第2話

"万能薬は本当に存在するのか?昨日まではNOだ。

今日からは、今この瞬間からはYESだ。薬と言っても厳密に言えばウイルスということになる。人体には影響を与えずに人体に悪影響を及ぼす全てのウイルス、細菌にだけ攻撃する。そんな漫画のようウイルスを私は完成させてしまった。これまで何度も失敗を重ねてきた。そんな失敗作はきっちりと隔離してあるから安心してくれ。ウイルスという響きから敬遠する人も最初は多いだろう。しかし、その効力を一度でも見てしまえば、皆さんにも信用して頂けるはずだ。近いうちにも一般の方々が使用出来るようになるはずだ。その時を待っていてほしい。そして、その時が医療革命の日となるだろう。 島博士 "


我ながらいいコメントだ。新聞を閉じて、残りの冷めたコーヒーを流し込む。腰の痛みに耐えながらも短い時間で支度を終え、研究所へ向かう。さて、今日は助手が政府関係者との対談へ行くようなので研究室には私一人という事になる。最近開発に成功した例のウイルスだが、今はもう興味がない。医療関係各所と折り合いをつけるのは助手の仕事だ。今、私が興味のあるもの。それは失敗作のうちの1つであるGH-3というウイルスだ。マウスを用いて実験してみたところ、このウイルスに感染したマウスはいつもと変わりなく生存しているように見えるが、脳波が検出されなくなったのだ。つまり、マウスに危害を加えると何らかの反応を示し、出血もする。しかし、その際に痛みを表す脳波が検出されないという事だ。昨日、助手にこの話をしたのだが、この原因はまだ解明出来ていない。当面の間の研究はこの原因の究明になりそうだ。早速実験を開始しようとした時に突然何かの違和感を感じた。

ウイルスが漏れているのでは…?

容器を見てもきちんと密閉されてるし、漏洩には最新の注意を払っている。その違和感を拭いきれないまま実験に移ろうとしたその時、研究室の扉が押し破られ、銃を持ち白い服を着た怪しげな奴らが入ってきた。私は焦って両手を上にあげ、無抵抗の意思を示した。私が君たちは誰だ?と聞こうとすると奴らは顔を見合わせ、頷いてから銃口がこちらに向けられた。ほんの僅かな発砲音と共に胸から溢れ出る赤いものを見た。その場にうずくまり、奴らを見上げると尚も銃口はこちらを向いており、次の瞬間には意識が消えた。

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