3話_仲間ができた翌朝に俺は
翌朝、宿屋の食堂で出たご飯をアイリと向き合いながら食べていた。
昨日はアイリが疲れたと言ってすぐに宿に行った。その後はそれぞれ部屋を借りて別れたので組むと言ってからちゃんとした話し合いはまだしていない。
それもあって、何か話しかけにくい。思えば、知り合ってからまだ丸一日も経っていない。
って言ってもここでまごまごしてるのもキャラじゃねーし。
話し掛けようとアイリを見るとフォークを持ったまま小刻みにプルプル震えている。
何があったんだろう。
「筋肉痛で、身体が動かない」
「あれくらいで筋肉痛になるなんて情けないな」
「あれだけ動けば普通翌日に疲れが出るでしょ。手が震えてプチトマトが食べれない」
見ると、振動したフォークはトマトを捉えられずに何度も皿を突いていた。
いいこと思いついた。
「食べさせてやろうか」
「はあ? 誰があんたなんかに」
「あ、そう。それならいいんだ別に。俺もボランティア精神で言っただけだから」
わざとアイリに見えるように自分の分のプチトマトを食べた。
「あー、それにしても甘いな。この季節は本当に食べ物がおいしい」
「ぐぬぬぬぬ」
アイリの悔しそうな顔を初めて拝んだ。顔だけなら可愛らしいなと再認識。
「……てょ」
え?
なんて?
「食べさせてよ」
顔を真っ赤にして口を開けてきた。なんだなんだ。ラブコメの波動か。
身体はこれっぽっちも疲れていないけど、手先がプルプル震えて定まらない。
そんな様子を見て、アイリが調子に乗る。
「ほらほら、どうしたの? 早く口に入れてよ」
くそ、やってやるよ。
震えを無理やり力で抑えながら食べさせた。
アイリの小さな口にトマトを置いた後、ペキンという軽い音で手元のフォークは折れた。
「ぷふ」
アイリが吹き出した。
それに釣られて俺も笑った。
間に流れてた空気が居心地の良いものに戻った。
「とりあえず、本題だけど。パーティー組んでこれからどうするつもりだ?」
「そうねー、パーティー組んだって言っても2人だし、仲間を増やすべきでしょ。とりあえず4人か5人くらい」
「それなら、可愛い女の子で」
「却下」
食い気味に否定された。
「絶対にそう言うと思ったけど、却下。戦力になるかどうかを重視して」
「じゃあ、どんな奴ならいいんだよ」
そもそも、俺がいる時点で戦力的に負けることなんてないだろ。
「ウチらの能力から考えるべきだと思う。後方支援とか、特殊スキル持っているとかがいいんじゃない?」
なるほど。
「その条件を満たした上で可愛い女の子なら文句ないな」
「え、ちょっ」
話を最後まで聞かずに飛びだした。
どうせ話を聞いても止められるだけだ。
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