• 夢目の魅苦

  • 第二章 呪縛
  • 第五話 異世界パンデミック(中編)

第五話 異世界パンデミック(中編)

 山賊の男たちのアレが私の顔にこすりつけてくる。

 鎧も剥がされ、服も破られ、処女も無理矢理割かれた。

「痛い! 痛い!」

 男どもは私の叫び声を楽しんでいるように、せせら笑った。

 悔しいのと怖いのとが心のなかで交錯した。

「ミルミルを離せ!」

 リゼル……助けて……。

 口の中に入れられ、身体を裏返され、お尻の穴にも挿入された。

 私はその痛みに耐えきれず、気を失った。



「はじめまして、夢野魅苦と申します。魅苦とお呼びください」

「げほ、げほ、……あれ、私は」元の服のままだ。怪我もない。

「ここは《夢目》の世界です」

「夢? ああそうか、私気絶したんだ」安堵した。どうせ覚めれば私は汚されているのに変なの。

「ハーブティを淹れました。どうですか」

「頂くわ。どうせ私はもう……美味しい!」と同時に虚しさも胸いっぱいになった。

「助かる方法がありますが、いかがされますか」

 まぶしいくらいの綺麗な髪と瞳が私に笑いかけてくる。まだ何も知らない清らかな乙女にように思えた。

「どんな方法? 殲滅魔法でも打ってくれるの?」

「いいえ。人生の分岐点にあなたを巻き戻して差し上げようかと」

「なにそれ」

「確か、キジさんとお知り合いでしたよね」

「どうして知ってるの……ああ、夢だから当然か」

「まあまあ、そうふてくされずに。キジさんがどうして感染を予見出来たかご存知ですか」

「たしか夢で少女に会って……。まさか、あんたが」

「はい。その通りです」

「じゃあ、もう一度キジを戻してよ」

「それは出来ません。《巻き戻る》事ができるのは一度きり。そして今あなたにもチャンスが与えられました」

「分岐点とか言ったわよね。選べるの?」

「複数あるならば。ですが、普通の方はせいぜいひとつかふたつでしょう」

「あるわ。あの異世界に召喚される前!」

「では改めて伺います。《巻き戻して》とおっしゃりますか? この一言だけお聞かせください。拒絶することも可能です」

「これが私の願望だろうと構わない! もうやぶれかぶれよ。《巻き戻して》」

「承りました」



 笑い声が聞こえる。

 いつもの登校風景だ。

 短いスカートを気にしながら、携帯いじってる娘ばかり。

 ってあれ?

