第五話 異世界パンデミック(後編)
「うぉぉぉぉ。てめぇら、よくも俺の女を!」
俺は密かに鍛えていた巨大魔法を放った。
まばゆい太陽の光になって、どんどん周りが消し炭になっていく。
マナが尽きる……。もう、どうなってもいい。気を失おうと知った事か!
「はじめまして、夢野魅苦と申します。魅苦とお呼びください」
「なんだ、誰。あ、君、ミクちゃんだっけ。すっげぇ可愛いんだな。へぇー。てことはここ、二人が言ってた夢か」
「ありがとうございます。そのとおり《夢目》の世界です」
「じゃあ、俺も《巻き戻せる》のか」
「はい」
「問題はバッテリー何だよな。どうすりゃいいんだろう」
「考え事でしたら、ここでごゆっくりどうぞ」
「夢ならさ、魔法の研究出来るよな」
「はい」
「よし。バッテリー要らずの《セキュリティア》を俺が習得してやる」
「がんばってくださいませ」
甘かった。
セキュリティソフトはこんなにも複雑なのか。プログラミング素人の俺にはお手上げだ。
だが、ミルミルが殺されるのをみてこのまま黙っている訳にはいかない。
「どうぞ、コーヒーです」
「ああ、ありがとう」
可愛い。
マジで可愛い。
あの短いミニスカートから見える青縞パンもたまらんし、ニーソックスもいい。なによりウエストのくびれに、動く度に揺れるおっぱい。おっぱい見たくなった。
「なんでしょうか」
「ミクちゃん、おっぱい見せて」思わず言ってしまった。俺、終わった。
「も、申し訳ございません。パンツならいいですけど、裸になるのはそのあの」
「パンツならいいの?」
「ええ。いわゆる見せパンですから。見ますか」
「じゃあ、M開脚してくれない。そしたらやる気出るから」
「かしこまりました。こうでしょうか」
うほー。土手がもりっとしていて、筋が見えてるじゃん。これ生パンだろ。
「ありがとう。いいもん見せてもらった」
「はい。見られるのはやっぱり恥ずかしいので、あまりこう言うご注文は」
「分かった分かった」
俺は《セキュリティア》の呪文解読を行いつつ、ミクにいろいろな恥ずかしいポーズを要求した。
なんと、個室トイレまで付けてくれたので、いつでも発散できた。
「あのさ、ミクちゃん」
「はい」
「ブラは取らなくていいから、見せて。お願い」
「ふぅ……わかりました。そんなに熱い視線を向けられては、困りますから」
ミクがブラウスのボタンを少しづつ外した。
一個外れる度に、俺の喉が鳴った。
そして、オープン。
「おお。凄い真っ白。しかも、ブラ小さいな。ほとんど隠れてないじゃないか」
「あの、恥ずかしいので、これ以上は」
「もう少しそのまま」
真横から見ると、ものすごい迫力がある。写真を取らずにはいられない。
なんとか思念で具現化したカメラでパシャパシャとった。
「しまっても、よろしいでしょうか」
「どうぞどうぞ」
そこら辺のグラビアアイドルなんか目じゃないわ。いやーいいわ。
何日過ぎたか分からない。
俺はミクに聞いた。
「あのさ、今日で何日目なの」
「時間は止まってますからね。リゼルさまが目を覚まさない限りは」
「ふーん」
「魔法は完成しましたか」
「駄目。無理だ。それよりも、ミクちゃん、俺と付き合ってくれない」
「はい?」
「だめかな」
「私は、この世界以外では存在できませんよ」
「駄目か。俺が目を覚ましたら会えなくなるんだよな」
「はい」
「じゃあ、最後の思い出にエッチして」いろんなポーズを引き受けてくれるので、かなり気軽に頼めるようになっていた。
「それは、無理です」
「そんな笑顔で拒絶させると、何も言えないじゃない。もうっ」
「ところで、《巻き戻る》気はございますか」
「ああ、どうしよ。あ、あるよ。あの裏切ったあいつをなんとかしなきゃな」
「乗り気ではないようですが?」
「ミルミルよりもミクちゃんを好きになったから、寂しくて」
「お気持ちは嬉しいのですが、先程も申したように」
「わかってるよ。フラれちゃったなー。《巻き戻して》」
「承りました」
まさにいま目の前に、裏切り者が身体を蝕まれていた。
