せいしをかけて!セクサロイド
東雲メメ
本編
ラビ、襲来篇
一発目『ラブ・サービスは突然に』
僕の名前は
いわゆる『さとり世代』と呼ばれる人間だ。
物欲といったものがあまりなく、人付き合いもビジネスライクに済ませることを好む僕は、金曜日の学校が終わっても特に寄り道をすることなく、真っ直ぐ帰宅する。今日、この日もそうだった。
「ただいまー」
夕方の五時半ごろ、自宅であるマンションのドアを潜る。
玄関で履きなれた革靴を脱ぎ、向きを整えてからリビングへと向かう。扉を開くと、すでに居間にいた三人からの返事があった。
「あらあらまぁ、おかえりなさいたっくん。今日も早かったのね〜」
エプロン姿でキッチンにいるのは僕の母さんだ。のほほんとした人で、専業主婦をしている。余談だが、未だに『たっくん』と呼ばれるのは正直恥ずかしいと思う今日この頃だ。
「はっはっは、最近の若い子はちゃんと真っ直ぐ帰るんだなぁ。お父さんなんて
こたつの前に腰掛けて新聞を広げているのは僕の父さんだ。ごく普通のサラリーマンであり、一家の家計を支えてくれている大黒柱だ。おおらかな性格で、母さんとの夫婦仲は今でも良好だ。
(で、なんで平日のこんな時間に家にいるんだよ……)
仕事はどうした、仕事は。普段ならまだ会社にいるはずの時間だろう。“父さんの会社、倒産しちゃった♪”なんて使い古されたギャグは僕と読者が許さないぞ。
一刻もはやく父親にそのことを問い詰めたかった僕であるが、彼とこたつを挟んで向かい側に座る人物を見ると、そんな気も失せてしまった。
そう。三人家族であるはずの立梨家に、存在しないはずの四人目がそこにはいたのだ。
「あっ、おかえりなさいませ! ずっと待ってたんですよぉー」
パアっと明るい笑顔を浮かべて、見知らぬ女の子がこたつから勢いよく立ち上がろうとする。しかし、長い時間正座で座っていたのが災いして足がしびれてしまったらしく、『ひゃう!?』っと嬌声にも似た短い悲鳴をあげてまた座り込んでしまった。
そんな彼女を見て僕は思わず、
(冗談みたいに可愛い子だな)
などと、普段の僕らしくない感想を抱いてしまう。
事実として、いま目の前で涙目になっている女の子は、目鼻立ちがかなり整っていた。世間一般で言うところの“お人形さんのような美少女”とは、まさしく彼女のような者を示すための言葉だろう。
肩まである栗色の髪はキューティクルが艶めきを放ち、豊満な胸元や引き締まった腰のくびれは、女性らしさを包み隠さず主張している。着用しているきわどいバニーガールの衣装が、その印象をさらに強めた。
どこを取っても美しさのあまり溜め息しか出ない。そんな彼女の出で立ちは、まるで芸術家が創り出した美術品のようでさえあった。
「えへへ……しばらく立てそうにないですぅ……てへぺろ☆」
尻餅をついたままのバニーガールは、舌を出してウインクをしてきた。この仕草、2010年前後に流行ったアレである。
「うわ古っ……じゃなくて、あなたは一体どちら様なんでしょうか? なんか普通にウチでくつろいでますけど……」
見たところ、母さんや父の知人といった感じでもなさそうである。かといって、自分にはこんな奇抜な格好をする知り合いなど存在しない。
すると、僕に質問を投げかけられたバニーガールは自分の胸をポンっと叩くと、何だか誇らしげに自己紹介を始めた。
「申し遅れました! わたくしは本日
ふむふむ、ラビという名前なのか。どおりで日本人には見えないはずだ。
「ちょっと待て、御奉仕ってなんだ。それに今夜はよろしくって何を」
「やだなぁ辰兵衛さんったら、わかってるくせにぃ〜」
ラビと名乗った少女は、僕の疑問を誤魔化すように微笑んだ。その頬はほんのりと赤い。
「いや、ゴメンだけど全っ然
「もうっ! 言わせないでくださいよぉ……辰兵衛さんのえっち!」
あまりにも理不尽なセリフを僕に浴びせ、頬に手を当てて顔をブンブンふるウサ耳のバニーガールことラビ。彼女は四つん這いでこちらの足元まで寄ってくると、上目遣いで僕の顔を仰ぎ見た。
「今夜はわたしが性交渉のお相手をします。だから、その……優しくしてくださいねっ?」
それが僕と、22世紀の未来からやってきた
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