討伐

体を鬼の方向へと向けた瞬間、キジの体が地面へと落ちる様子が目に飛び込んできた。金棒の一撃を食らったのだ。鬼の金棒は赤く染まっている。キジはただの肉塊になった。背筋が凍るのを感じる。


 集中しろ


 自分に言い聞かせる。恐怖を受け流すように一瞬だけ目を閉じる。ざわついた心を落ち着かせる。ギジの念波通信リンクが切れた今、思考を自在に操れる。再び目を開き鬼を見つめる。刀の柄にあるスイッチを押す。刀身が細かく振動し、周囲のエーテルを吸収し始める。エーテルが徐々に刀身を覆い、刀の切れ味が増してく。鬼それに気づいたのか、一気に間合いを詰めてくる。近づきながら鬼の金棒が、パラソル上に変形し、その傘部分に無数の発射口が現れた。発射口から小さなミサイルが無数に発射された。刀を振って、一つずつミサイルを叩き落とす。


 よく見える。よく切れる。


 ミサイルを全て叩き落とすと、鬼は眼前へと迫っていた。鬼の手に持った傘が再び金棒の形に戻りながら、大きく、振りかぶられる。しかし、


 遅い


 集中しきった頭で、鬼の動きが手に取るようにわかる。どのように体を動かせばいいかわかる。体はそれに忠実に答えた。素早い動きで、振りかぶった鬼の脇下に潜り込む。


 ここだ。


 刀はエーテルで軌跡を描きながら、鬼のカーボンアーマーに亀裂を作った。強烈な一閃が走った。思わず体勢を崩した鬼は、呻き声を上げながら、その場を離れようと、後ずさりを試みる。しかしそれは許さない。


 さらに一閃


 亀裂の入ったアーマーを重ねて剣撃が襲う、アーマーの破片が宙を舞った。ついにアーマーが砕け、隙間に刀の突きが刺さる。鬼独特の黒い血しぶきが空間を埋め尽くす。刀身の熱で肉の焦げる匂いを漂わせながら、鬼の体が地面へと沈み込む。脇下からどくどくと黒い血が流れ出ている。しばらくすると、鬼の息の根が止まった。

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