「こいつは、山賊のスパイだ」
「リゼル、何言ってんだ」キジがびっくりしていった。
俺は《巻き戻った》ことを説明した。
「なんてことだ。そうだったのか」
「そんなことより、省エネ出来るようにしたから」
「魔法をか?」
「ああ。紙一枚につき十人は救えるぜ。ただ、マナで使うところまでは達成できなかった」
「すごいじゃん、リゼル」ミルミルが言った。
ミルミルには後で、別れの言葉を言おう。ビンタくらい仕方ないな。
裏切り者から離れようとした時、そいつが命乞いをした。
「待ってくれ。そんな、俺が裏切るなんてこと、あるわけ無いだろ。証拠があるのか」
「知るか。そこで死んでろ」
さっきの裏切り者以外、この一帯の全員を治療できた。
さすが俺、天才魔法使い。
身体が変異してしまったところはヒーラーが治してくれた。
裏切り者は身体が丸くなって、膨れ上がって飛び散って死んだ。
念のため、こいつは隔離していたので再感染の心配はないだろう。
おや。ポケットにミクちゃんの写真が。うひょー。
「リゼル何見てんだ」
「いやさ、ミクちゃんの写真が」
「ほぉ。おまえ、こんなことさせてたのかよ」
「一枚もやらんぞ」
「要らんわ。ていうか、ミルミルに見つかったらどうすんだ」
「それはさ。別れようと思って」
「え。おまえら、この世界に来てから恋人になったんだろ」
「もう、ミクちゃん以外考えられなくて」
「そんなことより、山賊対策するぞ」
「あいつら、感染して勝手に死ぬんじゃね?」
「バカ。潜伏期間長いだろ。準備しろ」
「はいよっ」
「いよいよ作戦の時間だな」
「ねぇ、リゼル」
「なんだ、ミルミル」
「これ何」
「あ、それ、俺のマイフェイバリット。ミクちゃんのM字開脚写真。返せ」
「あんたね……、夢の世界で何浮気してんのよ」
「待てよ、俺お前と別れようと」
「なんですって……。まだ別れてないうちにこんなことしてたら、浮気でしょうが!」
「うわ、双剣をこっちにむけんな。山賊来るぞ」
「うるさい、うるさい、うるさい!」
「夢なんだから別にいいだろ」
「うるさい! あの娘、どう考えても実在してるでしょうが」
「ぎゃあ、キジ助けて」
「おまえら、いい加減にしろ。山賊が現れるぞ」
言うが早いか、山賊がぞろぞろと現れた。
「あれ?」そこに俺だけが躍り出た格好になってしまった。
「なんだこいつ、やっちまえ」
「あらん、待って」
「姉御、どうしたんですかい」
「可愛い子じゃないの。ぜひ飼いたいわ」
なんだよ、このマッチョな髭面は。なんでどすこい声でオネェ言葉なんだよ!
ぎゃあ、囲まれた。
杖奪われた。なんて腕力だ。
「さあ、こっちいらしてーん」
「俺はそんな趣味ない。これを見ろ」
「ふん、なによ、こんな小娘。私のほうが何倍も可愛いでしょ。うふん」
「どこがだー」
「なんだとごらぁ!」
「なんでもありません」急にドスが効いてビビった。
「さあ、こっちよ。お前たちは、あいつらを殺れ」
ぎぁぁぁぁぁぁぁ。俺の処女がぁぁぁぁぁぁ。
「アッー――!」
俺の肛門は二度と閉じなくなり、切れ痔が止まらなくなった。それでもあの男はずっと俺を掘り続けた。
俺のちんちんは無用なものだと切り捨てられた。
その血だらけの、変形したモノを俺は吐き気を催しながら咥えさせられた。
「おげぇ」
白目を向いた鼻から、白いものが飛び出した。
「姉御、よろしいですか」
「何? いいわよ。このまま聴くから」
「女子供以外のギルドの連中を皆殺しにしました」
「そいつらはお前たちの好きにしな」
「ありがとうございます、姉御」
「感染者は出てるのかい?」
「はい。止める方法が分かりません。あの魔法の本の解析が進まなくて」
「まあ、いいわ。ところで、私好みの子はいる?」
「はい。どうぞ、連れてきました」
「あらあら、いいわね」
――「私がプレゼントした写真、喜んでいただけたようで何よりです」
ちょっと、恥ずかしかったんですよ。
「それではまた、逢える刻を」
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