死闘
どれぐらい時間が経っただろう。目が覚め、気づくと周りは無数の鬼に囲まれていた。倒した鬼は斥候だったのかもしれない。こいつらは連絡を受けた本隊なのか。キジと鬼が倒れている場所を中心に鬼たちが桃太郎を取り囲む。なんとか、体を起こし、長期戦を覚悟する。腰につけた生成装置から、キビ団子を生成し、一つ口に運ぶ。途端、動悸が激しくなる。キビ団子を連続で服用した副作用だ。発汗する。めまいがする。吐き気がする。気を張っていないと、意識を失いそうだ。しかし、もうなりふり構っていられない。再生効果を上げなければ、一瞬でやられてしまう。鬼たちが一斉に襲いかかってくる。頭を左右に振って、意識をはっきりさせようとする。近づいてきた鬼から振り下ろされる金棒を、おぼろげな意識の中、なんとか左腕で受ける。腕がもげた。が、すぐに再生する。次に二匹目の鬼の避け損なった金棒が足を砕く。砕かれた側から再生する。体が倒れる前に、再生した足で地面を踏みしめ、距離を取るため後ろへ跳躍する。痛みで意識がはっきりしてきた。動悸で張り裂けそうな心臓と頭を守りながら、刀を振る。がむしゃらに刀を振る。自分の血と鬼の血が宙で混じり合う。刀がエーテルの熱によってオーバーヒートしないように、鬼を斬り、刀に血を浴びせ、冷却し続ける。
切って切って切りまくる。
どれぐらい戦っただろう。鬼の肉片と自分の体だった肉片が地面を埋め尽くす。俺を取り囲む鬼の数は一向に減らない。その時、刀からオーバーヒートを告げるビープ音が鳴る。
しまった
一瞬、冷却するための血が切れた。
高温になった刀はオーバーヒートを起こし、蒸気を上げながら、冷却モードに入った。エーテルの強化が切れたのだ。もうあの切れ味はない。鬼たちはそれを見逃さない。迫り来る鬼に刀を振るう。鬼のカーボンアーマーを砕けない。刀は無慈悲に弾き返される。代わって鬼の金棒が俺の四肢を砕く。四肢は再生するがすぐに潰される。再生する。潰される。再生する。潰される。鬼たちの勢いは加速する。だんだんと再生の速度が追いつかなくなる。再生しかけの腕で身を守る。骨が突き出た足で、体を動かす。もはや痛みなど感じない。周りの音がなくなった。目の前が暗くなってくる。死の恐怖だけが、思考を支配する。視界には鬼しか見えない――鬼鬼鬼鬼――金棒がくる。防がないと。腕。でももう腕が――
その時、
上空から拡声器を通した声が振ってきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます