスタイルだったけど……
うわっ。
俺の手を引っ張って、自分の横乳に押しつけやがったよ。
この巨乳が……柔らかいじゃねえか……プニュプニャだと……おっと、思わず店に連れ込まれてしまった。
「色々あるから見て行ってね。この柔らかいスプーンとか、インチキトランプとか、どうかな?」
「イヤ、手品グッズとか、いらないし」
「じゃ、私が着てるのと同じ、初心者魔法使いセットとか、どうかな?」
「イヤ、それディスカウントショップとかで売ってそうだし」
「あっ、バレた?ディスカウントショップで仕入れたんだけど、ハハハハハハ」
「笑い事じゃないよ。もう。魔法的な強力装備とかはないのかよ?」
「あるわよ。これ。魔法使いの靴。その名も、渦」
「確かに、その靴の先が縦に、渦巻きみたいに、ぐるぐる回ってるけど……その変な靴は、何か価値あるの?」
「あるわよ。この靴は凄いのよ。誰でもレア魔法が使えるようになるんだから」
「本当かよ?」
「本当よ。しかも、そのレア魔法は、睡眠魔法」
「睡眠魔法……ドラフトにもなかった……かなり役に立たちそうな魔法だ」
「そうだよ。しかも今なら、10万円。おまけで初心者魔法セットも付けちゃう。どう?」
「怪しい。安すぎる……何かあるでしょ?」
「うっ、童貞のクセに鋭い」
「童貞でも解るよ。何でそんなに安いの?」
「はあ。バレたら仕方ない。話すか……この靴は、サイズが23センチしかなくて、入る足の大人がいないんだよ」
「えっ、俺は24でも入るし、23でも入るけど……あっ、しまった」
「へえ、童貞くんは、男にしては背が低いけど……165センチくらい?」
「ああ」
「ま。女の子としては普通だけど……靴のサイズ、23センチでも入るんだ……びっくり。普通23センチって言ったら、小学生のサイズだよ」
ガーン。俺の小足って……小学生…
「それなら、ちょっと履いてみて?」
俺は履いてたショートブーツを脱いで、その靴を履いてみた。うわっ、カッコ悪。
でもサイズはぴったりだった。
「ぴったりみたいね。それで私に、睡眠魔法を掛けてみて?」
「え?いいの?解除方法とか知らないけど……」
「大丈夫よ。私も魔法使いだし、魔法防御力も高いのよ」
俺はその店員を鑑定してみた。魔法防御力200……俺の魔法攻撃力は低いし、これなら睡眠魔法に掛かっても、すぐ解除だな。
「じゃ、行きますよ……って、俺、魔法を使った事無いんですけど……」
「はあ?魔法まで童貞なの?君はどれだけ童貞を抱えてるの?いいわ、私が教えてあげる」
「お願いします」
「イッケーとか、掛け声を出して、睡眠魔法って言えばいいのよ」
「そんなので、いいんですか?」
「いいのよ」
「じゃ、行きますよ……イッケー睡眠魔法」
「あっ、眠……めちくちゃ眠いわ……あっダメだこりゃ、もう店を閉めないと……ほら、私が眠る前にステータスカードを寄越して……」
「ええっ?何か催眠術に掛かったフリをした人にしか見えないんですけど……」
「ああ、寝る、寝る、早くしないと、童貞君に抱き付いて、寝るよ……店の前で」
「やめて下さいよ。そんなの、俺が痴漢って思われるじゃないですか」
「寝るう、寝るう、アーはやくぅ」
「わかりましたよ、はい」
俺がステータスカードを店員に差し出すと、店員は、バーコード読み取り機みたいのを、カードに当てた。
「はい、10万円、引いといたから。このカード、誰かに貸す場合は、暗証番号がいるけど、自分で使う時は、そのまま引かれるから、必ず確認してね」
カードの残高は、990万になっていた。ステータスカードだけど、お金は万単位まで表示されるみたいだ。
他のステータスみたいに、大雑把だと、使い辛いし、これは良かった。
「はい、これ、おまけの初心者魔法セット。この紙袋の中に全部入ってるからって……あんた、童貞って事は……男だよね」
「当たり前だよ。男だよ」
「男なのに、何で魔法少女服を着てるの?変態?」
「違う。コスプレーヤーだよ。ドラフト会議を見てなかったの?」
「あっ、思いだした。あんた桔梗スイーツウイッチだね」
「そうだよ。鑑定でわからなかった?」
「鑑定してないよ」
「じゃ、どうして童貞ってわかっんだよ?」
「雰囲気。君は童貞、丸出しだから」
「……」
くっそ。早く彼女欲しいな。
俺はアイテムバックを呼び出して、その中にショートブーツと紙袋を収納した。
そして、店を出て、しばらく歩くと、大林製薬って書いてあるお店を見つけた。
ここにタマさんが言ってた、ポーションとか、売ってそう。
「こんにちは、あの、レベルアップポーションとか、ありますか?」
「ありますよ。どのステータスを上げますか?」
「えっと、器用さと、幸運をお願いします」
「それでしたら、超強力なのがありますよ。どれぐらいの分量にしますか?」
「そうですね……思い切って……300万円分の器用さアップポーションと、200万円分の幸運アップポーションってありますか?」
「ありますよ。超強力、器用さアップポーション。加藤だが。を三本と、幸運アップポーション。コウウンアガールを二本で、よろしいでしょうか?」
「それ、効きますか?」
「ビンビンに効きますよ」
「買います」
俺は買ったポーションを、その場で飲んだ。
かなりステータスが上がった。器用が300に、幸運が600までなった。
王宮に戻って、自分の部屋に入って、改めて部屋の中を見回した。
可愛い。全体がピンクで、ベッドには天蓋が付いてて、ピンクのレースがヒラヒラして……タンスとかも、ピンクに塗ってあって。
これ、男の部屋か?ちょっと嫌だったが……でも窓に掛かるカーテンが……
俺の大好きなアニメキャラの、桔梗だよ。最高のデザインのカーテンだよ。
でも?何でこの異世界に?
「あっ、パクリか……」
俺の独り言に、いつのまにか部屋に入っていた、シロカさんが答えてくれた。
「パクリじゃないですよ。そのカーテンは純正品です。地球に残った魔法使いが、魔法で送ってくれたんです」
「え?そんな事、出来るんですか?」
「出来ますよ。物だけですけどね……もう人は送れないそうです。その魔法使いも帰ってこれないですし」
「あの魔法使い……ありがとう」
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