第11話『ヨドガワードッグラン空間』アクションSP

 ご当地ヒーロー”ハチカヅキン”は正義の味方である。


 では今回は特別編として、商店街の平和を守るため日夜戦い戦い続けるその姿を余すこと無くじっくりとご覧いただこう! 


VTRスタート!


 とても広い空き地で、ご当地ヒーロー”ハチカヅキン”が全身黒タイツの戦闘員A(柴犬の耳 掛け声はシバー)に右ストレートを放ち、当たってはいない戦闘員Aがとても上手く吹き飛ぶ!


 そのイヌ耳は敗北を悟ったのか倒れ伏している。


 ”ハチカヅキン”の攻撃のスキを突き、戦闘員B(ブルドッグの耳 掛け声はブルドッグ)が「ブールドッグー!」と叫びながら鋭くないパンチ!


 掛け声を確認した”ハチカヅキン”は間一髪でパンチを躱す!


 そしてその手を掴むとまるでヒーローショーのように”掴んだ手を縦にグルッとやったら相手が宙返りして地面に叩きつけられる”を、戦闘員Bと息を合わせ見事にやってのける。


 戦闘員Bの満足げな顔はタイツの隙間からは伺えないが、その垂れた耳が嬉しそうにピコピコしている。


「ええいヒーロー”ハチカヅキン”め! 戦闘員”犬人ドグー”を容易く倒すとは褒めてやろう。だが『ヨドガワードッグラン空間』に引きずり込んでくれるわ-!」


ドッーグラン クーウカン ハッセーイ ソウチィイイイ♪


 さも『ヨドガワードッグラン空間』発生装置が動作したかのようなBGMが流れると画面が暗転する。


 闇が消え去ると戦闘員A・Bしかいなかった広い空き地には、フレンチブルドッグやコーギーやミニチュアダックスフンドやゴールデンレトリバーや柴犬やチワワやゴールデンレトリバーが溢れかえっていた!


「フハハハハ。この『ヨドガワードッグラン空間』が発生すると犬が沢山遊びに来るのだ。犬が大好きな戦闘員A・Bと私の戦闘力はだいたい3倍にパワーアップする! もう勝ち目はないぞヒーロー”ハチカヅキン”!」


「シーバ シバーッ!」「ブルブルブルー!」 


 戦闘員A・Bは、柴犬やフレンチブルドッグとふれあいながら雄々しく大地を駆け回る。

 よほど楽しいのか尻尾をちぎれんばかりにフリフリしている。


「なんということだ! 犬がのびのびと安全に遊べる『ヨドガワードッグラン空間』は、休日ともなれば大勢の犬がやってきて犬同士のコミュニティを作ったり、飼い主さん同士で仲良くお話したり出来る夢のような空間なのか! こ、このままでは必殺『ハチカヅキンフリスビー』が、全てゴールデンレトリバーに取られてしまう!」


「さあ、では行けいっ! 戦闘員”犬人ドグー”! これで最後だヒーロー”ハチカヅキン”!!」


「シバーシバーッ!」「ブールドッグー!」 


 突然のアクションに驚いたチワワ(気性が荒い)に吠えられながら、戦闘員A・Bが左右から迫る。


 戦闘員Aの大振りなパンチで”ハチカヅキン”がよろめく!


 戦闘員Bの激しい動作のモンゴリアンチョップが襲い”ハチカヅキン”が崩れ落ちる!


「フハハハハハ! もうお終いだ”ハチカヅキン”! しかし長い間ヒーローと怪人として戦った仲だ。最後に何かいい残すのなら、聞いてやるぞ? フフフフフ」


「グワーーー! も、もう限界だ…最後にこの技に賭けるっ! 必殺『ハチカヅキンフリスビー』を喰らえっ!!」


 ヒーロー”ハチカヅキン”が破れかぶれで放ったハチカヅキンフリスビーだが、殺到するフレンチブルドッグやコーギーやミニチュアダックスフンドやゴールデンレトリバーや柴犬やチワワやゴールデンレトリバーに咥え止められてしまった!


 必殺『ハチカヅキンフリスビー』は犬たちに大人気だ!


「フハハハハハハハハハハッ!! それが最後の言葉だな、とくと聞いたぞヒーロー”ハチカヅキン”!!」


 隣で大盛況な犬たちを尻目に、怪人”犬王モノー”は犬の餌入れを象った杖を大げさに振り上げ、ヒーロー”ハチカヅキン”にゆっくりと振り下ろす!


 高笑いする”犬王モノー”!


 一緒になってフリスビーを取り合う戦闘員A・B!


 だがヒーロー”ハチカヅキン”は諦めてはいない!


 真に最後の力を振り絞り頭にかぶった『お鉢』をむしり取ると”犬王モノー”へ鋭い回転をかけて投げつけたのだ!


「これが本当に最後の技だっ! 超必殺『ハチカヅキンフリスビー(特大)』!! とりゃああああああ!!」


 ヒーロー”ハチカヅキン”は頭のお鉢を両腕で豪快にむしり取ると、そのまま一気呵成に怪人”犬王モノー”へと投げつけた。


「!? ギャアアアアアアアアアアアッ! ま、まさか、犬たちがフリスビーに夢中になっているところへ、頭のお鉢をフリスビー(特大)にして投げるとは……不覚! それを見抜けないとは……私も焼きが回ったようだな…グググ」


 ドデカイお鉢を身体で受け止めた怪人”犬王モノー”は、ドデカイフリスビーに向かって集まってきたフレンチブルドッグやコーギーやミニチュアダックスフンドやゴールデンレトリバーや柴犬やチワワやゴールデンレトリバーによってもみくちゃとなった。


 ヒーロー”ハチカヅキン”はよろめきながらも立ち上がり、かっこいいポーズをキメる。


「『怪人”犬王モノー”、お前にも遂に敗北という名のお鉢が回ってきたようだな!』(キメ台詞)  …だが、皆様で楽しんでいただける『ヨドガワードッグラン空間』は17時で終了してしまう! その前に花男くん(フレンチブルドッグ 8才 ♂)を連れて帰らなければならないのだ……いったん勝負はおあずけだ! さらばだっ!!」


 言い終わるやいなやヒーロー”ハチカヅキン”は花男くん(フレンチブルドッグ 8才 ♂)をそっと抱き上げると、---花男は『ハチカヅキンフリスビー(特大)』の左端に噛み付いている---守衛さんに挨拶をして急いで帰宅の徒についた。


 戦いは終わったのだ。



「お、おのれ”ハチカヅキン”。『ヨドガワードッグラン空間』が17時で閉園して、残された犬やお子様がいないのを確認して、守衛さんと門を確認してから家に帰って、仲良くなったお母さんから聞いた評判の動物病院をネットで確認してから次回の襲撃計画を立ててやるぞ! 覚えておくがいいーーーー!!」

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