第12話『古本高価買取! カードゲーム・フィギュアも査定致します! 古書の風月堂』

 本日は『古書の風月堂』より授かったパワーアップアイテムは大人気マンガ『サザンアイズ』1~9、11、20~34巻だ!


 大きな持ち帰り用紙袋に詰められた、三只眼(三つ目族)と无(不死身)の交流と戦いを描いた物語の1巻を取り出して読みながら、ご当地ヒーロー”ハチカヅキン”(本名:大鉢 和紀)は怪人”犬王モノー”の立て籠もる『スーパー億万』駐車場へフラフラと向かうのだ!


 主人公ヒーローとしては甚だ頼りない不死身なだけの一般人が、強がるヒロインを護るために鍛錬を重ね、力を蓄えてゆく姿をみれば胸が熱くなる思いである。


 ご当地ヒーロー”ハチカヅキン”は、商店街の皆様から「ご当地ヒーローとして立って貰えないだろうか」とお声掛けのさい、ご期待に答えようとして『ヒーローネヤガワン』や『ヒーローナリタサンベツイン』(必殺技は人車一体安全祈願)などの迷走を繰り広げ、商店街の方々と深い溝を築いた(最終的にお客様アンケートにより事なきを得た)こともあったのだ。


 そんな思い出を振り切るように9巻目を読み終え、ヒーロー”ハチカヅキン”がステージに目をやると、


『人質兼暖房の花男くん(フレンチブルドッグ 8才 ♂)が寒さによる体調不良のためお借りできなかったため、戦いが始まるまで喫茶店『神音』で暖を取っています』


との張り紙を発見した。


 カランカラン♪


 木製扉に取り付けられたベルが来店を告げる音が店内に響く。


 コーヒーを頂く怪人”犬王モノー”。


 少し間を空けて横に座るヒーロー”ハチカヅキン”。


 『古本高価買取! カードゲーム・フィギュアも査定致します! 古書の風月堂』と書かれた大きな紙袋をテーブルに上げたヒーロー”ハチカヅキン”は、サザンアイズ(1巻)を取り出し、店主(神田 太さん 41歳)に何事か告げて手渡したあと、ホットコーヒーを注文する。


 一息つく怪人”犬王モノー”の手元に、サザンアイズ(1巻)がそっと置かれた。


「あちらのお客様からです」


 できたてのコーヒーを片手で持ち上げ挨拶するヒーロー”ハチカヅキン”が、店主(神田 太さん 41歳)に次々とマンガを渡し、店主(神田 太さん 41歳)が次々と怪人”犬王モノー”の手元に積み上げた。


 怪人”犬王モノー”がサザンアイズ9巻を読み終わる頃に席を立つヒーロー”ハチカヅキン”。


 サザンアイズジュッカンハイッテナインダヨ♪


 木製扉に取り付けられたベルが「サザンアイズを9巻まで読んだのに10巻が無い」という酷な音を店内に鳴らした。



「やっと崑崙の扉を発見したのか。次の10巻が楽しみだな………………ギャ、ギャアアアアアアアアッ!? 10巻がないだとっ!? まるでやっと9巻まで読んで盛り上がったのに10巻がなくて次が11巻だったぐらい辛いぞっ! はっ!? そういえば、夢中になってる内にヒーロー”ハチカヅキン”も帰っている!? そしてコーヒーも冷めた!? こ、これはもしかしてやらかしてしまったのか!? ご店主! お会計をっ!!」


 言い終わるやいなや怪人”犬王モノー”は、まだ抱えていたコーヒー(300円)をグィッと飲み干すと---冷めたコーヒーは苦かった---脱兎の勢いで駆けていった。


 戦いは始まるのだ。


「古本高価買取! カードゲーム・フィギュアも査定致します! 古書の風月堂さんでは、揃っていないマンガだって絶賛買い取りしているぞ! 揃っていないマンガだって、全国古書店ネットワークからの取り寄せも可能だ! 巻が抜けていて困ったときはお店の人に聞いてみよう! ヒーロー”ハチカヅキン”とのお約束だっ!!」

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