第2話 住まいへのコンプレックス

自己愛にはそれぞれコンプレックスがあり、そこを刺激されると原始的憤怒や

幼児退行のような症状が現れます。

私が遭った自己愛は、まず家や建物、ホテルにこだわりがありました。


友人Aと毎年旅行に行っていたのですが、自己愛に声をかけたところ参加することになりました。この時はまだ出会って間もなく、自己愛も私達を見下していなかったので、とても楽しかった記憶があります。

しかしホテルの窓から隣の新館を見て「あっちの綺麗な建物にはできなかったの?」

そう言われたことだけが少し引っかかりました。全員自腹で、最初に予算はこのくらいでという話も決めていました。この時は流してしまったけど、こういったちょっとした「おや?」は正しい。


その後、右肩下がりに私と友人Aは「見下し対象」になっていきました。自己愛は基本、自分が話題の中心、最低でも自分が興味のある話題でない時はスマホを弄りながら黙ります。それは無視することにしていました。

私が身内とその旦那と子供の写真を友人Aに軽く見せた時も、だんまりで無反応でした。今思うと結婚にもコンプレックスがあり、見下している私という人物の身内が、旦那と子供に恵まれ幸せなのが余計気に食わなかったのかも。自分の昔からの友人が結婚したことについても「結婚なんかしたら終わり。どうりでつまらなくなった」と毒づいていました。結婚報告はもらえておらず、人づてに聞いたようでしたが。


そんな自己愛でしたが、身内が子供を抱っこする画像を見て血相を変え、私の手からスマホを奪い取ると、叫びました。

「なんで、家、新しいの!?」

私や友人は当然「???」となります。

何言ってんだこいつ???

どうやら、見下している私の家族が、築年数の浅い、綺麗な建物に住んでいた事が癇に障ったようです。賃貸だし、そんなに長く居ないよ?とフォローしましたが届かず。ボロボロの長屋に住んでいて欲しかったみたいです。この少し後「私の家はマンションを買って引っ越すみたい」「やっぱり家をリフォームするみたい」と聞いてもいないのに報告してくれ、自己愛の中だけで勝ち負けが決まったようです。


その頃私も築浅の賃貸に住んでおり、それもとにかく気に入らなかったようで、ひとつ前の手狭な物件の時には無かった悪態が出るわ出るわ。収納が増えてキッチン上に何もないと「料理をしない人はね…」。逆に買った食材が積み上がっていれば「あららあ?生活感が出てきちゃったね!」とニタァ。私のキッチンを使って鍋をやろう!と勝手に言い出した事もありましたが、汚したいだけだと察した友人Aが「おまえ汚したいだけだろ」とそのまま言ったので黙りました。自己愛は自称お料理上手の女子力高いモテリア充でしたが、「料理のできる人のキッチンは物が多くても清潔で、腐った食材を放置などしない」という私の固定概念を崩してくれました。食中毒になった時は大変そうでした。男に振る舞った料理の画像は男をチラッと写り込ませながらよくアップしていましたが、私達はそのオサレ写真を見かけるばかりで一度も何か振る舞われた事はなかったので、味は不明なままでした。釣り過ぎて余らせた魚を、余らせた、要らないと散々言った後に「あげようか?」と上から言ってきたので、その魚から取ったあだ名をつけてやりました。後に「その魚の名前で呼ばない人は私を敬っているいい人」みたいな事を言っていたので、馬鹿にされていたことに気づいていたのかもしれない。料理関連では、わざわざSNSに「自分用メモ!帰りに○○(一般的でないオシャレな食材)を買うこと!」と書いていたのが大変面白かったので、今でもたまに真似させてもらっています。さすがギャグセンスが秀逸ですね。


最終的に私が「この部屋、冬は寒い」と書いた時に、普段全く無反応になっていた自己愛がそれはそれは嬉しそうに「一階だから寒いんだ!布団にくるまって!あたたかくしてね!」と薄ら寒くコメントしてきたので、友人たちと苦笑してSNSも全ブロックしました。


他にも、誰かが新築を購入しようかと考えていると不機嫌になり、やはり今のところは賃貸にしよう、と結論を出すとご機嫌になったりしていました。新築や一戸建ては素晴らしいものですが、自己愛のこだわり方は昭和の僻地の価値観です。

おそらく子供の頃にあばら家に住んでいたのでしょう。またはきちんとした住まいがあったにも関わらず、誰かに馬鹿にされた事をずっと恨んでいるか、または自分に相応しいのはお城だと思って生きているのでしょう。意識高い系のエセミニマリストをぶつけて戦わせてみたいです。

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