第8話 人への取り憑き方

自己愛とは趣味を通じて知り合いました。テンプレ通り、最初は人当たりも良く楽しく華やかな自己愛。脳障害さえなければ…と惜しまれる才能も持っていましたので、こんなに面白い人と知り合えて嬉しい!と友人A友人Bとよく話していました。本人に率直に伝えたこともありましたし、本人のいないところでしみじみ言っていたこともあります。自己愛の方は「尊敬された。こいつらの女王になれる。取り巻きにできる」と徐々に考えていったわけですが…。


最初の頃、友人A、友人Bと、自己愛がそれぞれ二人きりで頻繁に会っていた時期がありました。今思うと「仲間内にひいきを作り嫉妬心を煽る。二人きりで会って支配する」等の無意識のテンプレ行動です。当時は「仲間内に、特に気が合う人がいるのは当然だよね」と流していました。先に標的にされたのは友人B。一人で行動するので支配しやすいと思われたようです。数ヶ月間は本当に楽しそうに見えましたが、ある時期を境に友人Bが一切自己愛と二人きりでは会わなくなります。私や友人Aも一緒に会う場にしか来なくなりました。この原因が、第5話の内容になります。


私は自己愛のムカつく言動や行動を、すぐに友人Aと話し合うことができていましたが、友人Bは一切告げ口をせず一人で耐えていました。外から見ている分には、自己愛に気に入られていいなあとしか思われません。最後の辺りは、何か気に触ったことがあると黙り込んでスマホを弄り始めるようになっていたそうです。この地雷も一般とは違い、「その靴かわいいね!」等でも自己愛が「お前の方が高いブランドの靴を履いているくせに…馬鹿にされた!」と思えばだんまりになります。普通の人間ではないのです。


友人Bを取り込む事に失敗すると、友人Aに取り憑きました。友人Aは私と長年つるんでいたので、それを引き離す意味もあったと思います。私は口だけは達者なので、友人Aが貶められた際などに私が切り返して自己愛をやりこめたりしていましたから、余計邪魔だったのでしょう。友人Aは根がピュアなので、すぐに取り込まれ、一時は自己愛の悪い所だけを真似た子自己愛のようになりかけました。自己愛と離れた今ではほぼ治っていますが、危ないところでした。


友人Aに対しては、自己愛は「コピー」というテンプレ行動を始めました。自己愛は自分がありません。自分の好きな服装、髪型などを持っておらず、雑誌のモテ服モテ髪型や、身近でいいなあと思った誰かの服装から行動、言動まで丸々コピーします。そして自分がコピーであるという屈辱を拭うために、見下している誰かに「自分のアドバイスに従うように(自分の劣化コピーになれ)」と執拗に言ってきます。


出会った頃はモテ服の塊でしたが、雑誌でモデルが着ているものをそのままコピーしているので、露出が際どく少しだけ痴女っぽくなっていました。そのためよく変質者ギリギリの人に声をかけられていたのを自慢げに話していましたが、一度私達の目の前で、本当にヤバい中年男性に声をかけられており、さすがに気まずそうにしていました。それまでは現場を押さえられていなかったので「ファッションリーダーの私はモテて困る」という言い方をしていたので。それでもなんとか自分を奮い立たせようと「困るわ〜」と自虐風自慢に持ち込もうとしたところを、私と友人Aで、「パンツ見えそうなビッチ服だから変質者が寄るのも仕方ないね。周り見てみなよ。パンツ見えそうな人誰もいないよ。私達はビッチ服も見てる分には好きだから、そういうキャラの女の子も好きだよ!」と言ったところ、次回からやめました。本当にビッチ風も好きなのですが、自分が好きでやっていたのではない上「みんなと一緒じゃないよ」というのが効いたようです。


自信満々のモテ服とモテ動作を否定された自己愛は、私達の前でのキャラを見失ったようです。個性的で周りからの人気もあるように見えた友人Aをコピーしました。この頃私達はとても楽しく遊んでいたのですが、後にそれは「友人Aが二人いたからだ」と判明しました。モテとは縁遠い服装、話し方から騒ぎ方まで、丸々友人Aのコピーでした。証拠に友人Aが参加していない時の自己愛はテンションが低く、なんの個性もありませんでした。ブランク(空)の状態です。しかし私はその、低いテンションでボソボソと本当に自分の好きな事を暗めに語る自己愛の方が好きでした。障害に侵されていない素の部分の方が、奇妙な演技をしている時よりも人間的魅力がありました。


ちょうどこの頃、自己愛と友人Aはいつも二人きりで一緒にいました。友人Bよりも天然な友人Aは、おそらく色々と嫌な事を言われてもその場で「ふざけんな!」などと言い返して解消していたようで、そこはあまり問題になりませんでした。しかしやはりご機嫌を損ね、自己愛が無言になりずっとスマホを弄りだした時に強い恐怖を覚えたようで、それ以降「二人きりは嫌だ、またああなったら怖い」と怯えるようになり、友人Bと同じく集団でしか会わなくなりました。今なら解るのですが、このだんまりは試し行為で、「ご機嫌を損ねた自己愛姫のご機嫌」をどのくらい必死でとってくれるかをテストしているのですが、私の友人達はそんな化け物に出会った事が無かったので逃げだせたようです。ここで三人で答え合わせが出来ていれば長引かなかったのですが、友人Aは事態をうまく説明できない。友人Bは告げ口を良しとしない性格なために、集団で会う分にはいいか…と長引かせてしまいました。私が一対一の恐怖を聞いたのも、もう終わりの頃でした。こういった裏工作がバレないように、自己愛は一人一人引き込んでいこうとする習性があるんですね。


友人Aにも逃げられた自己愛は、この後コピー元をリア充の知人に変えました。突然服装や趣味が変わるので、新たなコピー元を見つけたのがすぐに解ります。友人Aを劣化コピーにするべく、「〜してあげようか?」という自己愛テンプレ用語で執拗にアドバイスしようとしていましたが、しつこくされて苛立った友人Aに「おまえの服装もメイクもチョイスも全部全く好みじゃない!全然そうなりたくない!いらない!」と言われ黙りました。妙な手作り小物を「売ってあげてもいいよ」と言ってきたので、それも友人Aが「いらねえよ!タダならもらってやってもいいよ。使うかは分からないけど」とバッサリやっていました。この辺りはかなり後期ですが、自己愛の障害が酷くなっているのが解ります。


後に唯一の取り巻きになった人は、ひいきが気持ちよく、貶められ利用されても「気のせい」「信頼されてる」と思い込み、最後は憐れな程利用されていました。性格もだんだん子自己愛になり、私や友人A、友人Bを見下すようになってきたので望み通り自己愛ごと切りました。憐れな姿を見るに耐えず、この取り巻きさんの情報も一切遮断したのでもう解りませんが、今も時々呼び出されては甲斐甲斐しくセッティングしたり苦手な生ものを頑張って食べているのでしょうか。取り巻きさんが幸せなら我々が口を出すところではありません。

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