歳の差片思い

「もういいわよっ! あんたなんか知らない!」

 そう叫んで、わたしは叩き付けるように扉を閉めた。

 そのまま扉に寄りかかったまま、ずるずると床に腰をつけ、自室に引き蘢る。

 外からは扉を叩きながら、彼がわたしに謝る声が聞こえた。

 その声を聞く度に、嫌になる。

 彼じゃなくて、いつまでも意固地な自分にだ。

 振られたことに拗ねて、いつまでも彼に冷たい態度を取っている。

 本当は気持ちよく振られて、今まで通りの仲で居続けようとしたのに。

 自縄自縛も良いところ。ほんとうにわたしは子供だ。

 世間的に見れば、彼は大人で、わたしは子供。

 わたしは彼が好きで、でも彼にはもう好きな彼女がいる。

 それが悔しくてたまらない。

 歳の差だけで、こんなに違うの? 

 歳が近いというだけで、小さなときから彼といたわたしは置いてかれてしまうの?

 でもほんとうはわかってる。

 五つも歳の離れたわたしより、同い年の女の子のほうが、きっと彼だって気楽だ。

 二十三歳の社会人が、十八歳の高校生と付き合ったりしたら、そりゃあ色々回りからも言われるだろう。

 けどおかしいと思う。五つ離れた社会人と高校生がくっつくのにはちょっかい出すくせに、三十歳の大人が二十五歳の大人とくっつくのは、誰も何も言わないのだ。

 そう考えると、いまの世の中が恨めしくて仕方がない。

 だって昔は、わたしくらいの子供が、大人に嫁入りするなんて普通のことだったのだ。

 こんなこと考えても仕方ないけど、こんなことでも考えないとやっていられなかった。

 扉の外からは、彼がわたしに語りかける声が聞こえる。

 いつまでも外に立たせるわけにはいかない。

 けど、部屋のなかにも入れたくない。

 どうしようかと迷い、ぐちゃぐちゃな考えを捨てて、彼と話そうと自分を奮い立たせた。

 こんなバラバラな気持ちのまま、彼を他の女のところになんて行かせたくないから。

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だいたい一分くらいで読める掌編集 舞台譲 @Dango

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