再生

激痛が体を走る。痛みで気を失いそうだ。だけどまだ生きてる。再度金棒が振りかぶられる。ふと、右足に力を感じることに気づいた。これまでの痛みも消えている。


間に合った!


先ほど食べたキビ団子の遅効性の再生効果が、効いてきた。右足の傷がみるみる再生していく。右足に力を込めて、前方に身を転がす。鬼の金棒は空を切ったあと、俺の体の代わりに、地面を大きくえぐった。次に金棒でやられた左腕が再生する。左手を強く握りしめると、手の感触が実感できる。


「<刀!転送クルゾ!>」


 再度キジからの念波通信が入る。キジは随時、司令部の爺さんに念波による戦況報告をしている。その爺さんが、対カーボンアーマー用のエーテル刀の生成を完了し、こちらに空間転送してきたんだ。


「<私ガ時間ヲ稼グ。ソノ間ニ受ケ取レ。今座標ヲ送ル>」


 キジはそう言うと、念波通信リンクを一方的に切断し、上空から鬼めがけて急降下してきた。鬼は突如空から現れたキジを叩き落とそうとデタラメに金棒を振り回す。キジにその場を任せ、すぐに体を反転させ、送られてきた座標に向かって足を動かす。右左右左――大丈夫だ足は動く。切れていた足の筋肉繊維が繋がっているのを感じる。再生した右足はしっかりと大地を蹴り、体を前へと動かす。突然目の前の空間が歪んだ。ひさしゃげた空間から、ぬっと刀の柄が現れ、続いて刀身も姿を表す。刀を手に踵を返して鬼の元へ向かう。

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