【 雨 音 】


わたしが目覚めたのは、暗い、暗い、部屋だった。


ザーザー、シトシト、雨の音が聞こえる。


ポタポタ、ポタポタ、どこかで水のしたたる音が聞こえる。


ほそく差しこむ光が、はい色のユカや、所々ペンキのはげた白いかべをうっすらうかび上がらせている。


どうしてだろう、身体がいたい。頭がズキズキ、ズキズキする。


かびクサいカーペットに手足を投げ出したわたしは、ゆっくりと身体を起こした。


わたしはここで何をしていたんだっけ?


ザーザー、シトシト、ザーザー、シトシト


雨音が耳ざわりだ。


ザーザー、シトシト、ザーザー、シトシト、ズキズキ


頭がいたい。なにか大事なことをわすれている。


ザーザー、シトシト、ザーザー、シトシト、ズキズキ、ズキズキ


ああ、おかしいな。


ザーザー、ポタポタ、シトシト、ザーザー、ポタポタ、

シトシト、ズキズキ、ズキズキ


やらなければならないことがあった


ズキズキ頭がいたい


ポタポタ、はずなのに、思い出せない、ポタポタ


ザーザー、シトシト、水の音がうるさい。ザーうるさいザー、シうるさいトシト


ポタうるさいポタ。ポタポタうるさい


ズキうるさいズキうるさい


うるさいうるさいうるさいうるさい


ザーザー、シトシト、ザーザー、シトシト、ズキン――


ピリリリリリ


ふと目を開いた。どこかで携帯電話が鳴っている。

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