「私、戻ってる!」

 自分の服を見た。破れてないどころか、学校の制服を着ている。カバンもある。

 たしか、キジは家からセキュリティソフトとノートPCを持っていったて。でも、私PCもってないよ。

「どうしたら良いの。そういえば前、キジは就活でスダバに寄ってたって。もしもこの街にいるなら、あの店しかない」

 私は学校と反対方向に走った。

 あった。随分と走ったけれど、なんとか間に合ったみたい。

 ショウウィンドを叩いた。

「キジ、ねぇ、あんた、キジでしょ」

 リクルートスーツのサラリーマンがこっちを見て、びっくりした。私は店に入って今までのことを話した。

「おい、お前まで戻ってるのか」

「え、どういうこと?」

「僕はさっき、《巻き戻った》ばかりなんだ」

「じゃあ、これからセキュリティソフト取りに行くの?」

「ああ」

「待って」

 私はノートPCが魔法の本になって、バッテリーが充電出来ないことを言った。

「マジかよ。予備バッテリー買うしか無いか」

「こんな朝からパソコンの店空いてるの?」

「緊急用バッテリーならコンビニで買える。できるだけ沢山買おう」

「私も買う」

「じゃあ、ミルミルは電池買ってくれ」

「分かった」

 私は手持ちのお金全て使って電池を買った。

 私が異世界に行ったきっかけは、スクーターでカバンをひったくられて気を失った時だ。

 私は、また会おうと約束をしてキジと別れた。

 たしか、近道をしようとして犯人と鉢合わせしたんだっけ。

 来た。

「間に合った」

 身構えていたけれど、猛スピードで突っ込んできた。その勢いで、壁に頭をぶつけた。



 異世界に無事召喚された時、数日でリゼルと出会った。

「ねぇ、聞いて。これからここ一帯が大変なことになるの」

 感染のことを話しても、まったく本気にしてくれなかった。

「もう! キジに会えば分かるから」

 数週間後にキジと出会った。

「キジ、予備バッテリーはどんな形になってるの?」

「紙だ。複雑な模様の書かれている」

「使い方は?」

「それはリゼルに頼むしか無い」

「なんだよ、あんたまでミルミルと同じこと言ってんの?」

「いいから。頼む」

 今度はキジと二人でこれから起こることを話した。山賊が襲ってきて私が犯されることだけは省いた。幸い、キジは記憶にないみたい。

 リゼルはすぐに使い方を習得した。

 この紙は、魔法の本と一緒に唱えることで本体の紙の代わりに消費されるらしい。

「だけど、この《セキュリティア》を唱えるためには、紙六枚は使うんだよな」

「そんなに⁉」

 コンビニを跨いで買い漁ったけれど、それでも五〇本ほど。十人救えるかどうかだ。

 ギルドにいる人達は、周りを含めて数百人は暮らしている。

「無理よ。これじゃ」

 私は落胆したが、リゼルが肩に手をおいた。

「大丈夫だって。修行してなんとか燃費良くするから」

「お願い」

 一ヶ月後、《セキュリティア》の燃費は紙一枚につき二回までとなった。実践練習で多少使ってしまったため、救える命はせいぜい一〇〇人程度。

「あのね、みんな」

 私は、隠していたことを話した。全員が救えるなら山賊に対抗できるかもと思ったが、これでは無理だ。

「すまない、ミルミル。辛いことを思い出させて」

「あんの山賊の野郎ども。今から奇襲仕掛けようぜ」

「たった三人でどうするんだ」

「傭兵を雇おう」

 私は、《セキュリティア》を代金にして傭兵を雇えば対抗できると考えた。

「それなら可能かもしれないが、山賊の動きはどうやって把握するんだ」

「それは……」

「なあ、奴らが現れる場所は覚えているのか」リゼルが聞いてきた。

「うん」

「なら、やりようはある。罠をはればいい」

「やつらは賞金首級だぞ、そう簡単に行くか?」

「やるしかないだろ」

 三人の意見は一致した。



 感染が起こった日を迎えた。

 まず私達が魔法で治療した後、ギルドにいる名の知れた連中に声をかけた。

「治してもらったからには、相応の働きはするぜ」

 と皆賛同してくれた。

 十名ほど雇えた。残りは小さな子や民間人に与えたが、それでも足りなかった。

 他のギルドや村のみんなを見殺しにしたようで、胸がズキズキしたけれど、キジが気にするなと声をかけた。

「ここにいる連中、全員同じ気持ちだ」

 私は大きく頷いた。



 広範囲魔法攻撃を使える連中や、罠スキルに特化した連中が罠を張り巡らした。

 そろそろ来るはずだ。

「おい、ミルミル。本当に来るのか」

「本当よ」

 真後ろから叫び声が聞こえた。仲間の一人が不意打ちで斬り裂かれていた。

「山賊、なんで!」

「あいつだ!」リゼルが指をさした。

 その男は、ギルドで治療した傭兵だ。山賊の隣りにいた。

「あんた、裏切ったの」

「勝ち馬に乗るのが賢いやり方さ。おとなしく、その魔法の書を渡せ」

「もう使えない。魔力切れよ」

「あいつは嘘をついてますぜ」

 山賊共は一斉に襲い掛かってきた。

 また多勢に無勢だ。

 しかも裏を取られたおかげで、張った罠が逆に私達を追い詰めた。

 双剣でなんとか応戦するけれど、巨体の山賊に吹き飛ばされた。

「ん⁉」

 罠の槍が私の身体中に突き刺さった。それを見た私は、糞尿を垂れ流した。

「ミルミル! くっそ、てめぇら」

 リゼル、ごめんなさい……。

 ……。

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