第10話『本のデパート! 叡智の殿堂! 同人誌委託販売! 本屋バベル!!』

本屋『バベル』


 人類が全員同じ言葉だった大昔、力を合わせて建てたと言われるバベルの塔。


 名付け親である店主(田中 次郎さん 58歳)曰く「人類の叡智の結晶であるから」とのことだ。


 そんな荘厳な本屋『バベル』からご提供のパワーアップアイテムは高級知恵の輪シリーズ(1300円 税抜き)2セットである。


 知恵の輪とは、一見簡単に外れそうで外れなくて「イーッ!」となって力任せに外そうとしちゃうアレである。


 なぜ本屋に知恵の輪が? と思われるかもしれないが、オマケが付いてくるデアゴステ○ーニ、毎回付録つきの小学○年生シリーズ、子供向けの音の出る本など、本屋には知識欲を満たす本以外のアイテムも豊富なのだ。


 この高級知恵の輪(1300円 税抜き)は合金製で綺麗な装飾もあり好評な売れ行きを示し、提供品は店主(田中 次郎さん 58歳)が自分で買って店に飾っていたもだが店内の模様替えついでに提供された一品。


 決して『久しぶりに外そうとしたら説明書が見当たらず、2ヶ月半苦心したが外れなかったため、やむなくヒーロー”ハチカヅキン”に託された』というわけではないのである!



 スポンサーである『本のデパート! 叡智の殿堂! 同人誌委託販売! バベル!!』の複雑な形状のステッカーを顔面に貼り付けたヒーロー”ハチカヅキン”(本名:大鉢 和紀)は、ステージで人質の花男くん(フレンチブルドッグ 8才 ♂)の身代金を要求する怪人”犬王モノー”(イヌオウモノー)に正面から近づくと、笑顔で高級知恵の輪(1300円 税抜き)をそっと手渡しカメラクルーを呼び寄せると、さも『今から怪人”犬王モノー”が華麗に知恵の輪を解いてしまうぞ!』という期待した目で”犬王モノー”を見つめ続けるのだ!


 渡された知恵の輪を前に、最初は「何だこんなもの」とチョイチョイ触っていた怪人”犬王モノー”だったが、次第にその顔色は青ざめ、表情も焦りを帯びたものに変わってゆくのだ!


「グワアアアアアアアア! 『本のデパート! 叡智の殿堂! 同人誌委託販売! バベル!!』から提供された叡智の結晶たる知恵の輪が! フンッ! フンッ! 全然解けない! ま、待て、ちょっと待て! 写さないで、も、もうちょっと考えたらできるから、あ…やめて、そんな期待した目で見ないで!?  フンッツヌウ! カメラさんは必至な顔をアップにしないで!? お、お、おのれ”ハチカヅキン”! 今ちょっと家に帰る用事を思い出した! 次回会うときまでに絶対解いておくから、そんな残念そうな目で見るんじゃない! さらば、さらばだーっ!!」


 言い終わるやいなや怪人”犬王モノー”は、まだ抱えていた花男くん(フレンチブルドッグ 8才 ♂)をそっと下ろすと---花男は眠いのでテンションが低い---脱兎の勢いで逃走していった。


 戦いは終わったのだ。


「本のデパート! 同人誌委託販売! 本屋バベル!! さんでは、頭を柔らかくするオシャレなアメニティグッズ『高級知恵の輪シリーズ』も好評販売中だ! ヒーロー”ハチカヅキン”はこれから挑戦して解けなかったらインターネットで調べてしまうかもしれないが、皆は自力で解いてくれると願ってるんだ! ヒーロー”ハチカヅキン”は自力で頑張る皆を応援するぞ!!」


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