第6話 森のさざめき、川のせせらぎ
◯注意事項
・何度も言っていますが、いわゆる内輪ネタの文章です。筆者が各PCの設定をうろ覚えで書く時があり、時たま新しい設定が勝手に生やされることもありますが、どうかご容赦をー。
・筆者的に使いやすいから、ついつい自PCが出演しがちとなります。
◯登場人物
NPC
・今回は無し
PC
・ダンリ・タオン
・リーリヤ・イリアノフ
〈どこかの森・川べり〉[tb:昼]
さらさらと清水が穏やかに流れ落ちる。澄んだその流れの中には、幾つかの影。
流れに逆らうように川底を小さなカニが歩き、流れを気にした風もなく小魚が泳ぐ。その上を水の小妖精達が跳ね踊り、木々の間を風が抜けていく。
穏やかな川の側に、白い髪が揺れる。そよぐ風に短い髪がパラパラと靡く。
じっと川の中を覗くダンリの目は、気が抜けているのか半分閉じられているかのよう。その手に持つ竿は、主人に当たりを知らせることもなく、ピクリとも動かない。
静かな時間が流れる中、ふっとダンリの目が開かれる。
「誰だ!?」
流暢な魔法文明語を発しつつ、側に置いてあったブラックロッドを握った彼が振り向くと、見覚えのある金髪が目に入る。
「きゃっ!? 誰って、私ですよダンリさん」
「……リーリヤ、さん?」
突然の大声に驚いたのか、目を丸くするリーリヤに、ダンリは怪訝そうな視線を向ける。
「どうしたんですか、急に大声を出して?」
「いや、嫌な、臭いが、した、から」
不思議そうにする彼女の方を見ながら、彼は眉をひそめる。その顔は、確かにここから臭いがしているはずだけど、とでも言いたげに、しかめっ面を描いている。
険しいその表情に、若干リーリヤの顔に怯えが混じる。それに気付いたのか、首を傾げて普段のぼんやりとした表情にダンリの顔が戻った。
「……ごめん、怖がら、せた?」
「あ、いえ……」
彼がすまなそうに頭を下げ、少しの間、沈黙が2人の間を包み込む。
「ん。……もしか、して、魔法文明語、分かる?」
「え? えぇ。分かりますよ」
突然の質問に彼女が頷くと、ぽんぽんと少し離れた川べりを叩かれる。
ちょこんとそこに腰掛けるように座ると、長身ながら女性のような風貌の口が開かれた。
「なら悪いけど、魔法文明語で喋らせてもらうね。交易共通語はまだ不慣れなんだ」
「あら、そうだったんですか。……口調まで変わるんですね?」
「まぁね。皆に合わせようとして交易共通語で話すと、どうしても上手く喋れなくてねー」
ふふっ、と楽しげな笑顔を見せるダンリに釣られ、くすっとリーリヤも笑う。普段片言で途切れ途切れにしか喋れないからか、流れるように言葉が紡がれていく。
握っていたロッドは既に置かれ、改めて釣り竿を握りながらも彼は自分よりも3cmほど背の高い彼女の方を見て喋り続ける。
「あれだね。さっきは脅かしちゃってごめんなさい。魔神の臭いが混じった感じの嫌な臭いがリーリヤさんから漂っていたから、ピリピリしちゃってたよ」
「魔神の臭い、ですか? この間の依頼の時に魔神とは戦いましたよ」
「あー、そういうのじゃなくて……その依頼の時にでも、召異魔法使わなかった? しかも自発的に」
「……使いました、ね」
「じゃ、それだ。魔神の力を借りて行使した人の臭いってやつ」
困り顔になりながらも口は止まらない。なぜそれを、という目で見られているのにも構わず、普段と異なる様子で喋り続ける。
「あ、別に使うなって話じゃないよ? 単にリーリヤさんが召異魔法を使えたのを私が忘れていただけだからさ。力は使いようとも言うし、悪いことに使わなければ良いわけだしね?」
「悪いことになんて使いません。私が私である限り、悪いことになんて……」
「ならそれで良いよ。そう思っているなら、私達もリーリヤさんがリーリヤさんで在れるようにすればいいものね」
そう言ってダンリは、話はこれで終わりとでも言うかのように竿の先へと顔を向け直す。結構マイペースなんですね、と困った顔をするリーリヤも、目の前の川へと目を向ける。
再びの沈黙は、どこか穏やかな空気に包まれ、川のせせらぎ、木々のさざめきが2人の耳朶を優しく打つ。
その間も、ダンリの釣り竿には何も掛かることはない。それに気づき、リーリヤが不思議そうな顔をする。
「当たりませんね……」
「餌の付いてないただの糸に食いつく魚が居れば、釣れるかもねー」
首を傾げて尋ねてみると、ほら、と釣り竿を上げて糸の先を見せられる。そこには、針すらついていない。
明らかに釣る気のないそれを見て、怪訝そうな顔となる。
「釣る気、ないんですか?」
「今は考え事のために糸を垂らしていただけだもの。釣れるような仕掛けは後で付けるよ」
「へぇ。仕掛けを付けないのは、魚を傷つけないためですね♪」
「そういうこと。考え事のために垂らしているだけなのに、無駄に傷つけてもねー」
ぱん、と手を打ち合わせるリーリヤに、ダンリは頷いて返す。
楽しげなその表情に、気付けば自然と笑顔が浮かんでいた。
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