人は見た目が。。。
私の知り合いにとても良い声で話す好青年がいる。
彼は話も面白く、人間性もとても良い。
だけど。。。
彼はブサイクで若ハゲだ。
こんな話がある。
伊集院光がテレビに出ていない頃にラジオ番組をやっていて、
彼の熱烈なファンが彼を一目見たいと
スタジオの外で出待ちをしていた。
散々待った挙句に伊集院が出てきた。
だけどそれが彼とわかった瞬間に、そのファンは彼に向かって
「嘘つき!」と言ったとか言わないとか。
伊集院光も、私の知り合い同様にとても良い声をしていて
話も面白い。
でも、決してイケメンではない。
人は中身というけれど、無意識のうちに世の中では外身の方が
重視されているのではないか。
イケメンや美人が歩いていると、目は無意識にその人を追うけれど
逆にブサイクな人が歩いていると
その人から目をそらしたり、
キモイ格好の人が近くを歩くと、すれ違うときに
もしかすると息を止めたりするかもしれない。
人の見た目は、かなり重要なのだ。
と、そんなことを考えながら、
私は今日、月末の銀行になけなしのお金をおろしに行った。
多くの客がいて、なかなか手続きをしてもらえなかったのだが
ただ待っているだけではつまらないから、自分の番号呼ばれるまでの間
私は密かに銀行員たちを観察していた。
彼らは全員が「私たちは銀行員です」という雰囲気を出そうと
身だしなみやら立ち居振る舞いに気を使っているのがよくわかった。
数分して、窓口の女性が私の番号を呼んだ。
私はその声にときめいた。
間違いなく美人の声だったのだ。
ウキウキしながら窓口に向かった私を待ち受けていたのは
小ぎれいな中年女性だった。
ぱっと見はエレガントという言葉がぴったりの知的な雰囲気の女性だったのだが
よく見てみると、ちょっとだけ鼻毛が出ていた。
たった一本の鼻毛が、彼女をダメな女にしてしまっていた。
彼女のする息に合わせて、鼻毛が出たり入ったりを繰り返す。
ピロピロ、ス〜
ピロピロ、ス〜
とまるで海中のワカメのように
彼女の鼻毛は優雅にウェーブをしていた。
私は彼女に、そのおてんばな鼻毛の存在に気づいて欲しいと思い
彼女に見えるように自分の手を鼻に当てて
ゴシゴシと指をこすったのだが、彼女は私の顔を見ようとしない。
あ〜、どうしたら気づいてもらえるのだろうと
私は熱心に鼻を触るのだが、一向に気づいてもらえない。
と、そんなことをしていると、
いや、待てよ、
確かに彼女は鼻毛が出ているけど
もしかしたら、私も鼻毛が出ているのかもしれない。
と思い始めた。
急に自分の鼻の様子が気になりだした私は、
彼女から私の鼻の穴が見えにくい角度に
顔の向きを調整した。
他人のふり見て我が振り直せとはよく言ったものだ。
鼻の穴を人目につかない角度にしたうつむき加減の私は
窓口のその女性から目をそらし、
チラリと隣の窓口を見た。
するとそこにいた男性は、頭がみごとにハゲていた。
目のやり場に困り、逆の方向を向いてみると
そこにいた男性は、ズボンのチャックが少し開いていた。
あ〜、見た目が気になりだすとキリがない。
するとどうだろう。不思議なことに
そうやって他人の外見ばかりを見ていると
誰も私のことを見ていないはずなのに
私自身が周りの人たちに見られているような気分になってきた。
私は妙に恥ずかしい気持ちになり
何も悪いことをしていないのに、さっさとお金を受け取り
人目を避けるように競歩の速さで銀行を出た。
そして
あ〜来世はトムクルーズみたいな顔で生まれたいなと
ビルのガラスに映った自分の顔を見て、強くそう思った。
外見って、大事ですね。
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